モノが増えたら家具を買い足し、家具がいっぱいなら床にも積み上げる。そんな「モノを溜め込むことが日常だった」という漫画家の宙花こよりさん。一念発起して自身の膨大なモノを整理収納していく様子を実録漫画として書籍化し反響を集めてきたが、オタ活をしている趣味仲間からは「理想は分かるけど、真似はできない」「集めたコレクションはどうしても捨てられない」という反応も。「なんとか、捨てずに整理収納する方法はないものか」。宙花さんは自身の経験を活かして、あえて“捨てない”片付けの方法を発信している。

■モノを集めてしまう人の“捨てられない気持ち”に寄り添う片付け術を発信

 大好きな2次元のグッズをコレクションしているという宙花さん。以前はモノが集まるばかりで、自身が「片付けられていない」という自覚も持てなかったという。

「大好きなキャラクターのグッズを買うときは、とにかく衝動的。欲しい気持ちが先行して、置くスペースがなくても『あとで考えればいいや』と(笑)。最悪、買ったときの袋に入れっぱなしにして、そのまま押入れに突っ込む。床に置いたままにするのも普通にやっていました。家族も何かしらのオタクで、家には常にモノがあふれていた。実際に仕事で片付けの考え方に触れるまでは、やらなきゃという意識もありませんでしたね」(宙花さん、以下同)

 転機となったのは、漫画家としての仕事で片付けのテクニックについて本を出すことが決まったとき。実際に自身の部屋を片付ける様子を経験談として漫画にまとめたが、その過程で片付けのプロや編集者たちに「これは、やばいです」と面と向かって言われたことで自分の片付け下手を初めて自覚したのだという。

「そのときは“捨てること”を決意して、大幅に持ち物を整理しました。基本的な片付けの考え方や整理収納のテクニックを学んで、自分の中でモノを買うときの価値基準も改まりました。しかし、オタ活を一緒にしている友人に本を勧めると『私には“捨てる”のは無理』『宝物が多すぎて、この方法は合わない』という反応が返ってきた。捨てられない気持ちは、私も痛いほど分かります。どうにかして捨てずに整理収納を可能にしたい。その視点でまとめた片付けのテクニックを漫画にできたらと考えるようになったんです」

 オタク仲間に話を聞いたり、インターネットやSNSに掲載されている実例をリサーチしたり、たくさんの取材を重ねたという宙花さん。アクリルキーホルダー、缶バッチ、うちわ、銀テープ…たくさん集まってしまううえ、こまごましていてどう片付けたらいいのか分からない品々。本書ではこうしたアイテムの整理・収納方法が、宙花さんの実践体験をもとに詳しく紹介されている。

 例えば、アクリルスタンドなど自立型のアイテムをディスプレイとして見せながら収納する方法。片付け上手の友人に教えてもらったというテクニックだが、宙花さんはその収納アイデアとディスプレイルールに強く感銘を受けたという。

◆小さいものは手前へ 大きいものほど奥に配置
大きさや色合いを気にするだけで見えかたが変わる。小さいものと大きいもの、両方をディスプレイする場合は、小さいものを手前に、大きいものほど奥へ配置。小さいものを前にすることで、埋もれずにバランスよく見えるようになる。

◆色の薄いものは手前、色の濃いものほど奥に配置
同じ大きさ・形で色違いのアイテムをディスプレイする場合、色の濃いものを手前にだすと、その隣に配置した色の薄いものの印象が薄れてしまう。それぞれを平等に目立たせたい場合は、色も意識して配置するとよい。

◆並べるときは“M字”と“V字”を意識
グッズを並べるときは横一列に並べないで、高さや奥行きに差をつけるとよい。M字配置は、アイテムの高さで躍動感を出す並べ方。中央に背の低いものを置くと視覚的に躍動感が出る。V字配置は奥行きのある配置で躍動感を出す並べ方。一番目立たせたいものを手前に少し出してあげることで、戦隊モノの決めポーズのようにバランスよい配置となる。

「友人に教えてもらいながらやってみて、ルールとテクニックを少し知っておくだけでもだいぶ違うなと実感したんです。自己流でやっていると、ときに恐ろしいことが起こる(笑)。漫画にも描いたんですが、私はアクリルスタンドやフィギュアを横一列に並べて、両脇にお花を飾って…気がつくと祭壇のようにそれらが祀られているみたいな見え方に(笑)。自分だけではなかなか意識できない視点でした」

 「捨てない片付け術」は、 “捨てない”と掲げているとはいえ、何でもかんでもため込んで大量に所有していくという考え方ではない。捨てない片付けにおいてはとくに、「本当に自分にとって大切なものを見極めることが大事」だという。

「オタクグッズに限らず、洋服、コスメなど…みなさん好きなもの、コレクションしているものがある人みんなに言いたいです。今自分が好きなもの、大切ですよね。でも増え続けるコレクションをこの先ずっと持ち続けられるかといえば、保管場所の問題もありますから、現実的にはなかなか難しい。だからこそコレクションを定期的に見直して、手元に残すものを見極めることがすごく大事。オタクやコレクターにはこの見極めにこそ、もっとも力をそそいでほしいんです」

 ものの見極めに関して、今もなお宙花さんの記憶に強く残っているエピソードがあるという。友人のAさんの、引っ越しにまつわる経験談だ。Aさんが進学のために上京した際、初めての引越しで荷物を整理したのだが……

「一人暮らしを始めるときって、やっぱり実家から大切なものを持っていくじゃないですか。Aさんも当時ハマっていた本を持っていって、たいして読まない本は実家に置いていったんです。でも学校を卒業して地元に戻ったときに、荷物が増えてまたモノを手放さなきゃいけなくなった。Aさんがその時手放したのは、最初に実家から持ち出した、一番大事なはずの本たちだったんです」

 まさに本末転倒。“最終的に自分の手元に残したいものは何か”を意識しないと、誰しもAさんのような失敗を招きかねない。

「『捨てること=片づけ』ではありませんが、自分の好きなコレクションのなかにも、本当に捨てられないものと、惰性で持っているだけのものがあるはず。例えばコミックスなら、紙で絶対とっておきたいものか、あるいは電子書籍に置き換えても問題ないものか。アイテムのジャンルに関わらず、コレクションの見極めと新陳代謝を意識することは大切です。そうしてコレクションを厳選して精度を高めていけば、新たなアイテムを迎える場所や心の余裕も生まれます。この循環こそ、オタ活とオタクの片付けにもっとも重要なことなのかなと。これからもオタクとしての特性を意識しながら、一般の片付け本にも共通する片付けの“考え方”の部分を伝えていければと考えています」