筆者は日々、離婚の相談に乗っていますが最近、目の前で「ハゲ」を拝む姿が増えたと感じています。相談内容を聞くと、「それならハゲるのも無理はない」と納得することが多々あります。

「脱毛症」は髪の毛根組織に対して免疫機能の異常が発生する「自己免疫疾患」で、原因の一つは、不安や恐怖、ストレスやプレッシャー、疲労など主に精神的なものだといわれています。例えば、仕事では上司や同僚、顧客や取引先、家庭では配偶者や子ども、学校や習い事、地域のつながりなど…現代社会は人間関係によるストレスと切っても切り離せないので、脱毛症は現代病といってもよいでしょう。

 しかも、諸悪の原因を何とかしなければ、脱毛症はどんどん悪化するのだから厄介です。今回は、筆者のところへ相談に来た3人の実例をご紹介します。

妻がパパっ子の娘を連れて実家へ

「娘を誘拐されたストレスで円形脱毛症になりました!」

 そんなふうに声を荒らげるのは、1人目の相談者・中根雄一さん(42、仮名)。雄一さんは髪をかき上げ、「ココ!」という感じでハゲを指さすのですが、まるで「見てほしい」と言わんばかりの様子で筆者はただただ驚くばかりでした。

 雄一さんには6歳の娘さんがいるのですが、36歳にして初めてのわが子。目いっぱいの愛情を注ぎ、週末には水族館や図書館、海辺など一緒に思い出を作ってきたので、娘さんは「パパと結婚したい」と言うほどのパパっ子でした。しかし、妻は「実家に帰らせてもらいます」という1通のLINEを残し、娘さんを連れ、親元へ戻ったのです。

 雄一さんが急いで自宅に戻ると、すでにもぬけの殻。妻、娘さんの荷物は運び出された後でした。半ば強引に娘さんと引き離されたので、雄一さんが「誘拐」という過激な言葉を使うのも一理あります。そして、舌の根も乾かぬうちに家庭裁判所から呼び出しの手紙が届いたそうです。

 雄一さんの知らないところで妻は着々と準備を進め、離婚調停を申し立てたのは明らかでした。

調停で“だらしなさ”指摘され…

 1回目の調停で、妻は雄一さんのだらしなさ…性欲とお金の面を指摘してきたそうです。まず、性欲ですが、雄一さんはスマホでアダルト動画を見て性欲を処理していました。妻が性生活を拒否したせいですが、それなのに「娘が誤ってアダルト動画を見たらどうするの!」と指摘してきたのです。

 次に、雄一さん夫婦は3年前にマイカーを購入したのですが、手持ち資金がなかったので妻の父親に200万円を出してもらい、父親にお金を返していく約束でした。しかし、雄一さんの営業成績が悪く、賞与が思いのほか低かったので3年間、父親への返済ができずにいたのですが、妻は「借りたお金を踏み倒すなんて許せない!」と主張してきたのです。

「調停でそのことを言われたとき、本当のことなので反論できなかったんです。いざとなると言葉が出ないのは昔からなのですが…」

 雄一さんは悔しさを押し殺しますが、妻は「ああ言えば、こう言う人」だそうで、一度決めたら、てこでも動かないタイプ。雄一さんが何を言おうと、娘さんの親権(未成年の子を引き取る権利)を譲らないであろうことは想像に難くありませんでした。雄一さんは親権のことを尋ねられたとき、下を向いて黙ったままだったそうです。

 雄一さんが妻の実家を訪ね、頭を下げ、借りた200万円を耳をそろえて返済すれば、妻と娘さんを連れ戻すことができたかもしれません。しかし、妻が娘さんを連れ去ってから、すでに8カ月が経過しており、今更手遅れでした。雄一さんが親権を諦める代わりに、離婚は成立したのです。

 もちろん、雄一さんは娘さんにとって唯一の父親なので、娘さんに会う権利(面接交渉権)は存在します。しかし、妻の性格を考えると今後、娘さんに雄一さんの悪口を吹き込む可能性が高く、娘さんが雄一さんのことを嫌うのは時間の問題です。そもそも、雄一さんが「娘に会わせてほしい」と頼んだとして、妻は娘さんの気持ちを聞かず、「会いたくないって言っている!」とうそをつくことは目に見えています。

 雄一さんは、娘さんと二度と会えないことをうすうす悟っており、別居前日に会ったきり、今生の別れになりそうです。悲惨すぎる現実を目の当たりにし、「もっと妻を見張っておけば」「仕事を頑張って車のお金を払っておけば」「妻にスマホを見られなければ」…そんな後悔の念が何十回も頭の中をグルグルと駆け巡った結果、円形脱毛症を発症してしまったのです。

第3子出産後、妻の体調が悪化…

「上から下まで、ありとあらゆる毛が抜けて大変でした。脱衣所に行けなくて困っちゃいました!」

 そんなふうに自嘲気味に話すのは、2人目の相談者・近藤雅也さん(33、仮名)。雅也さんは抱えきれないほどのストレスにさいなまれ、全身脱毛症を発症したのですが、何があったのでしょうか。雅也さん夫婦にはすでに2人の子ども(4歳、2歳)がいたのですが、妻が3人目を望んだそう。雅也さんは、妻が不妊症を抱えていたため反対したのですが、結局、妻に押し切られる形で3人目の子どもを授かったのです。

