マッチングアプリで出会った男性に「結婚しよう」と甘い言葉をささやかれ、妊娠までした揚げ句、中絶同意書を送りつけられ、奈落の底に突き落とされた32歳女性のケース。男性は女性に毎月15万円を振り込む約束をしますが、支払われたのは最初の3カ月だけで…どのような結末となるのでしょうか。

「忙しい」LINEを最後に連絡途絶え…

「(妊娠)8週を過ぎていたので10日間、入院して手術を受けました」

 仁美さんは当時の心境を振り返ってくれましたが、術後の経過が悪かった模様。子宮に血がたまったので、麻酔なしで血をかき出す処置を2回行わざるを得なかったのですが、それでも子宮が正常に機能せず、2カ月以上も出血が続き、卵巣は腫れ上がった状態が続いたのです。出血がいつまで続くのか分からない不安にさいなまれ、身体的だけでなく、精神的ダメージも大きかったといいます。

 彼は最初の3カ月だけ、毎月15万円を仁美さんの口座に振り込んできましたが、4カ月目には「仕事が忙しいんだ。何度も過労で倒れそうになるくらい。いい加減にしてくれよ。もう終わったことだろ?!」というLINEを最後に振り込みは途絶えてしまったのです。

「胎児を失った罪の意識と悲しみ、体と心の痛みに加え、息子のことを何もできない情けなさで頭がおかしくなりそうです」

 仁美さんは怒りをあらわにしますが、彼から受け取った最初の50万円は産婦人科と診療内科ですべて使い切ったので、手元に何も残っていません。彼のせいで人生が狂ったので、精神的な苦痛を償ってほしいという気持ちがあるのは確かですが、慰謝料や手切れ金は要らないので、せめて体調が戻るまでの間だけ援助してほしいというのが仁美さんの切なる願いです。

 仁美さんは「息子と前を向いて生きていきたいだけなんです!」と涙ながらに語りますが、どうすればよいのでしょうか。

「ちょっと大げさすぎないか? ちょっと頑張れば働けるんだろう?」

 彼は無神経な言葉を並べ立ててきたのですが、術前だけでなく術前も検診などで何度も病院に足を運ぶのも、つわりで嘔吐(おうと)を繰り返すのも、そして、おなかの胎児の命を絶つという喪失感にさいなまれるのも、子の母親だけです。彼は自らのおなかを痛めることもなく、胎児がいない喪失感に苦しむこともありません。仁美さん親子を追い出した部屋で無傷のまま、のうのうと暮らしているのです。

第二、第三の被害者を出さないために

「診断書もあるんだから! 働けるかどうか決めるのはお医者さんでしょ?!」

 彼の被害者の神経を逆なでするような発言に対して、仁美さんはそう反論したのですが、彼の個人的な意見と医師の専門的な見解、どちらが優先されるのかは明らかです。彼がどんなに無神経な言動を繰り返したところで、ざれごとに過ぎません。診断書には「就業不能」と書かれていますが、医師が「就業可能」と診断するまでの間、毎月15万円を補償すべきでしょう。

「一緒に息子を育てていこう」「付き合うなら結婚前提で」「自分の姓を名乗れるといいね」などと甘い言葉で口説いてきたのですが、そもそも、彼は本気で仁美さんと結婚し、息子さんを養子にし、自分の子として育てていくつもりだったのでしょうか。息子さんの育児放棄や無関心、仁美さんへの無視やかんしゃくを振り返ると疑問です。

 そこで、仁美さんは「最低だわ! 体目当てだったんじゃないの? 気を引くためにうそを並べてて許せない!」と断罪し、さらに、「話がまとまらなければ調停を起こすことも考えているから」と家庭裁判所へ申し立てをすることをにおわせたのです。

 彼は赤の他人である調停委員から、「自分の性欲を満たすためだけに甘い言葉で誘い、『結婚』という2文字で相手を安心させ、避妊しないことを承諾させた結果、妊娠するに至ったにもかかわらず、結婚の約束を破り、中絶手術を受けざるを得なくさせたのだから確信犯なのではないか」などと問い詰められることが予想されます。苦痛でしかない調停は毎月1回のペースで最長6回も繰り返されるのです。

「何を言っているんだ?! どうせ口だけだろう? 本当にやるわけがない!!」

 彼はそんなふうに首をかしげたのですが、仁美さんの本気度や真剣度を計りかねるのも無理はありません。なぜ、仁美さんがここまで思い切った言葉で詰問したのかというと、もはや仁美さん一人の問題ではないからです。

 彼が今回、一つもとがめを受けず、何の責任も取らず、少しも贖罪(しょくざい)せずに済まされた場合、彼は「『一緒に子どもを育てていこう』『付き合うなら結婚前提で』『自分の姓を名乗れるといいね』と甘い言葉で誘い、『結婚』の2文字で相手を安心させれば避妊せずにセックスすることができるし、万が一、妊娠させても中絶させればいい」と勘違いするでしょう。別の女性に同じ手口を使っても全く不思議ではありません。

 彼の存在をこのまま放置して、仁美さんと同じ目に遭うシングルマザーが、2人、3人と出てくるのは絶対に避けなければなりません。将来の危険性に気付いておきながら、何もしないわけにはいかなかったそうです。

ひどい仕打ちが原因で後遺症も…

 今後、仁美さんは彼と接点を持つつもりはなく、彼も仁美さんと接点を持ちたくないでしょう。仁美さんの請求額がきちんと振り込まれれば、彼に対して一切連絡しないこと、そして、今回の件を第三者に口外しないことを約束すると誓ったそうです。

 結局、仁美さんが医師のお墨付きを得て、新しい職場で働き始めることができたのは、2年後、息子さんが小学校へ進学するタイミングでした。彼が2年間、毎月15万円を援助し続けてくれたおかげでです。

 残念ながら、今回の被害者は仁美さんだけでなく、息子さんにも後遺症が残りました。子連れで結婚するには子どもの理解が必須です。そのため、仁美さんは息子さんへ、彼のことを「結婚相手」として紹介したそうです。

 しかし、彼は息子さんと血がつながっていない赤の他人です。そんな相手に風呂場で放置されたり、冷凍食品を解凍して食べるように言われたり、寒空の中で外に追い出されたりしたのだから、息子さんが大きなショックを受け、情緒が不安定になり、落ち着きをなくしたのは言うまでもありません。

 彼との同居を解消してから、しばらくの間、息子さんはすでに4歳なのに毎晩のようにおねしょを繰り返したそうです。仁美さんは、息子さんの心のケアをせざるを得なかったのですが、彼が「他人の子だから、どうなろうと関係ない」と軽んじているとしたら残念です。

 ここまで、仁美さんの悲劇を紹介してきましたが、「婚活」が流行語大賞を受賞してから9年。「婚活実態調査2019」(リクルートブライダル総研調べ)によると、婚姻者の32.3%が婚活サービスを利用したと答えており、もはや婚活で結婚するのは珍しくないので、婚活は市民権を得ています。

 ただでさえ、シングルマザーの婚活は特殊な事情を抱えているのでトラブルに発展しやすいです。彼女たちにとって、男は衣食住をタダで提供してくれるセーフティーネット。件数が増えれば増えるほど、トラブルの数も比例して増えるので注意が必要です。