NHK総合で4日と5日に放送されたテレワークドラマ『今だから、新作ドラマ作ってみました』(第3夜は8日に放送)。多くのドラマが当面の収録を見合わせている中、“今だから”できるドラマ作りを、ということで、企画立案からなんと1ヶ月で放送までこぎつけた。初めてづくしの制作過程は、出演者頼みな点が多く、NHKのスタッフは恐縮しきりだったよう。オンラインで取材に応じた編成局編成センターの岡本幸江副部長は「貢献度120%の出演者に感謝、感謝です」と舞台裏を明かした。

 今回の収録は、出演者が一人でやらなければならないことだらけ。それでもオファーを受けたのは、第1夜(4日放送)の満島真之介、前田亜季、第2夜(5日放送)の小日向文世、竹下景子、第3夜の柴咲コウ、ムロツヨシ、高橋一生。

 「やってみないとわからないことが多い中で、皆さん快諾してくださって。シンプルに『面白いからやりたい!』という方、『どんどん撮影がなくなっていく中で、何かやりたい、できないかと思っていた』という方など、反応はさまざまでしたが、俳優陣に『やりましょう』と後押ししてもらえなくては成立しなかった企画。準備万端とは言えない状態でしたが、私たちの思いに応えてもらえたのがありがたかったです」。

 機材の操作も出演者がするため、操作が簡単で、最小限のセッティングですむ方法を検討した結果、スマートフォン(カメラ)とぽんぽんのついたマイク、スマートフォンを固定する三脚のセットを用意して、出演者のもとに送った。

 演出担当が「可能であれば、少し右向きで、高さもちょっとあげていただけないでしょうか」などとパソコン越しに伝えながら、出演者がカメラ位置を調整していく。しかもカメラは固定で、ズームもパンもできないため、人間のほうが動くしかない。どのタイミングで画面に顔を近づけ、どんな動きをすれば効果的か、リモートドラマならではの面白さを創り上げるため、出演者と監督がギリギリまで知恵を振り絞って映像を作り上げていった。

 衣裳・メイク・小道具・食事なども出演者がほぼすべて用意。もう一度違うアングルから同じシーンを撮る際に、小道具をもとの位置に戻すといったことも、出演者にやってもらわなければならず、「スタッフはパソコンの前で見守るしかなくて。とにかく出演者の負担が大きくて、恐縮しきりでした」と岡本氏。

 「外出自粛で場所を選べない状況でしたので、出演者が『ここならいいですよ』と、言ってくれた場所で撮影してもらいました。できることの中で精いっぱいやっていくしかなかったので、お互い正直に意見をぶつけ合って、できないことは潔くあきらめて、できることを探っていきました。すべてパソコン越しでしたが、真摯(しんし)に向き合ってコミュニケーションとっていった不思議な熱さがありました」と、振り返る。

 “本業”の芝居も大変だ。30分の脚本は、2人ないし3人のせりふで埋め尽くされており、せりふ量がものすごいことになっていた。スケジュールもタイトで、第1夜「心はホノルル、彼にはピーナツバター」に出演した満島と前田は、わずか1週間足らずでせりふを覚えなくてはならなかったそう。

 また、不安定な通信環境との戦いもあった。第2夜「さよならMy Way!!!」の収録では、土日に行ったリハーサルでは、ビデオ通話の映像は安定していたが、月曜日の本番では、日本中が一斉にリモートワークを始めて回線が混雑したのか、ビデオ通話の映像が何度もフリーズしてしまったのだ。

 そのたびに収録がストップし、やり直す羽目に。そこで、演技をモニターしながら録画する監督側のパソコンだけでなく、出演者それぞれのパソコンでも演技を録画してもらい、一方の映像がダメでも別の録画データでカバーする、という作戦で乗り切ったという。

 “今だから”と取り組んだドラマ作りだったが、今後につながる収穫もあった。

 「どこにいても参加できるWEB会議で打ち合わせができるのはすごく便利だと思いました。撮影手法としても、これを足がかりに新たな表現を追求していける可能性は十分にあると思いますし、試みとして継続していきたいです。今後の状況がわからない中でどう発展させていけばいいのか難しいところもありますが、ノウハウをためて新たな作品をお届けしたいと思っていますし、実際いろいろな提案が寄せられています」。

 テレワークドラマのトリを飾る第3夜「転・コウ・生」は8日(後11:40〜深0:10)に放送。大河ドラマ『おんな城主 直虎』の森下佳子氏の脚本を、柴咲、ムロ、高橋が演じる。内容は、外出を控えて家に閉じこもっているシバサキコウ、むろつよし、タカハシイッセイ。「会いたい」と思っていた3人の魂が入れ替わる珍事が発生し大混乱! 会いたいってこういうことじゃないんだ! 果たして3人は元の体に戻れるのか。抱腹絶倒のファンタジー・コメディー。