某新聞の人生相談コーナーに、40 歳前の息子と同棲中の女性が、料理はもちろん家事全般が十分にできないことを嘆いている母親から訴えがあった。その女性の母親からも「料理はさせていないからできません」と言われているので、相手方からの改善は期待できないから「結婚しない方がいい」という世間一般の「判定」を人生相談解答者に示してほしいという思いのようだ。

 「料理ができない」わけが「させていない過去」にあると分かっているのなら、今からさせればいいのにと思います。男女を問わず、です。過去には戻っていけません。私たちはいつも未来に向かってしか生きていけないのです。

 私の「子どもを台所に立たせよう」という講演を聞いてくれた母親からメールが届きました。

 帰宅して5 歳と3 歳の息子に朝ごはんづくりを持ち掛けるとやる気満々でした。5 歳が台所に立ちたがるピークというのを実感しました。弟も兄のしぐさを覗き込んで、お米とぎは交代しながら取り組みました。流しにこぼした米粒も一生懸命にひろっていました。炊飯器のメモリを見て水加減もできました。炊き上がり時刻も予約しました。みそ汁用のだしは、ナベの水に煮干しを5 本放りこんで「水だし」の準備を済ませました。

 今朝は、一声で目を覚ますとすぐに台所に来ました。ご飯の炊けたにおいを吸い込んで兄弟で「おー、ご飯ができてるー」と大喜びです。

 目玉焼きは4 つ焼いてくれました。白菜とニンジンとアゲが具材のみそ汁もできました。いつもより30 分遅い朝ごはんになったけど、最高に美味しかったです。目を細めている夫に二人は得意げでした。

 二人がする片付けの手順がいつもの私のと一緒だったのでビックリしました。台所に立つ私をしっかり見てくれていたのです。

 こんな生活体験が豊かな人生の基礎づくりになるという感覚を、“ 弁当の日” を通して全国の大人たちに知ってほしいものです。

竹下和男(たけした かずお)

 1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後10 年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“ 弁当の日” がやってきた』(自然食通信社)『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。