テレビ朝日系で以前放送されていた番組『陸海空 地球征服するなんて』で、南米アマゾンに暮らす部族に体当たり取材を行い、全身真っ黒という前代未聞の姿になった“ナスD”こと友寄隆英ディレクター。そんな友寄ディレクターが、“テレビ朝日開局60周年記念”の特別企画として“アジア最後の秘境”ともいわれる極寒の地で暮らす部族に潜入取材を敢行したドキュメンタリー『氷と雪に閉ざされた秘境の地 天空のヒマラヤ部族 決死の密着取材150日間』が、3月8日(後9:00〜11:29)に放送される。

 今回の舞台は、日本から約5000キロ、行きつくまでに最悪1ヶ月もかかる、“ヒマラヤ最奥の聖地”ネパール・ドルポ。富士山を超える高度4000メートルに位置し、冬季はマイナス40度まで下がることもあるという、地球上でも屈指の極寒の地。今回はそのドルポ地方の中でも最奥にある集落、“ティンギュー村”を目指して旅をする。

 ティンギューに行きつくためには、標高5000メートル以上の3つの大きな峠を徒歩で越えなければならない。厳冬期の最奥の集落を取材するため、総勢20人のスタッフが命をかけて雪山を進んだ。そして、たどり着いた先には、何世紀もの間、変わらない暮らしを送る部族がいた。一行が秘境・ドルポで出会ったものとは…!?

 今回の旅には、今から30年ほど前、過酷な海外取材を手がけ、そのほとんどに自ら出演してきたディレクター・大谷映芳氏(73)が同行。『ニュースステーション』の取材ディレクターとして、世界の集落や高山に潜入リポートを敢行。世界第2の高峰“K2”の西陵世界初登頂、パキスタン・ラカポシ北稜初登攀を果たすなど数々の功績を残した、元テレビ朝日局員。南米のギアナ高地、パタゴニア、チベット、ブータンなど世界の秘境VTRを100本以上制作した彼は、いつしか“辺境ディレクター”と呼ばれいた。

 大谷氏は『ニュースステーション』の取材でドルポを訪れたことがあり、今回はナスDをガイドする重要な役割も担当。破天荒ディレクターと辺境ディレクターの初タッグで、“開局60周年”に足跡を残す。

■150日の長期密着取材で、ヒマラヤ・ドルポの“今”を伝える

 今回、2人は四季を通じてドルポを取材。その期間は計150日にも及び、文化、歴史、絶景、人物、グルメ、動物…長期密着取材だからこそ可能となる、現地の“今”を伝える。雪と氷に閉ざされ、完全に周囲から孤立する厳冬期のドルポ地方を取材するのは、世界初。さらに、ドルポの“今”から見えてきたのは、“未来”の地球の姿!? 今回は高山撮影用に改良されたドローンなど最新機材を駆使し、ダイナミックかつ壮大な絶景を映し出していく。

 アマゾン、ヒマラヤ、アフリカ。動物好きだった子ども時代から、その3つの大自然に触れることを夢見てきたという、友寄ディレクター。ところが、18年秋、ヒマラヤ・ドルポに初めて到達した時は、「大地は全面、茶色。正直、まったく面白くなくてこの土地で特番なんか撮れるのかなと思ったんです」と明かす。しかし、四季を通して取材を続けるうちに、茶〜白銀、そして緑へと姿を変える大地の移り変わりに感動。「“大地ってこんなに変わるんや”って、初めて大地が愛しく思えたんです。“大地で人間は生きている”ということ、そして“ドルポにはこんな生活を送っている人たちがいる”ということを日本のみなさんに伝えたいと心から思いました」とコメントしている。

 今回の番組制作で、一貫してこだわり続けているのは“リアル”。「今回は風景と現場の音、ナレーション、音楽で魅せていきたいと思っています。目指すは“打倒NHKスペシャル”(笑)。ヒマラヤはめちゃくちゃ絶景が広がっているので、150日の間に映像的にはNスぺを超えたのでは!?と思う瞬間がたくさんあるんです。リアルなものを真っ正直に撮り続けるしかない。2020年のヒマラヤ部族のリアルはこれなんです」。

 破天荒キャラで知られる男が真摯(しんし)にヒマラヤに向き合った本作は、衝撃のインパクトをもたらしたこれまでのバラエティーとはひと味もふた味も違う、骨太のドキュメンタリーに。友寄Dは「もちろん“笑い”の部分はありますが、破天荒なキャラがヒマラヤでどんなことをしてくれるんだろう…と期待してくれる固定ファンのみなさんの期待はある意味、裏切ってしまうのかもしれません」としながらも、「でもその裏切りを超えるものを作らなければならないと思っていますし、ディレクター人生26年間の集大成としてすべてを出しています。決してムダな時間にはさせないのでぜひ2時間半、おつきあい願いたいです」と、視聴を呼びかけた。

■大谷映芳氏のコメント

 私が初めてネパールのドルポを訪れたのは、1993年だった。当時の『ニュースステーション』の取材だったが、ヒマラヤの奥深くの辺境の地に住む人々に圧倒された。それ以来、何度もドルポに足を運んだが、厳しい自然に守られたそこは地球上に残された桃源郷のような気がしてならない。

 そのドルポをあのナスDくんが取材した。5000メートルの峠を何度も越え、厳冬の村へも分け入り長期間にわたり撮影を敢行した。初めて訪れたドルポで彼が独自の感性で、何を感じ、どう心を打たれたか? とても興味深い。ヒマラヤのドキュメンタリーとしては久しぶりの、厚みがあり幅のある番組なったに違いない。

■友寄隆英ディレクターのコメント

――なぜ新たな冒険の地にヒマラヤを選んだのでしょうか?

