ネットニュースは、いくら下にスクロールしても出てくるのはひたすら「コロナ」。テレビも新聞もラジオも、現状の報道は仕方ないけれど気分が落ちるばかりだ。だからといってまだまだ緊張を解くわけにはいかないし、さらなる緊張を強いられている国も多い。そんな中で、ウイルスに負けじとできる範囲で明るいアクションを起こす人たちも少なくない。明るさは、ウイルスより伝播力が強いと信じたい。

 3月24日現在で、すでに6万人超と、欧州では最も多い感染者数に苦しんでいるイタリア。ミラノを中心にロンバルディア州など北部で2月末に始まった休校、封鎖措置は一気に全国的なロックダウンへと進んだ。ヨーロッパの中でも特に家族や友人との関係が親密で、ハグやキスという日常のあいさつすらできない現状に最もストレスをためている、といわれるイタリア人。だが、黙って落ち込まない彼らの行動がSNSなどネットを通じて次々に広まった。

 「窓を開けよう。バルコニーに出よう。そして遠くに離れていても、一緒に歌おう」。3月13日夕刻18時、みんなでイタリア国歌「マメーリの賛歌」を歌おうというフェイスブックの呼びかけに、イタリアのあちこちの街で人々が歌い始めた。トリノのサン・サルヴァリオ地区の集合住宅に住む住人はこの日の夜、テラスに出て、大音量でスペインのデュオが1993年に歌いヒットした「マカレナ」をかけて踊り始めた。これを聞いた近所の住人たちがみなテラスに出て踊り、その動画がSNS上で拡散。「どうしてサン・サルヴァリオが好きかって?悲しくて不安な時でも、陽気で希望があるからさ」という動画のコメントをイタリア各紙が報道した。

 イタリアの有名なジャズ・ミュージシャン、パオロ・コンテの「アズーロ」は、イタリア国家統一のシンボルカラーであり、サッカー代表チームの色でもある青を連想させ、普段からよく歌われているため、これが14日夕刻の歌に。15日にはリノ・ガエターノのMa Il Cielo è Sempre Più Blu(空はいつだってとっても青い)が、困難を克服する希望のメッセージになる、と歌われた。サルデーニャのカリアリでは、やはり集合住宅のテラスで住人がアコーディオンを弾き、他の窓辺で住人たちが歌い踊った。ベネベントの窓辺では打楽器の合奏が鳴り響いた。

 目下感染者数は2万4000人を越えているが、死者数は他の欧州諸国に比べて抑えられているドイツでは、“イタリアの友人”に連帯を示そうと、集合住宅の人々がイタリア語の歌詞を書いた紙を持ち、パルチザンから歌い継がれてきた「さらば恋人よ(Bella ciao)」を合唱、「私たちはイタリアの友人たちとともにある」というメッセージを読み上げた。

 同様に全国的な封鎖が行われているフランスでは、毎日午後8時、医療現場で働き続ける人々のために拍手しようという呼び掛けがあり、パリ、ニース、リール、ストラスブールなど全国の窓辺でこれに応じた人々の拍手がこだましている。エッフェル塔のライトアップも時間延長。“隔離状態に慣れている”宇宙飛行士のトマス・ぺスケ氏は、「本を読んだり、プラモデルを作ったり、缶詰食を食べるのも悪くない。とにかく感染を広げないために家にいましょう」とユーモアたっぷりの動画をアップした。

 動物たちの話題も少なくない。米・シカゴでは、世界最大級のシェッド水族館がウイルス拡散を防ぐために閉館になったが、放されたペンギンが館内散歩をする様子がネットにアップされ話題に。キプロスでは、外出禁止で犬の散歩に出られない飼い主が、ドローンにリードをつけ、街中を散歩させている動画がアップされた。

 日々更新される感染者や死者の数に、なかなかトンネルの出口が見えないストレスを抱え、封鎖状態の地域では文字通り息詰まる日々が続いている。幸い、物理的距離があってもつながることができるネットが手元にある時代。一人ひとりの地道な努力と連帯、できる限りの明るいコミュニケーションで終息までの道のりを乗り切りたいものだ。