シリアスさを“ちょうどいい塩梅”に緩和する、吉高由里子マジックとは?

シリアスさを“ちょうどいい塩梅”に緩和する、吉高由里子マジックとは?

 18日に最終回を迎えるドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)。吉高由里子を主演に、10%前後の堅調な視聴率を獲得してきた。職場におけるシリアスな問題を取り上げる本作は、開始当初はとくに「リアルすぎて見られない」といった物議をかもしてきた。だが、回を追うごとに見えてくるのは、そんなデリケートな題材や正論を語る主人公をも“ちょうどいい塩梅”に緩和する吉高由里子の存在感だ。役柄の向こうに本人のキャラクターが微妙に透けて見え、それが良い効果を生む…そんな吉高マジックとは?

■重くなりすぎる可能性のあったドラマに、“ヌケ”を作る吉高の存在感

 『わたし、定時で帰ります。』は、吉高由里子演じる“絶対に定時で帰りたいOL”結衣が、職場での様々な問題に立ち向かいながら成長していくドラマ。仕事人間との確執、上司や部下との人間関係、仕事と育児の両立、サービス残業などに話は及び、同作を通じて“働き方”を考え始める視聴者も増えた。

 主人公の恋模様なども同時進行するものの、当初は視聴者から戸惑いの声が上がったように、なかなかハードな内容なのは間違いない。視聴者にも身近な内容であるだけに、ともすれば重くなりすぎるし、正論であろうとも定時で帰る主人公が“鼻につく”といった反感を持たれる可能性もあっただろう。こうしたある種のネガティブな要素は、やはり職場でのパワハラ・モラハラが「リアルすぎてつらい、見てられない」と言われたドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)を彷彿とさせる。だが、『わたし、定時で帰ります。』はなぜか重苦しい雰囲気に陥ることなく、どこか“ヌケ”がある。それはやはり、主人公を演じる吉高由里子の存在があってこそだろう。

■多彩な出演作の一方、素はどこか危うく、ユルくて自由

 近年の吉高は、『ガリレオ』(フジテレビ系)のキャリア刑事、『正義のセ』(日本テレビ系)の検事、映画『検察側の罪人』の東京地検の事務官など、シリアスな作品や硬派な職業の役柄を多くこなしている。また、『私が恋愛できない理由』(フジテレビ系)、『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)のように、不器用な女性の生き方を描く作品もあり、NHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』では、明るく前向きに生きる国民的ヒロインも演じた。

 一方、演じていないときの吉高は、バラエティー番組や記者会見で見られるように、非常に自由。本ドラマの会見の際も「昨日、めちゃくちゃ落ち込んでギャン泣きするわ、べそかくわ」とネガティブモードで告白したと思えば、「今日、来てよかったです。みなさんにも会えたし…イエイイエイ」と、自分の気持ちに正直すぎる発言をして話題に。SNSでも赤裸々な心情を書き込むがゆえに、ときには「病んでる?」と心配されることすらある。このように多くの視聴者にとって吉高と言えば、ちょっと危ういが、どこか天然が入った、明るくユルいイメージだろう。早い話が、かつて福田彩乃にモノマネされていたハイボールのCMの「ウィ〜」そのままだ。そして、その言動からは、媚びたり嘘をついたりすることのない、表裏のなさも感じ取れる。

■役柄の向こうに見える吉高自身、パーソナルが芝居に+αに働く

 こうした彼女自身のキャラクターは広く認識されており、多くの視聴者もまた、そんな吉高自身を役柄の向こうにうっすら見ているのではないだろうか。たとえ役柄がお堅くいけ好かなかったり、はたまた問題にぶつかって悩んでいたりしても、その向こうに“吉高”が見えることで、シリアスさがちょうどいい塩梅に緩和されたり、なんとなく嘘がないように見えたりする。本人のキャラクターがおのずと役に人間味を持たせ、なにか「信用できる」「共感できる」と思わせてしまう…これぞ吉高マジックなのではないかと思う。

 もちろん、吉高は演技力にも定評があり、高く評価されているのは確か。普通俳優は、芝居においてパーソナルな部分は隠そうとするものだが、本人が意図しているかどうかはともかく、吉高の場合はパーソナルが芝居に+αに働いているように見える。今回のドラマでも、「この人が言うなら仕方ないか」と妙に納得してしまうところがあるのだ。

■自由奔放な生きざまは、昭和の名女優を彷彿させる

 役柄を通して本人が透けて見えると言えば、樹木希林や桃井かおり、大竹しのぶなどが浮かぶが、たしかにかつての名女優たちは個性的で自由奔放、自分なりの生き方を持ちながら、どこか浮世離れした感じがあった。そういう意味では、吉高の佇まいにもそんな昭和の女優の雰囲気があるとも言えそうだ。

 同年代には長澤まさみ、石原さとみ、新垣結衣といった人気女優が目白押しだが、吉高のような存在感を醸し出している女優はなかなかいないだろう。独特の浮遊感と危うさを漂わせながら、“いい塩梅”に着地させる。そんな吉高が今後はどのような演技を見せてくれるのか、楽しみである。


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