子どもたちにさまざまな影響を与えた、新型コロナウイルス流行下の一斉休校。期間中は外出自粛に加え、家族以外との接触を極力控えることも呼び掛けられ、中高校生の中には時間を持て余して、いわゆる「パパ活」やリストカット、薬物の過剰摂取など、トラブルを起こす子どもも多くいたようです。

 休校期間中、10代の子どもたちはどう過ごし、何を感じていたのでしょうか。元千葉県警上席少年補導専門員として、青少年の非行問題や児童虐待問題、子育て問題などに数多く携わってきた少年問題アナリストの上條理恵さんが解説します。

終わりが見えなかった休校

 コロナの影響による休校と、通常の夏休み。同じ「長期休暇」のように見えますが、夏休み前には終業式、休み後には始業式があり、休暇の始まりと終わりが明確に決まっている一方、コロナによる休校は、安倍晋三首相の発言によって突然始まり、「いつ終わるのか」と見通しが立たない状況が続きました。そして、外出自粛要請により、子どもたちの行動範囲も大きく制限されてしまいました。

 平時の夏休みであれば、部活があり、子どもたちは部活に打ち込むことで寂しさやストレスを昇華できます。しかし、今回の休校中はそれすら禁じられていました。この点が、通常の長期休暇と大きく違った点といえるでしょう。つまり、コロナによる休校期間は、平時の夏休みとは性質が全く異なる長期休暇で、子どもたちの様子は、例年の夏休み明けとはやや異なる傾向がみられました。

「ずっと不登校だった」子どもの中には、休校になったことで元気を取り戻した子もいます。一方で、これまでは普通に学校に行けていたのに、休校がきっかけで学校に行きたくなくなり、休校明けに不登校に陥る子もいます。

 休校期間中、子どもだけを家に残して出勤せざるを得なかった親も多いことでしょう。親が不在の日中に、彼氏・彼女の家に行く子どもも多くいました。中には、ネット上で知り合った大人とリアルな場で会う子どももいて、その後、相手の男性が逮捕されたケースもあります。こうした事例の多くは、休校明けに発覚しています。

 ITを使った学習機会の増加など、コロナの影響により、オンラインツールは私たちの生活に一層不可欠なものとなりました。それは大人だけでなく、子どもも同じ。部活がなくなって時間を持て余しているのに友達と会えず、遊びに行くこともできない上、バイトもできない、でもお金は欲しい、スマホはある…。このような状況で、子どもたちがネット上に繰り出さないはずがありません。人とつながる方法がネットしかなかったからです。

 私は休校期間中、日々、ネット上をパトロールしていましたが、「遊びに来たらお小遣いをあげるよ」と投稿する人と連絡を取って、昔でいう「援助交際」をする子どもを多く見かけました。一方、肌を露出した自分の写真をアップしたり、「妊娠したかも」と書き込んだりしている、10代の子が行ったと思われる投稿も数多く見ました。

 援助交際をする子どもは、また増えてきています。近年は「パパ活」というライトな言葉に変わり、ネット上では「P(パパ)にお金をもらった」というやりとりも多くみられます。主なやりとりの場がスマホの中に移り、潜在化しただけで、なくなることはないのでしょう。

 援助交際に身を投じながら、罪悪感にさいなまれて精神的に追い詰められ、リストカットや薬物の過剰摂取「オーバードーズ(OD)」を繰り返す子どももいます。それに対して、お金を与えることで少女たちを食い物にする大人を取り締まる必要があります。

苦しんだ子どもたちを肯定する

 コロナで仕事に影響が出た際、大人にはさまざまな形で補償がありますが、子どもたちのアルバイトは補償がないケースが多いです。現在も、ホストに貢ぐ10代の女の子がいますが、こうした行動は子どもたちだけでは起こりにくいもの。お金を欲しがる子どもと、そんな子たちを相手にお金を出す大人たちが、つながってしまっているのです。

 私には「10代の子たちは追い詰められている」という実感があります。昔いた、いわゆる“不良”と呼ばれた子たちは現在と比べると、まだ健康的なイメージがありました。非行が顕在化していたので、分かりやすかったのです。一方で、現在は非行が潜在化して、“闇”と“病み”を抱えている子どもたちが多く存在し、警察よりもまず医療につなげた方がいいと思われるケースが多くなったと実感しています。

「休校明け、中高生の妊娠相談が増えた」という報道もありますが、性に対する正しい知識を教え、「自分を大切にしなければならない」と子どもに自覚させることが大切です。性行為は「妊娠するための行為」であることを理解しないまま、知らない大人とコンタクトを取ってライトに性行為に及び、お金を受け取っている子が多くいます。

「寂しい」と言う子どもたちは、たとえ家族がいても、帰りたい家や居場所がないのかもしれません。そんなときにスマホを開けば“呼応する他者”が必ずいて、その安心感を求めている子もいます。一方で、「言うことを聞かない」「うそをついて家を出ていく」子どもに、どう対応していいのか分からずにいる親も多いのでしょう。

 重要なことは、普段から親・先生が子どもの様子をしっかりと見てあげることです。例えば、眉毛や髪の色といった外見の変化から、「目を合わせなくなった」「声のトーンが違う」といった行動・態度の変化まで、その子の普段の様子を把握できていれば、わずかな異変にも気付きやすくなります。特に妊娠については「気持ち悪いと訴える」「最近食欲がない」など変化が分かりやすいです。

 心身が健康な子どもは、自分の状態をクリアにするための行動を自発的に取ることができます。しかし、不健康な子どもはそれがうまくできず、殻にこもって自分を追い詰めてしまうケースが多いです。コロナの休校がいつ明けるか分からない出口のない期間で、閉塞(へいそく)感や孤独感、不安感を抱き続け、リストカットやODに走ってしまう――こうした子どもたちにとって、今回の休校期間はきっと苦しい時間だったのではないかと思います。

 私は今回、コロナの混乱の中で、子どもたちはとてもよく頑張ったと感じています。まずは、身近な大人である親や先生が苦しい期間を乗り越えた子どもたちを肯定し、温かく寄り添ってあげるべきではないでしょうか。