 しかし、妻は産後の経過が悪く、体調不良で寝込む日々が続きました。妻の母親が近くに住んでいたので、娘の様子を見るに見かねて毎日、家事全般を手伝ったり、幼稚園の送迎に行ったりして助けてくれたそう。しかし、母親が妻に「雅也さんを困らせるんじゃないよ。朝はちゃんと起きてね」と苦言を呈したことに激怒。「うっとうしいわ! もう来なくていいわ!!」と母親の助けを拒んでしまったのです。

 もちろん、妻が一人前に家事や育児を担うことができればよいのですが、子どもたちに食事を与えるので精いっぱい。雅也さんが帰宅すると、キッチンには食器やフォーク、リビングにはおもちゃ、洗濯機には衣服が散乱している状態で、雅也さんが毎日のように片付けざるを得なかったのです。結局、三男の授乳やおむつ交換、そして、家族分の炊事や掃除は雅也さんが出勤前に行うことに。

 しかし、妻の体調は悪化するばかりで、妻は雅也さんの目の前で「うざいわ!」と子どもたちを罵倒するように。母親なのに、子どもを抱いたり話したりすることがなくなり、第1子と第2子は、妻が服を着替えさせようとすると嫌がったり、雅也さんがいる間は妻に近寄らなくなったり、妻の呼びかけに返事をしなくなったりしたそう。

 このままではいけないと思い、雅也さんは妻と話し合ったのですが、妻は「私にはもう無理かもしれない」と言い出すので、妻が気晴らしができるよう、週末になると午前中に家事を済ませ、子ども3人を連れて外出するように。また、夕方から雅也さんが帰宅するまでの間、子どもを妻の母親に預けるようにしたのですが、無理がたたったようで全身脱毛症を発症してしまったのです。

浮気した妻が家出、娘が情緒不安定に

「全然眠れないし、不整脈や頭痛、嘔吐(おうと)の症状に苦しんでいたのですが、今度は円形脱毛症や丘状のじんましんが現れるようになって…」

 そんなふうに苦しい胸の内を明かしてくれたのは、3人目の相談者・清原瑠偉さん(49、仮名)。妻(45)、娘さん(18)、息子さん(16)と一緒に暮らしていたのですが何があったのでしょうか。

 妻と見知らぬ男がイチャイチャする姿を友人が目撃しており、瑠偉さんに耳打ちしてくれたそう。具体的には、花火大会の会場で男が妻の頬にキスしたり、妻の頭を肩にもたれかからせたり…お忍びデートは自分たちの存在に気付かれないように注意するのが鉄則ですが、男は妻に夢中になりすぎた模様。しかし、それだけではありませんでした。

 自宅の駐車場に見知らぬの車が止まっている様子が防犯カメラに録画されていたのです。車から出てきたのは例の男でした。車のナンバープレートもはっきりと映っているので、人違いではありません。さらに、妻がスマートフォンを機種変更したとき、パソコンに残したバックアップを瑠偉さんは発見してしまったようで…。

「大好きだよ。2人で頑張ろうね」「家で時間を気にせず、ゆっくり過ごしてみたい。きっと、かなえようね」「旦那さんと話した方がいいか?」という求愛のSMSが残っていることが発覚。これらの証拠を突きつけ、「どうなんだ!」と問い詰めたところ、妻は「あんたのせいでしょ!」と逆上し、家を飛び出したのです。

 タオルを四角に畳むこともできない瑠偉さんは見よう見まねで、食事、洗濯、掃除などの家事をこなさなければなりませんでした。瑠偉さんは妻へ「思春期の子どもには母親が必要なのでは?」とLINEを送りましたが、「あんたが謝るのが先!」の一点張り。さらに「あんたは私の努力の上にあぐらをかいて、全然ありがたみが分かっていないんだから!」と畳みかけてきたのですが、それだけではありません。

「あんたたちのことは大事に思っているから、しっかりしなさい」と息子さん、娘さんにもLINEを送ってきたのです。母親面のLINEで優しくされても、妻のせいで家族がバラバラになったという現実を考えると、息子さん、娘さんが混乱するのも無理はありません。

「家庭を顧みないで仲良くしようとするのはやめて! まだ母親でいたいのが見え見え。友達じゃないし、もう親だってことを忘れているよ」

 瑠偉さんは娘さんに、こういうLINEを妻に送るよう命じたのですが、娘さんは瑠偉さんなしで生活できないので逆らえないものの、そこまで妻を嫌っているわけでもないので情緒不安定になり、心のバランスを崩してしまったよう。夜になっても眠れないようで、限界が来るまで起き続けている日々で、あまりにも短く浅い睡眠に悩んでいるようです。

真面目な頑張り屋ほど注意を

「息子や娘に携帯を持たせなければって、後悔しています。あいつ(妻)が私の知らないところで勝手なことを言って、傷つけているのかと思うと腹が立ちますよ!」

 瑠偉さんは怒りの感情をぶつけますが、娘さんは「みんながバラバラ! これじゃ、結婚したいとき、相手に(家族を)を紹介できない」と嘆きますが、瑠偉さんは「気が済んだら戻ってくるでしょ」と曖昧な返事をすることしかできず、娘さんを安心させるには至らず…妻のせいで精神的な限界に達し、円形脱毛症を発症してしまったようです。

 ここまで、3人のケースを紹介してきましたが、雄一さんはもう二度と娘さんに会えないかもしれない不安、雅也さんは仕事と育児の両立がずっと続くのではないかという不安、瑠偉さんは妻がもう戻ってこないのではないかという不安にさいなまれていました。

 先行きが見えないことが不安を増大させていますが、脱毛症を発症するほど真面目で、神経質な頑張り屋さんはくれぐれもご注意ください。