スーパーや農産物直売所、ネット通販などでは、「有機野菜」「農薬不使用」などと表示された野菜が売られています。どちらも農薬や化学肥料を使っていない印象がありますが、具体的に何が違うのでしょうか。どのような野菜が、有機栽培や農薬を使わない栽培に向いているのでしょうか。

 中古農機具の売買事業を行うリンク(滋賀県近江八幡市)の社員で、JAはくい(石川県羽咋市)認定の「自然栽培地域プランナー」として活動する、人見翔太さんに聞きました。

認証制度の有無に違い

Q.そもそも、「有機野菜」と「農薬不使用の野菜」は何が違うのでしょうか。

人見さん「有機野菜とは、有機農産物のJAS(日本農林規格)に適合した農薬や肥料、農地で栽培後、農林水産省が認可した『登録認証機関』から認証を受けた野菜を指します。有機野菜のパッケージには『有機JASマーク』と呼ばれるものが記載されています。

有機農産物に関するJASの規格としては、例えば、『周囲で使われた禁止農薬や禁止肥料が入ってこないように管理され、種まきまたは植え付けの前、2年以上の間、有機栽培を行った畑や水田で栽培する』『遺伝子組み換えの種を使用しない』『環境にやさしい農薬を除き、原則として農薬を使わない』『天然物質の肥料または化学的処理を行っていない天然物質に由来する肥料を使う』などがあります。

JASの認証を受けていない野菜に対して、『有機』と記載することはもちろん、有機野菜だと誤認させるような表示をすることは法律で禁じられています。

一方、パッケージに『農薬不使用』と記載された野菜は、文字通り農薬を一切使用せずに栽培した野菜のことです。使用する肥料の制限はありません。

有機野菜と違い、農薬を使わずに栽培する野菜については認証制度がなく、実際に農薬を使わなかったかどうかを審査できません。そのため、農水省は農薬を使わない野菜の栽培を推奨していません。また、消費者に誤解を招く可能性があるため、農水省は『無農薬』と表記することを原則として禁止しています。

農薬不使用の野菜は量販店よりも、地方の農産物直売所などで売られているケースが多いのが現状です」

Q.「有機野菜」や「農薬不使用の野菜」を栽培するメリット、デメリットについて、教えてください。

人見さん「有機野菜、農薬不使用の野菜ともに味については賛否両論あります。有機肥料を利用した野菜は、うまみを感じやすくする抗酸化力やビタミン値が高まる傾向にあるほか、品持ちが良くなります。

デメリットとしては、生産者の手間やコストが大きくなります。また、化学肥料や農薬を使用する場合と比べ、収穫量が安定しにくいため、一般的な野菜よりも高い値段で販売しなければ利益を得ることができません」

Q.有機栽培や農薬を使わない方法での栽培に向く野菜について、教えてください。

人見さん「味の違いが分かりやすい野菜は、有機栽培にも向いています。化学肥料だけで栽培しているものと比べ、有機野菜は雑味の少ない野菜本来の味を引き出すことが可能です。味の違いが分かりにくい葉菜類についても、葉に直接かかる農薬の量が少なければ、消費者の皆さんは安心するのではないでしょうか。

生産者さまにとっては、特に夏野菜の有機栽培や農薬を使わない栽培となると、病害虫対策が大変です。そのため、比較的冬野菜の方が有機栽培や農薬を使わない栽培方法で作りやすいという、作り手側の向き不向きは若干あります」

Q.「オーガニック野菜」という言葉を聞くことがありますが、これは有機野菜と同じなのでしょうか。それとも、違いがあるのでしょうか。

人見さん「オーガニック野菜は有機野菜と同じです。『オーガニック』を名乗っていいのは、有機野菜と同様、農水省のJAS認証を受けた農産物に限ります」