東京を舞台に、金と仕事と女に奮闘する “東京男子”の成長と心理をリアルに描くカンテレのドラマ『東京男子図鑑』(全10話、毎週木曜 深0:25※関西ローカル)が、4月30日から放送される。今作は、東京カレンダーの連載コラムを水川あさみ主演で実写化した『東京女子図鑑』(2017)の“男子版”。2019年冬には中国などアジア地域で先行配信された。大学入学を機に上京する主人公・翔太を演じる竹財輝之助に、ドラマの撮影エピソードや東京の印象、上京時の思い出、俳優としての心構えなどを聞いた。

――いよいよドラマが放送されますが、東京という大都会に翻弄されつつ、東京にいる意味を探し続ける男性・翔太役を演じた率直な感想を教えて下さい。

 撮影が1年くらい前なので、「やっときたか」という感じですね。翔太は演じていて楽しかった。自分と時代が近いこともあり、自分の人生を振り返りながら演じていたのですが、それも初めての経験で楽しかったですね。

――竹財さんは演じる前の翔太のイメージについて、「何でも持っているけど何も持っていない」と表現されていましたが、演じてみてイメージが変わりましたか?

 器用貧乏というか、何でもできちゃうけど核になるものがない部分は結構、僕自身にも似ていると感じます(笑)。優しい子で弱い子だとは思いますが…。言葉を選ばすに言うなら“クズ”ですね(笑)。

――その言葉の後に聞くのは心苦しいですが、どこが一番似ていて共感できましたか?

 なかなか本心を話さないのは僕もそう。逃げているわけではないのですが、本心を言ったところで…と考え、むしろ言わないことが多いかな。自分は変に気を使うところもありますね。

――伺っていると竹財さんは論理的に物事を進めるタイプなのですね。

 そうですね。和を乱す人が苦手なんです。若い頃は自分も和を乱していましたけど(笑)。大人になると、「円滑に進めるためにはどうしたらいいかな」というのを考えるようになりました。ただ“キバ”を抜かれた人みたいに映っちゃうときもありますけどね。

――その“キバ”は今も持っているんですか?

 持っていると思います。かみつくときはかみつくので(笑)。ただ、かみつくまでの“余裕”ができました。沸点がだいぶ下がったのでしょうね。そういう部分では翔太もそうだと思います。

――大学生から40代までの20年間を1人で演じる中で、難しさや意識したことは何ですか?

 大変でしたけど、すごく楽しかった。同じ人物の30年間は演じたことはありますが、自分とは生きた時代がまったく違いました。翔太のように近い時代の人物の人生は、演じていて新しい気持ちになりました。ドンと突き放せないというか、身近に感じる感覚はありました。

――そんな翔太の役作りはどのような点にポイントを置きましたか。

 基本的に役を作るときは、設定された年齢の“前”を自分の中である程度、作ります。今回は20歳までは(役を)作り、そこからは自分の経験則と照らし合わせました。(翔太は)同じ時代を生きてきたので、いつもに比べたらやりやすい部分はあったかもしれないですね。

――恋人役の市川由衣さんとは何度か共演されていると思いますが、改めて共演した感想を教えてください。

 (市川さん演じる瑠璃子は)翔太を一番人間として見てくれた人。そういうお芝居をしてくれましたし、すごくありがたかったです。翔太が一馬(森岡龍)の会社にいるときが一番精神的にきついので、瑠璃子という存在はありがたかったです。

――名前が出た一馬役の森岡さんほか、落合モトキさん、田中シェンさんら共演者の方々はいかがでしたか。

 共演者の皆さんは個性的な方が多く、台本が額面通りのせりふじゃないというか“裏”があるようなせりふばかり。偉そうな言い方になってしまうかもしれませんが、僕が想像していることをやってくる人がいなかった。ちゃんとその人として生きてくれて、(劇中で)会話していて楽しかったです。僕の好きタイプの役者さんが集まってくれました。

――今作は東京もテーマの1つですが、竹財さんご自身が上京してきたときの東京の第一印象を覚えていますか?

 みんな歩くスピードが速いなって(笑)。東京にはバイクで来て、しばらくは移動手段がバイクだったので、あまり東京に慣れている人たちと接する機会がありませんでした。電車に乗るようになってからは、急いでいる理由がわかりましたね。

――今作の出演を通して東京の印象は変わりましたか?

 いまだに無機質な感じはしますね。良くも悪くもですけど、妙に他人に干渉しないというか。僕は干渉する人たちの中で育ってきて、それが当たり前だと思っていたし、平気で学校から帰ってきて隣のおばちゃんの家にご飯を食べに行っていました。

 そういうのと比べると、お隣さんにあいさつしに行っても反応は薄いし、「引っ越してきました」って言っても「そうですか…」みたいな感じで「冷たいな、怖いな」って当時は思っていました。だから、いまだに無機質なイメージがあるのかもしれないですね。

――ドラマでは各エピソードに上京した人の“東京あるある”のような描写がありますが、一番共感したものは何ですか?

