今春、コロナ禍の影響により、多くの大学では授業の休講やオンライン化の対応を余儀なくされました。中でも、準備不足のままオンライン授業を行った大学では、大きな混乱が起きたようです。

 原因の一つとしてネット上で話題になった「学生がパソコンに詳しくなく、大学のポータルサイトにログインする手順を教えないといけない」ことについて、ネット上では「最近の大学生はパソコンが使えないの?」「若い人ほどパソコンやネットに詳しいと思っていた」「パソコンよりスマホに慣れていそう」など、驚きの声が多く上がっていました。

「最近の学生はパソコンを使えない」といううわさは本当なのでしょうか。ITジャーナリストの久原健司さんが解説します。

スマホの価格と利便性

 コロナ禍の混乱の中で新年度が始まった今年の4月、大学では授業開始から数週間たっても、オンライン授業を受けるために必要な「大学のポータルサイトへのログイン」をしていない学生が多数存在。そのため、大学職員が学生に1人ずつ電話し、接続できるまでログインのやり方を説明した――こうした話がネット上を中心に話題になりました。

「学生なんだから、パソコンくらい使えるだろう」と思う人も多いようですが、必ずしもそうとはいえないのが実情です。

 この問題の原因は「スマホを使えるからパソコンも使えるだろう」という思い込みです。スマホを使えるからといって、パソコンができるとは限らないのは、逆のパターンを考えれば分かると思います。仕事で日常的にパソコンを使っていてもスマホを使えず、今もガラケーを使っている年配の会社員がいることを考えれば当然のことです。スマホとパソコンは別物なので、仕方ないのです。

 今から20年前の2000年ごろ、スマホは世の中にまだほとんど普及しておらず、携帯といえばガラケーが普通でした。就職活動をするにあたって、携帯のメールでは応募できなかったため、パソコンは必需品。採用サイトや企業からのメールもパソコンを使わないと見ることができなかったのです。そのため、「学生1人につきパソコン1台」は当たり前でした。

 当時はスマホがなかったためにパソコンを使っていましたが、現在はスマホがあれば事足ります。スマホとパソコンのどちらかを持つのであれば、価格や利便性から考えて、スマホを選ぶのは自然なことでしょう。

 もちろん、現在の大学生も授業の提出物や卒論といった長文を書く機会があり、実家に家族のパソコンがある人も含めて、パソコンを持っている人も多いと思います。ただ、たとえパソコンを持っていても、メールなどはスマホで事足りてしまい、わざわざパソコンを開く必要がありません。そのため、スマホの方が接する時間が長く、パソコンを使うことにあまり慣れていない大学生が多いと考えられます。

 また、1人暮らしをしている大学生の中には、自宅に安定したネット接続環境がない人も多く、コロナ禍で突然、オンライン授業が実施されて「うまく接続できない」と困惑した学生もいるようです。

先行事例を学ぼう

 今回のコロナ禍では、急にオンライン授業をやらざるを得ない状況になったため、準備不足でこうした問題が起きてしまいました。多くの大学では「いつかはオンライン授業を行おう」という考えが全くなかったのでしょう。

 パソコン上で行う作業のやり方を電話で教えることも、実際には非常に難しく、限界があるでしょう。資料を用意したり、動画を使ったりして教えなければ、口頭だけではなかなか伝わりにくいからです。もし、初めて体験するスポーツのやり方を電話で教えられたら、いきなりできるでしょうか?

 今回のコロナ禍はあらゆる人にとって未曽有の出来事で、戸惑うのも無理はありません。しかし、誰にとっても初めてであるなら、その点は平等です。ひとごとではなく、一人一人がその状況に対応していくしかないのです。

 さらなる感染拡大が懸念される中、オンライン授業を行うための事前準備は重要です。既にいったん失敗していても、その原因と課題を見直し、次に生かしていきましょう。システム的な問題があれば早急に対応を行い、「やり方が分からない学生や教授が多い」といった問題であれば、オンライン授業の取り組みで成功している大学や先行している教育機関からノウハウを提供してもらうなどして、適切な準備を行うことが必要だと思います。

 今後も、パソコンに詳しくない学生が入学してくる可能性があります。それをあらかじめ想定し、誰もが学生に教えられるよう、まずは教職員同士でパソコンやオンライン授業に関する知識を共有しておくことが、これからの大学にとって必須といえるでしょう。