新型コロナウイルスの影響で、市販の「アルコール消毒液」の品薄状態が続いています。飲食店や保育所など人が集まる施設では、アルコール消毒液を使った消毒作業が念入りに行われていますが、消毒液の中には「火気厳禁」と記載している製品があります。実際に、アルコール消毒液の使用時に引火する危険性はあるのでしょうか。

 消毒液を使う際の注意点などについて、東京消防庁広報課の担当者に聞きました。

ストーブ使用で引火の可能性も

Q.アルコール消毒液は引火する危険性があるのでしょうか。

担当者「引火する危険性はあります。なお、アルコールの液体そのものではなく、アルコールから蒸発した『可燃性蒸気』に引火します。そのため、可燃性蒸気が滞留しないよう風通しをよくし、換気のよい場所で使用してください。なお、ライターやガスコンロなどの火だけでなく、静電気の火花も点火源(火種)になる可能性があります」

Q.純度の高いアルコールほど引火する危険性が高いのでしょうか。市販のアルコール消毒液は濃度が70〜80%のものが多いですが、それらの製品でも引火する可能性はあるのですか。

担当者「70〜80%でも引火する可能性はあります。空気中で可燃物(アルコールなど)に火がついたとき、燃え出すのに十分な濃度の蒸気が発生する最低温度のことを『引火点』といいます。つまり、『引火する温度』です。製品によっても異なりますが、エタノールなどのアルコール消毒液の引火点は20度台です。

つまり、アルコール消毒液の温度が20度台でも、火種がそばにあれば引火する可能性があるということです。アルコール濃度が濃いほど引火点は低くなり、引火の危険性はより高まります」

Q.例えば、アルコール消毒液を付けた手で火を使った調理をしたり、ストーブを使用中の部屋でアルコール消毒液を使ったりした場合、引火する可能性はあるのでしょうか。また、アルコール消毒液の近くで喫煙する行為は危険なのですか。

担当者「いずれも引火する危険性があります。アルコール消毒液を使用した際に手がひやっと冷たくなるのは、アルコールが蒸発しているからです。アルコールから蒸発した可燃性蒸気は引火する可能性が高いので、アルコール消毒後は、十分に手を乾かしてから火を使った調理をしたり、ストーブを使用したりしてください。

また、アルコール消毒液の近くで喫煙すると引火する危険性があります。喫煙する場合は、消毒液から離れた場所でしてください」

Q.日本で新型コロナウイルスが流行するようになった今年1月以降、これまでにアルコール消毒液が原因で起きた火災はありますか。

担当者「当庁管内では今年1月以降、アルコール消毒液が原因となった火災はありません。また、過去3年をさかのぼって調べてみましたが、同様の火災はありません。なお、アルコール消毒液ではありませんが、研究室で使用するエタノールに引火して火災に至った事例はあります」

Q.アルコール消毒液が品薄なことから、アルコール度数の高い酒を消毒液として代用するケースもあります。高アルコール飲料で引火する危険性はあるのでしょうか。

担当者「高アルコール飲料でも引火する危険性はあります。一般社団法人アルコール協会(東京都中央区)がまとめたデータによると、アルコールの一種であるエタノールの濃度が5%の場合、引火点はおよそ62度ですが、濃度が50%になると引火点はおよそ24度、80%になると20度前後に下がります。

当庁管内では昨年、アルコールによる火災が9件発生しており、このうち、アルコール飲料に関する火災は飲酒中に1件、調理中に2件発生しています。調理中の火災ですが、鍋にワインを入れて煮込んでいたときに発生したほか、フランベ(調理中にラムやブランデーなどを振りかけ、火をつけてアルコール分を燃やすこと)のためにアルコール飲料をフライパンに注いだところ、炎が上がり過ぎ、その際にフライパンを落としたことで発生しています」

Q.アルコール消毒液やアルコール飲料で火災を起こさないために注意すべきことは。

担当者「火災を防止するために(1)火気を近づけない(2)火花を発する機械器具などを使用しない(3)通風、換気をよくする(4)直射日光に当たらない涼しい場所に置く――の4点を守ってください」

Q.もし、アルコール消毒液やアルコール飲料に引火した場合、消火する方法は。

担当者「粉末消火器が適しています。また、大量の水を掛けることで消火することもできます」