 東京は冷たいとか無機質とか感じるところですかね。何か冷たい街だなとは思うけど、チャンスはいっぱい転がっていて、「頑張る人には“ご褒美”をくれる街だな」とも。両極端な街かなと思いますね。中間がないというか。僕はひねくれているので、どうしても陰の方に目がいっちゃいますけどね(笑)。

――これまでジャンル、役柄を問わず相当な作品数に出演されていますが、今振り返ってみて転機になった作品、役柄は何ですか?

 役者になった転機と言えば、やっぱり『仮面ライダー剣』ですかね。デビュー作で芝居の“し”の字も知らない人間を1年間育ててくれたので、一番の転機です。

 役者になってからは『蟹工船』という映画の撮影で、初めて他人の芝居に見とれちゃったことがあります。負けを認めたじゃないですけど「こういう人がいるんだ」と思ってからは、芝居への考え方が変わった気がしています。転機と言えばその2つですね。

――見とれた俳優さんはどなたですか?

 松田龍平君に見とれちゃいました。ほかにも滝藤賢一さん、高良健吾君もそうだし、柄本時生君も若いのにすごいなと思った。振り幅がすごい現場で面白かったですね

――そんな竹財さんが“求められる”存在であり続けるため、日頃から準備・意識されていることはありますか?

 今は自分の生活を大事にしておこうとは思っています。役者は“誰か”を演じていますけど、その人自身の生活がところどころ見えてしまう。なので、自分なりの日常生活をちゃんと送っておこうと考えています。

――生活が見えてしまうということですが、演技していても「普段の自分が出ているな」と感じたりしますか?

 ふとした瞬間にありますね。やっているときは気づかないのですが、画で切り取って見たとき「クセは出ているな」って思います。今回も変になまっているところがありますし(笑)。自分の中で嫌いな動きとか、自分にしかわからないと思いますが、どうしても演じていると素が出てしまうことがあります。

 そういうのが「出るな」と気付き始めたのが35歳くらい。昔みたいに「破天荒に生きよう」みたいな、そういう役ならいいですけど、ちゃんと生活を地に足を付けてやっておかないとダメだなというのは最近感じています。

――見ている側からすると“味”と感じるかもしれませんが、ご自身としては「ちょっと…」という部分なのでしょうね。

 そうですね。なかなか自分のことは好きにはなれないですね。自分が出ている作品は引いて見ちゃうというか、物語を俯瞰的にではなく主観的にしか見られず、反省点しかない感じ。「なんでこんな顔を」「なんでこんな芝居を…」と見てしまいます。

 ただ今回の取材にあたってドラマを見返したのですが、面白かった。初めて自画自賛です(笑)。僕が良かったというよりは、東京男子たちが個性的でそれぞれの考え方を持っていて、出演している女性も自分なりの考えをぶつけている作品です。1エピソードごとの最後にオチがあるのも見やすいと感じました。音楽にも助けられていてテンポも良く、自分が出た作品の中でも面白いなと思いました。「めっちゃ面白いです」って太字で書いておいてください(笑)。

――幅広すぎる役を演じてきている竹財さんですが、今後やってみたい役はありますか?

 宇宙人はやってみたい。存在するかどうかもわからないので自由なのですが、自分の経験則にないところから役を作るということをあまりやったことがないので。あとは『時計仕掛けのオレンジ』みたいなぶっ飛んだ世界観も経験してみたい。「どこまでいけるんだろう」「どこまで自分を開放できるのかな」って。

――最後に今後の目標や挑戦してみたいことを教えてください。

 地方に住みながら仕事のときだけ東京に来られるようになるくらい、魅力的な役者になるのが目標です。やってみたいことは、今回の役もすごく楽しかったので、僕が生きてきた40年を生かせるような役にもう一回出会いたい、ですね。

 どちらかというと作って作って素の自分が出ないように…と思っていましたが、素に近い要素があると自分が経験して思っていることなので、説得力が出るなと。共演者の方が引っ張ってもくれたし、イラつかせてもくれた。演じているときは一馬役の盛岡君を嫌いになったしね(笑)。そう思えるぐらいの気持ちで演じられたのが楽しかったし、不思議な感覚でした。自分がやっているのか、翔太がやっているのかわからない。自分の感情、翔太の感情、どっちみたいな感じで楽しかったですね。

取材・文:遠藤政樹
撮影:小倉直樹