今や国民的に愛されるキャラクターとなった熊本県の「くまモン」が、今年3月に10周年を迎えた。先日、行政機関・病院・団体・学校などにおける新型コロナウイルスの感染防止対策の普及啓発活動を支援するためのアイキャッチとして活用できる3種類のイラストが公開され、注目を集めている。「人の心に寄り添い」活動を続けてきたくまモンが、有事の際に“ご当地キャラクター”だからこそできることや使命について、熊本県知事公室くまモングループ課長の浦田美紀さんに聞いた。

◆安らぎを感じる場の提供や苦境を乗り越えるための団結への呼びかけが使命

――行政機関・病院・団体・学校などにおける新型コロナウイルスの感染防止対策の普及啓発活動を支援するため、ポスターやチラシなどのアイキャッチとして活用するための「くまモン」のイラストを作成されました。県内外からの学校・病院・企業などの反響はいかがですか?

【浦田さん】 4月30日現在、450件以上の届出をいただいています。半分以上が県外からのもので、海外からの届出もいただいています。学校、病院、企業、個人等、さまざまな方々にご利用いただいています。

――くまモンが訴える「くっつかないモン」「手を洗うモン」「換気をするモン」の3種類のイラストを見た人の反響はいかがですか?

【浦田さん】 「くまモンとの約束を守りたい」、「シンプルで分かりやすい」、「自分と皆のために考えて行動したい」など、多くの嬉しいご意見をいただいています。水野学さんのデザインが素晴らしいのはもちろんですが、お年寄りから子どもまで幅広い世代に親しまれているくまモンが呼びかけることで、多くの方に共感を得ています。

――なぜ、日本語版以外に、英語版と中国語版も作成したのでしょうか?

【浦田さん】 海外のなかでも、くまモンの人気が特に高い中国・香港・台湾において、「中国語版のイラストを作ってほしい」との声があり追加で作成しました。世界中で感染が広がっている今、くまモンのイラストを海外でもご活用いただきたいと思っています。

――このイラスト以外に新型コロナウイルスに関する取り組みを行っているのでしょうか?

【浦田さん】 くまモン自身は、2月22日からは活動拠点である熊本県熊本市にある「くまモンスクエア」への出動を休止し、3月14日、15日に開催を予定していた『くまモン誕生祭』を延期しました。現在、くまモンの出動は自粛していますが、その情報発信力を最大限に活かし、SNSを通じて感染予防の呼びかけを行っています。

◆SNSは感染予防等の呼びかけの場であり、皆さんに自宅で楽しんでもらう場

――そうしたSNSなどで「くまモン」の活動を見た人からどのような声が届いていますか?

【浦田さん】 「SNSでくまモンの元気な姿を見て、自分も元気が出た」「ストレスがたまる毎日だけど、くまモンの動画で癒されている」「感染拡大が終息したら熊本に行くね」「くまモンも健康にくれぐれも気を付けて」など、本当にたくさんの温かいメッセージが寄せれています。

――「くまモン」には『営業部長兼しあわせ部長』と言う肩書きがあります。熊本地震の時のように有事の際に「くまモン」だからこそできることはありますか?

【浦田さん】 くまモンは、元々は熊本県民に“サプライズ”と“ハッピー”を届けるために生まれてきたキャラクターです。世界を飛び回る人気者になった今でも、県民のことを最優先に考え、地元の保育園や福祉施設、町内会の夏祭りなどへの出動を大切に続けています。そんなくまモンだからこそ、熊本地震の際には、県民の心の拠り所、そして復興の旗振り役としての存在価値を発揮することができたと思っています。

 今回もまた、熊本地震の時のように、多くの方々が健康面や経済面で不安な生活を余儀なくされています。そのなかで、皆さんにつかの間でも安らぎを感じていただけるような機会を作っていくこと、この苦境を乗り越えるための団結を呼びかけることが、くまモンの使命だと考えています。世代を超えて愛されているくまモンには、皆さんの心に響く、優しくも力強いメッセージを届けることができると確信しています。

――学校が休校中で思うように活動できないなか、子どもたちにはどのようなことを伝えたいですか?

