NHKで放送中の大河ドラマ『麒麟がくる』(毎週日曜 後8:00 総合ほか)は、いよいよ第17回(10日放送)「長良川の対決」で、斎藤道三(本木雅弘)と高政(伊藤英明)の骨肉の争いが描かれる。主人公・明智光秀(長谷川博己)にとっても、明智家の存亡に関わる一大事。道三と高政の親子関係がこじれてしまった過程をひも解いていく。

■側室の子というコンプレックス

 美濃の守護代・斎藤道三の長男として生まれた高政。母は守護・土岐頼芸(尾美としのり)の愛妾で、道三に下げ渡され側室となった深芳野(南果歩)。道三にはほかに、正室・小見の方の子、帰蝶(川口春奈)、孫四郎(長谷川純)、喜平次がいた。高政は、側室の子というコンプレックスもあって、父との折り合いが悪かった。ちなみに、光秀は小見の方の甥にあたり、高政とは幼い頃から学友として親しくしてきた。

■美濃のマムシは子育てが苦手!?

 道三も人の子。一介の油売りから成り上がった亡き父の遺志を継ぎ、美濃の国盗りを目指してきた。自身も厳しく育てられてきたのであろう。数珠を作るための大量の珊瑚の玉を高政に見せ、「一体何個の玉があるか当ててみよ」と高政に問うたことがあった。「ざっと千五六百くらい」と答えた高政に、道三は「遠くの敵兵はこのように見える。お前は必ず敵兵の数を見誤り、戦は苦戦する。困った若殿じゃのう」とぼやく。

 さらに、その場にいた光秀が「二千を少々超えるかと。数珠ならば一連で百八個、20人分として2160個」と答えると、道三はその聡明さをほめ、それに比べて…と高政をけなす。こうしたことが日常的にあったのだろう。「側女(そばめ)の子である自分の言うことなど耳を貸さぬ」という発言からも高政が劣等感をこじらせていることが伺えた。

■心の隙につけ込むささやき

 第2回で隣国・尾張の織田信秀(高橋克典)が大軍を率いて攻め込まれた際、道三は突然、籠城を指示したことがあった。これは、相手を油断させて一気に追い打ちにする作戦で、さらに「敵を欺くにはまず味方から」を実践。高政も光秀も家臣の稲葉良通(村田雄浩)も振り回された。こうした利政のやり方についていけない昔ながらの国衆たちは少なくなかった。

 戦に勝って領地を守っても、国を豊かにするには土地に根づいている国衆たちの力が必要だ。これまで道三に力づくでねじ伏せられてきた者たちは、いざとなると非協力的。そこが道三の弱点ともいえた。

 父に認めてもらえない。そんな高政にあることをささやく者がいた。土岐頼芸だ。美濃は、本来、守護である土岐氏が治める国だが、守護代・斎藤家の名跡を継いだ道三に実権を奪われていた。頼芸は、手に負えない道三ではなく、高政を手なずけようとして、自分が実の父親であるかのようにほのめかす。「そなたの父は当てにはならぬ。我が子と思うて、頼りにしておるぞ」という頼芸の言葉に、高政の心は大きく揺さぶられる。

 もし、自分の父親が利政ではなく、頼芸だったら…、これまでの境遇をひっくり返すことができる。高政の野心に火がついたのは間違いない。「父上は戦には強いが、国の政(まつりごと)には手抜かりが多い。父上には先がない。いずれ父上に代わって国を支える。その時は力になってほしい」と、光秀に語りかけるのだった。

■信じていた者の裏切り

 やがて、「父を殺してでも頼芸様を守る」と発言するまでになった高政。頼芸はある謀をする。道三のもとに、自慢の鷹を贈ったのだ。その鷹の爪に毒を仕込んで。しかし、企みは失敗。近習の一人が犠牲になったが、難を逃れた道三は、頼芸と一戦交えると言い出す。

 高政は迷わず頼芸につくことを選び、さっそく陣を構えようと勇んで頼芸の館へ馳せ参じた。ところが、当の頼芸が逃げ出してしまう。頼芸が飼育していた鷹がすべて惨殺され、すっかり怖気づいてしまったのだ。利政の報復だということは誰の目にも明らかだった。

