耳が聴こえず、目もほとんど見えないという多重障害のある子どもを育てている友人が、絶対に見てほしいと推薦してくれた。2014年製作で、監督はジャン=ピエール・アメリス。作品のタイトルは、60年代のヘレン・ケラーの伝記映画を思わせるが、舞台はフランス。19世紀末のポワティエの修道院の実話だ。

 聴覚障害のある少女たちが集まる修道院で暮らし始めたマリー(アリアナ・リヴォワール)は、耳だけでなく目も見えないため、手話もできず、他者とのコミュニケーションがとれない。マリーに触れることで心が通じると確信した修道女のマルグリット(イザベル・カレ)が、音も色も言葉もない闇の世界にいるマリーに世界を見せたい、と挌闘を始める。

 初めから光と音のある世界にいると想像がつかないが、物には名前があるということ、同じものを同じ言葉で表すことができる幸せ、換言すれば「通じる」ということの偉大さに胸打たれる。触れることで信頼を得、最初の一言を理解し合えた時の喜び。ほとばしる言葉。

 だが全編、手話が主体だから、とても静かだ。この静けさの中で、触れることで理解する言葉の美しさが浮かび上がる。唯一音のある人の言葉が多く聞こえてくるのは食堂のシーン。食事中、BGMのように修道女が声で福音書を読み上げ、隣でこれを訳す手話が進む。マリーとマルグリットの動きに気をとられてしまうが、聞こえている福音書の箇所はまるで二人の関係の解説になるような内容が慎重に選ばれている。

 宗教とは関係なく、人が祈ることの意味、祈りたくなるときの気持ち、祈ることができる「言葉」の存在のありがたさが痛いほど伝わってくる作品だ。

Text by coco.g