【浦田さん】 外出が自粛されるなか、それでも何かできることはないかとくまモンは考え、今できる活動をしています。そんなくまモンの姿を見て、子どもたちが、“今自分に何ができるのか”“今自分は何をすべきか”ということを自ら考えてもらえたら嬉しいです。

――北海道では、食品企業の間での売上の低迷や過剰在庫といった影響を受け、ご当地キャラクターの「まりもっこり」が購入を呼びかけています。熊本県では、どのような取り組みをしていますか?

【浦田さん】 新型コロナウイルスの影響で、特に消費が低迷している県産の「花きや牛肉」などの消費拡大のPRにも力を入れています。その様子をYouTubeチャンネル「くまモンTV」で公開しています。

――先日SNSでの「#ゆるキャラつなぎ」では「くまモン体操」が公開され、「元気出たありがとう!」といった声が多く寄せられました。SNSだからこそ伝えられることはありますか?

【浦田さん】 くまモン本人の出動が制限されている今、多くの方にフォローいただいているSNSは、皆さんとの貴重な交流の場です。最近、新たな取組みとして、SNSによる生配信を開始しました。視聴者とリアルタイムで双方向の交流ができるため、新たなツールとしてファンの皆さんに喜んでいただいています。出動が制限されるなかでやむなく開始した取組みでしたが、今後も続けていきたいと思っています。SNSは感染予防等の呼びかけの場であると同時に、皆さんに自宅で楽しんでいただく場としても重要な位置づけです。普段は見ることができないくまモンのオフショットを楽しみ、少しでも心を安らげてもらいたいです。

◆「ご当地キャラクター」の枠を越え企業コラボが成功した3つの要因

――またTwitterでは、熊本地震の発生から4年を迎え、「くまモン」に伝えたいメッセージを募集しています。なぜ、このような取り組みを行ったのでしょうか?

【浦田さん】 くまモンは熊本地震以降、熊本を応援してくださる皆さんと、感謝を伝えたい熊本県民の「心の架け橋」としての役割を果たしてきました。今回の取組みは、熊本地震の発生から4年が経った今でもたくさんの方が、くまモンを通して熊本を応援してくださっていることを県民の皆さんにお伝えしたい。そして、熊本からの感謝の気持ちを全国の皆さんにお伝えしたいという思いで企画したものです。

――10周年を迎え「くまモン」は「ご当地キャラクター」の枠を越え、BMWの「MINI(ミニ)」やアディダス、JALなどの企業とのコラボレーションも行っています。なぜ、これほどまでに多種多様な企業から求められるのでしょうか?

【浦田さん】 3つの要因が考えられます。1つ目は、熊本県の「楽市楽座」(国内に限り無料でくまモンのイラストを利用できる)という取組みが功を奏したことだと思います。これにより、くまモンのイラストが日本中に広まり、くまモンの知名度と人気が高まりました。2つ目は、くまモンのデザインの素晴らしさです。水野学さんのシンプルで洗練された、かつ魅力あるデザインが、多種多様な企業とのコラボを容易にしたと思います。最後は、くまモン自身の頑張りです。熊本のため、県民のために常に努力し、成長を続けるくまモンの姿勢に、多くの企業の皆さんが共感してくださっているのだと思います。

――「人の心に寄り添い」活動を続けてきたくまモンですが、今後どのような活動を行っていきたいですか?

【浦田さん】 熊本県では、くまモンが100年後も愛されるキャラクターとなることを目指しています。現在、日本及びアジアでは一定の人気がありますが、それ以外の地域でのくまモンの認知度を高めるために、全世界向けのアニメも現在制作中です。もちろん、くまモンが熊本県のPRキャラクターであるということは変わりありませんので、熊本県営業部長兼しあわせ部長として、常に熊本県民に寄り添う気持ちを忘れずに活動していきます。