「自粛で家に閉じこもっている期間、2歳の子どもの足音で下の階からクレームが来ちゃって。奥さん、神経質になって、顔つきが変わりました。それでなくても、家にコロナを持ち込まないようギスギスしていたから、腫れ物に触るように接していました。今もまだギスギスしているなあ」

「リモートワークではないですが仕事が休みになったので、ずっと家にいました。そしたら、妻の視線がいちいち怖い。“家事やれよ感”がずっと出ているし、やっても、『やり方が中途半端』って必ず愚痴を言われる。どこまでやれば文句ないんだよって、けんかになったまま今に至ります…」

 2人の30代男性の言葉です。「あるある」とうなずく皆さんの顔が見えます。要は、ここからです。そのギスギス感をどうクリアにしていくかで、「新しい夫婦の様式」が変わってきます。

夫婦が一緒にいる時間は増加

 ステイホーム中に夫婦の関係性はよくなったか、それとも悪くなったか、あるいは変わらなかったか。

 ウェブメディア制作会社のCyberOwl(東京都渋谷区)が実施した、既婚女性525人を対象に調査した結果によると、65%が「新型コロナの影響で、パートナーと一緒にいる時間が増えた」と答えています。また、そのうちの67%(233人)が「一緒にいる時間が増えてうれしい」と思っているそうです。ホッとする結果ではありませんか。

 夫婦の時間が増えてうれしい理由は「一緒に余暇を過ごす時間が増えた」「パートナーがより家事を手伝ってくれるようになった」が合わせて約7割。私の想像通りの理由です。新型コロナ前は男女とも、仕事・通勤・子どもの送り迎えに費やす時間や家事負担が多過ぎました。休日ですら、のんびり過ごすのが難しかったといえます。

 以前から妻たちに「休日は何をしている?」と尋ねると、「午前中は平日に掃除できていないところを掃除して、午後は買い物」「子どもと遊ぶ時間を多めにとる」「1週間分の総菜を作って冷凍パックにする」という現実的な答えが圧倒的多数でした。「夫とデート」「夫とお酒」「夫と自宅で映画鑑賞」といった、夫婦2人のラブタイムをにおわせる回答は10人に1人です。

 そうした中でこの春、自粛生活やリモートワークが始まり、夫婦で一緒にいる時間がいきなり増える状況になったのです。子どもがいる家庭では勉強のサポートをしたり、一緒に遊んだりと、これまた夫婦2人だけの過ごし方はできなかったようですが、夫婦の会話時間は確実に増えています。

 ステイホームで夫婦不仲か、夫婦ラブラブか…皆さんの場合はいかがでしょうか。具体例を挙げてみます。

【秀雅さん夫妻(共に30代)の場合】

 小学生の子どもが2人いて、上の子は受験生です。下の子は学童保育に行けてよかったのですが、上の子の勉強を見てやるのに必死の形相になる妻・香純さん(仮名)を目の当たりにし、夫の秀雅さん(仮名)は「そこまで頑張らせなくても」とたしなめます。時間割を作って分刻みで子どもに勉強をさせる妻の様子が怖くなり、「長男がかわいそうだ」と思うようになったのです。

 秀雅さんはもともと、子どもたちを近所の公立中学校に入れたいと考えていて、3年前にもこの件で大げんか。結果、香純さんに譲った経緯があります。そして、ステイホームで教育に対する考え方の違いだけでなく、生活面でもすれ違いが見えてきました。

 息抜きのため、時々、自転車で出掛ける秀雅さんに「コロナをうちに持ち込んだら許さない」と本気顔でけん制する妻。食器洗いをしたら、「まだ油がついている。詰めが甘いところが子どもに似たらどうするの」と皮肉っぽいものの言い方をされます。

 コロナ禍で不安になっているから仕方がないと黙っていましたが、外出自粛要請が緩和されてからも、神経質過ぎるくらい、秀雅さんの衛生行動を口うるさく指摘するので、リモートワークではなく、時短通勤をするようになりました。幸い、飲食店も開店し始めたので、妻と極力食事をしないよう外食しています。

【佳江さん夫妻(妻40代後半、夫50代)の場合】

 次女が大学に入ってから、佳江さん(仮名)は1人の時間を謳歌(おうか)していました。週3回は近所の店へアルバイトに行き、その他はテーブル茶道の教室とボランティアのお手伝いです。

 夫の光輝さん(仮名)は結婚してすぐ、浮気問題を起こしたので、その後、クールな関係が続いていました。子どものために離婚を選ばず、「生活の安定のための割り切った結婚生活」だったといいます。そんなとき、自粛生活が始まります。

 長女は1人暮らし、次女は彼氏のところに寝泊まりし、家では夫婦2人きりに。最初は何を話していいか分からず、ずっとテレビをつけてニュースを流していました。自粛生活が1カ月以上続いた頃、光輝さんが「このままこもっていたら、運動不足でコロナじゃない病気になりそうだ。アウトドアでやるゴルフならいいだろう」と佳江さんを誘い、車でゴルフに出掛けることに。

 久々の気持ちいい空気、そして、6年ぶりのゴルフで、佳江さんは気持ちが上を向いたといいます。フォームを教えてくれたり、ミスしても笑って気遣ってくれたりする光輝さんに、「こんな明るい人だったっけ」と見直したそうです。

 その後も、何度も車でゴルフに行っているうちに、夜、一緒にワインを飲むように。テレビを消して、2人でのんびりと時間を過ごしています。大昔の浮気の恨みが消え、佳江さんは夫への愛情を思い出したそうです。

 ステイホームで一つ屋根の下。不安やいら立ちは、人によって違います。会社が存続するかどうかの心配、生活費の減少、子どもの学習の混乱、感染予防の温度差など、お互いがどのくらいのダメージを受けているかを理解しなければ、「どうしてそんなに機嫌が悪いんだ」と怒りの連鎖が起きます。

「ああ、妻は徹底して消毒しないと不安なんだ」「ああ、夫は1人の時間がないと黙り込むんだ」と想像できる夫婦は、相手へのいら立ちの対処法を生み出しやすいのです。

 自粛中に家の大掃除をした人がたくさんいますが、プラスして「夫婦の不満の棚卸し」を試みることをおすすめします。“ONコロナ”で関係がよくなった夫婦はさらなる上を目指し、ますます関係が悪化した夫婦はいったんゼロに戻して、新しい関係を立て直すくらいの意気込みがないと、“withコロナ”の人生100年時代、落ち着いて年を取ることはできないでしょう。

 不安定な夫婦関係は経年により、2人の気持ちを疲弊させます。夫婦のニューノーマルは、2人でつくり上げてください。