 信じていた者に裏切られ、激昂する高政を「置き去りにされたあわれな忠義者か」とあざ笑う道三。「真の父上を失った。わしには父上がおらんのじゃ」と声を荒げる高政に、道三は「目の前にいる下賤な男がそなたの父じゃ。これでは家督は譲れない」と見下したように言い捨てる。

 尾張では信秀が亡くなり、信長(染谷将太)が家督を継いだ。道三は娘婿でもある信長と会見したいと望み、尾張の聖徳寺で実現する。「これから戦も世の中もどんどん変わる。自分たちも変わらなければならない」と語った信長のことをすっかり気に入ってしまう。その信長が、今川に攻め込まれていると聞くと、独断で援軍を送ることを決める。猛反対する高政に、道三は「うつけ者との噂を鵜呑みにして信長を甘く見ると、いつかひれ伏すことになるぞ」と忠告する。

■家督相続から弟殺しで完全に闇落ち

 頼芸が追い払われ守護がいなくなった美濃を、誰が守るのか。「この国は潰れるぞ」と暗澹とした表情になる高政。もともと頼芸の家臣で、道三の強引なやり方に不満を持っていた稲葉がけしかける。「高政さまに家督を譲るよう殿に迫るほかない」と。高政が「わしが家督を継げば、国衆はついてくるか」と聞くと、稲葉は「わしが請け負う」と背中を押した。

 それからまもなく、深芳野が亡くなる。突然の知らせに駆けつけた道三に、高政は「母上は私が守護代につくことを願われていた。お誓いなされ、わたしに家督を継がせると。哀れな母上にせめてもの償いと思し召し、私を守護代に」と、迫った。

 道三は剃髪して、家督を高政に譲った。これで美濃の内輪もめは収まるかと思いきや、道三の次男で、正室の子である孫四郎(長谷川純)が高政の家督相続に異を唱え始める。信長のことをよく思っていない高政は、信長と敵対する勢力(織田彦五郎や岩倉織田家)と通じ、これを懸念した帰蝶(川口春奈)が孫四郎をそそのかしているようなのだ。

 ところが、尾張で異変が起きる。守護の斯波義統が、守護代である織田彦五郎の家老・坂井大膳によって暗殺され、斯波家の嫡男が信長のもとに逃げ込んだのだ。さらに信長の側についた織田信光が彦五郎を不意打ちに。信長はまたたく間に、尾張をほぼ支配する。

 道三が、勢力を広げる信長を我が子のように自慢していると聞き、苦々しい思いがこみ上げてくる高政。尾張の後押しで孫四郎に城主の座を奪われるかもしれない、と疑心暗鬼になる。さらに、「家督など、道三の腹一つでどうにでもなる。用心したほうがよい」と稲葉がささやく。ついに、高政は孫四郎と道三の三男・喜平次をだまし討ちにして、「謀反を企んだ」とでっちあげ、完全にダークサイドに堕ちてしまった。

■道三が許せなかったのは何か

 「家督を譲ったほうびがこれか」と、道三の怒りは頂点に。高政を敵と見なし、一戦交える覚悟を決める。一方、高政は織田が加勢しなければ道三も動けないだろうと余裕の構え。さらに、「真の父親が誰であろうと、この国の者はわしが土岐源氏の血筋であることを願っている。いずれ将軍家に守護の座を願い出る時もそのほうが、都合がいい」と、計算高い顔を見せる。

 冬が終わり春になった頃、ついに道三が動き出す。道三が許せなかったのは、高政が自身を「土岐頼芸の子」と言いふらしていることだった。出陣を思いとどまるよう説得に来た光秀に語る。「高政は人を欺き、自らを飾ろうとした。人の上に立つものは正直でなくてはならぬ。偽りを申すものは、必ず人を欺く。そして国を欺く。わしはケチだが、それを隠したことはない」と。

 道三は「美濃も尾張もない、近江も大和も皆一つになればよい。さすれば豊かな大きな国となる」という父の遺志を受け継いでやってきたが、自分は美濃一国止まり。我が子・高政に後を託せないのは口惜しい限りだ。しかし、「あの信長という男は面白いぞ。あの男から目を離すな。信長とならやるやもしれぬ。大きな国をつくるのじゃ、誰も手出しができぬ大きな国を」と、話した。

 主君としてふさわしいのは誰なのか考えた光秀は「敵は高政さま」と、出陣するのだった。