 『いきなり黄金伝説。』を担当していたとき、僕はチーフディレクターとしてチヤホヤされていたんですよね(笑)。でも『黄金伝説。』が終了したらまわりから人もいなくなって行き場も失って…。ずっとVTRを作ってきた人間なのでデスクワークなんかできるわけもなく、どうすべきなのか悩んでいたんです。それを察してくれた上司が「お前は何がしたいの?」って声をかけてくれ、「子どもの頃からアマゾン、ヒマラヤ、アフリカに行って動物を撮るのが夢だった」と話したんです。そしたら、「まずアマゾンに行ってこい! その代わり、出演もしてみろ」と言われたんです。

 僕は自分が賢くないことをわかっているので、ロケの前にはその土地について猛勉強してノート2冊分ぐらい調べ上げるのですが、上司はそれをよく知っていて、「いちばん詳しいお前がリポートすればいい」と…。それで『陸海空 地球征服するなんて』でアマゾンを旅したのですが、それが終わったときにまた呼ばれて、「次はヒマラヤだって言っていただろう?」って言われたんです(笑)。

――四季を通して取材したとのことですが、実際の取材期間は?     

 2018年10月末から2019年12月まで、計4往復しました。冬は氷と雪に阻まれて危険すぎてドルポに踏み入ることができないので、厳冬期の取材は世界初です。ドルポを取材するのは日本のテレビでは『ニュースステーション』以来ですが、そのときも厳冬期は撮影できていません。

――同行した大谷映芳ディレクターはどんな方でしたか?

 その『ニュースステーション』でドルポを取材したディレクターが、大谷映芳さんなんです。大谷さんは2年ほど前に紹介されたのですが、すぐに意気投合して2人で飲みに行くようになって、この企画が実現しました。73歳の大谷さんは僕よりもだいぶ大人なので温かく見守ってくれる感じ。そしてまた大谷さん自身もディレクターなので、何を撮影しようか話し合いながら進むことができました。そもそも大谷さんはK2西陵を世界初登頂した、スゴイ登山家。地図も読めるし、“進めるか否か”の感覚が研ぎ澄まされている。そして僕もそうなのですが、大谷さんも日本よりも向こうのほうが過ごしやすいんです。2人とも酸素濃度53%といわれても、なんともないんです(笑)。ちなみに自分も、無人島やアマゾンでしんどいと思ったことはなくて、東京にいる方がしんどいんです(笑)。

――現地を訪れて感じたことは?

 最初に訪れたときは秋だったので、大地は全面、茶色。正直、まったく面白くなくて、この土地で特番なんか撮れるのかなと思いました。でもそれは思い違いでした。その茶色の大地が冬は白銀に覆われ、春になると人々が水を引いて大麦の種を植え、真っ黒になるんです。それが夏になると全面、緑になり、やがて実って金色に…。そのとき初めて“大地ってこんなに変わるんや”って、大地に愛しさを感じたんです。“大地で人間は生きている”ということ、そして“ドルポにはこんな生活を送っている人たちがいる”ということを日本のみなさんに伝えたいと心から思いました。

――本作で最もこだわっていることは?

 今回は風景、現場の音、ナレーション、音楽で魅せていきたいと思っています。目指すところは“打倒NHKスペシャル”(笑)。ヒマラヤはめちゃくちゃ絶景が広がっているので、150日の間に映像的にはNHKさんを超えたのでは!?と思える瞬間がたくさんあるんです。僕はテレビでいちばん大事なのは奥行きだと思っているんです。今はYouTubeも技術的にすごいと思いますが、奥行きがない。テレビの強みは深さ、高さが見せられること。視聴者のみなさんにはぜひヒマラヤの奥行きを感じていただきたいです。

 そして僕らはリアルなものを真っ正直に撮り続けるしかない。今や部族だって裸じゃない。普通の服を着ていたり、靴も履いていたりする。でもこれがリアルなんです。100%、本物。2020年のヒマラヤ部族のリアルは、これなんです。

――破天荒は封印なのでしょうか?

 もちろん“笑い”の部分はありますが、破天荒なキャラがヒマラヤでどんなことをしてくれるんだろう…と期待してくれている皆さんの期待はある意味、裏切ってしまうのかもしれません。でもその裏切りを超えるものを作らなければならないと思うので、今は日夜、編集に没頭していますし、僕のこれまでを超えたものがこの番組にはあります。正直、ディレクター人生の集大成としてすべてを出していますし、恥ずかしくないものを作っているつもりです。

 僕はひたすら普通の人間で、いまだにテレビ出演に値する人間だとは思っていませんし、芸人さんにはやっぱりかなわない。だから死ぬほど努力して誰もやっていないことに挑戦する。そんな普通の人間でも、命がけで頑張ったら視聴者もちょっとは見てくれる。それを芸人さんたちが見たとき、「オレらはプロなんだからもっと頑張ろう」と思ってさらに努力してくれるんじゃないか。そうしたらテレビはもっと面白くなる、活性化すると信じています。

――視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。

 僕の今の思いは、“みなさんの代わりにヒマラヤに行ってきましたので2時間半、おつきあい願えませんか?”ということ。“150日間をなんとかぎゅっと2時間半に詰め込もうとしていますので、一緒に旅してもらえませんか?”と…。見終わった後、“幸せってなんだろうな”と考えたりすると思いますし、決してムダな時間にはさせないのでぜひ2時間半、おつきあい願いたいです。