NHKで30日からスタートする連続テレビ小説『エール』(月〜土 前8:00 総合ほか)の主人公・古山裕一を演じる窪田正孝。連続テレビ小説で男性が主役を務めるのは、2014年度後期『マッサン』の玉山鉄二以来、5年半ぶり(ヒロインはシャーロット・ケイト・フォックス)。窪田の連続テレビ小説への出演は、『ゲゲゲの女房』(10年度前期)、『花子とアン』(14年度前期)に続き、3作目。

 本作への意気込みを聞かれた窪田からは「主役だから…、というのは正直なくて、『エール』の顔はヒロインの二階堂ふみさんだと思っています。彼女が輝ける瞬間をたくさん作っていきたい」と、男前な答えが返ってきた。

 連続テレビ小説102作目となる『エール』は、「栄冠は君に輝く(全国高等学校野球大会の歌)」「六甲おろし(阪神タイガースの歌)」「闘魂こめて(巨人軍の歌)」などの応援歌の数々を作曲した、古関裕而(こせき・ゆうじ)さんと妻で歌手としても活躍した金子(きんこ)さんをモデルに描く、音楽とともに生きた夫婦の物語。福島で生まれ、のちに多くの名曲を生み出すことになる作曲家・古山裕一を窪田、のちに裕一と結婚する関内音を二階堂が演じる。

 窪田が演じる古山裕一はどんな主人公なのか。「古関裕而記念館(福島市)に行ったり、古関さんを知る方々からいろんなお話しを聞いたりする中で、古関さんは人を憎んだりせずに、慈しむことできる、感情が細やかで優しいお人柄をすごく感じたので、そこは肝として大事にしなければいけない部分だと思っています。ドラマの中の裕一は、本人は狙ってないのにかわいがられる感じが、いい意味でズルいなぁ〜って思うところがあります。音楽は天才的ですが、そのほかのことはけっこう不器用。自分の世界に入っちゃうと周りが見えなくなってしまうところや頑固なところもあって、人間味のある人物になっていると思います。僕の後ろで古関さんが見守ってくださっていると、勝手に思いながら、日々現場で思いっきり演じさせてもらっています」。

 福島の老舗呉服屋の跡取りとして育てられた裕一は、少々ぼんやりしていて、周りには取り柄がない子どもだと思われていた。しかし音楽に出会い、その喜びに目覚めると、独学で作曲の才能を開花させていく。青年になった裕一は、一度は音楽の道をあきらめようとするが、家族に内緒で海外の作曲コンクールに応募して上位入賞を果たす。それがきっかけで、知り合ったのが、歌手を目指している音。彼女は福島から遠く離れた豊橋に住んでいたが、文通を続け、やがて二人は結婚。不遇の時代を乗り越え、二人三脚で数々のヒット曲を生み出していく。

 「いいですね、文通。僕も中学生の頃にちょっとだけ文通していたことがありました。実際に金子さんが送った手紙を見たんですが、いまどきなハートマークや音符マークが書いてあって、すごくかわいらしい。文体は、当時らしい厳格な感じがするんですが、ひも解いてみるとけっこうイチャイチャしている(笑)。出会うべくして出会った二人だったんだな、と感じました」

 ドラマの中でも、現代の感覚ではちょっと照れるような手紙のやりとりが見られそう。さらに結婚した二人は、「理想の夫婦」だと、窪田は言う。

 「音は裕一のやりたいことを明確に導いてくれる存在。どんどん前に出ていく時は出ていくし、後ろに下がって裕一を立てる時は立てるし、何よりも横で手をつないで一緒に歩いてくれる人。音楽で結ばれる二人だけど、裕一は作曲家で、音は声楽家。裕一が作曲に行き詰まった時、音にちょっと歌ってもらって、ヒントを得るシーンもあるんです。二人とも音楽をやっているからお互いを理解できるし、足りないものを補い合える。理想の夫婦だと思います」

 そんな理想の夫婦を演じる二階堂は「現場で臨機応変に対応してくれる、人を立てるのがうまい女優さん」と、窪田も一目置く。「男性からの視点と、女性からの視点とで、台本の捉え方がくい違うこともある。そういう時も、現場で意見を出し合って、『それなら私はこう動きます』といった柔軟な対応が瞬時にできる余裕が二階堂さんにあるんです。それでいて、金子さんのイメージとも違和感がない。自分に嘘がつけない真っ直ぐな人だったという金子さんモデルにした音を、二階堂さんが説得力をもって演じてくれています」。

 夫婦げんかのシーンでは「音に突き放されて、ちょっとショックを受けている自分がいました。奥さんを怒らせちゃいけないな、平和が一番だなって思いました(笑)」と冗談まじりに語ったほど、二階堂ものびのびと演じている様子。窪田の“ヒロインを輝かせる”作戦は順調そう。新たにはじまる夫婦二人三脚の物語に期待が高まる。