肌の湿疹やかゆみに慢性的に悩まされる「アトピー性皮膚炎」は、乳幼児に多い疾患といわれている。これからの暑い季節は汗をかきやすく、症状が悪化するお子さんも多いのではないだろうか。OVO編集部は、アレルギー専門外来などで長年アトピー患者の診断・治療を担ってきた「武蔵小杉 森のこどもクリニック小児科・皮膚科」院長の大熊喜彰先生に、アトピーの原因や治療法、自宅でできる対処法について話を伺った。

■アトピー性皮膚炎とは?

Q.「アトピー性皮膚炎」はどんな疾患でしょうか?

 「アトピー性皮膚炎」は皮膚が「赤くなる」「小さなぶつぶつができる」「かさぶたができる」「(長期的にみると)皮膚が厚くなる」「乾燥肌が目立つ」などの症状が出る疾患で、乳幼児に多い傾向があります。

 かゆみを伴う湿疹が慢性的(1歳未満では2カ月以上、1歳以上では6カ月以上継続して)に良くなったり悪くなったりを繰り返し、かゆみがある湿疹が“左右対称”に出てくることが特徴です。

 また、以下のように年齢によって湿疹が出現しやすい場所がある程度決まっていることも特徴です。

・乳児:顔、首、頭、(ひどくなると)胸や背中

・幼児・学童:首まわり、耳の付け根の亀裂、膝の裏、肘の内側、尻

・思春期・成人:主に上半身(顔、首、胸、背)

 アトピー性皮膚炎は、生まれ持った「遺伝的要因」と「環境要因」が複雑に絡み合って発症します。遺伝も関係しますが、生まれ持ったアレルギー体質とその後の生活環境が複雑に関連して発症する疾患であるため、遺伝だけで決まるわけではありません。

 悪化させる要因には、年齢や生活環境などにもよりますが、黄色ブドウ球菌、ダニやカビ、花粉、乾燥、汗、ペット、食事バランス、夜型生活、睡眠時間の減少、精神的なストレスなどがあります。原因を検査で証明することは難しいですが、診断や病気の状態を把握する手掛かりとして行う血液検査があります。病院では湿疹の経過を丁寧に問診し、かゆみの有無や皮疹の性状などを詳しく見て診断をしていきます。

Q.食物アレルギーやぜんそく、花粉症などのアレルギー症状を持っている子どもは、アトピーになりやすいのでしょうか?

 乳児期早期にアトピー性皮膚炎を認めた(アレルギーになりやすい性質を持った)お子さんは、生後10カ月ごろに食物アレルギー、4歳頃に気管支喘息、小学校中学年でアレルギー性鼻炎が発症するといったことを多く経験します。このようにアレルギー性疾患が次々と異なる時期に出現してくることを「アレルギーマーチ」と呼びます。

 最近では、気管支喘息や花粉症を先に発症したり、もっと低年齢から発症したりする傾向があるため、食物アレルギーやぜんそく、花粉症などのアレルギー症状を持っている子どもはアトピー性皮膚炎を発症する可能性があります。

■病院での治療法を教えてください

Q.病院ではどのように治療していきますか?

①スキンケア(皮膚の清潔と保湿)②薬物療法(ステロイド軟膏、免疫抑制外用薬、内服薬)③悪化要因(黄色ブドウ球菌、ダニやカビ、花粉、乾燥、汗、ペット、食事バランス、夜型生活、睡眠時間の減少)への対策の三つが治療の基本です。プラスアルファの治療として④紫外線療法⑤漢方薬などがあります。

Q.ステロイド剤は副作用が心配ですが…

 ステロイド軟膏はアトピー性皮膚炎治療の基本となるので、根拠のある正しい使用法でしっかり使用しましょう。効果がない塗り方を続けてしまうと湿疹の改善がないため、かえってステロイド軟膏の積算量が増えてしまい、副作用が出てしまう可能性があります。

 われわれ医師は患者さん以上に、副作用(皮膚の萎縮、皮膚が赤くなる、白く抜ける、毛が濃くなるなど)を出さずに治療したいと考えています。適切なランクのステロイド軟膏を選ぶ、治療開始後1〜2週間程度で治療の効果判定を行い軟膏治療の強度を調整する、免疫抑制外用薬も使用するなどの方法を患者さんに提案し、副作用の軽減に努めています。

Q.子どものアトピーは成長と共に治りますか?

 アトピー性皮膚炎は何か一つの原因によって発症するわけではないので、治療のゴールはcure(治癒)ではなくcare(症状が抑えられ湿疹がない=寛解状態)を目指しており、寛解状態を維持することになります。しっかり寛解状態を維持していくと、多くの場合では成長と共に症状が治まっていく傾向にあります。

■アトピーの予防・症状改善のためにできることを教えてください

Q.汗が多くなる夏場に向けて、スキンケアに悩む方も多いと思います。アトピー体質を改善するために生活面で必要なこと、アトピー肌に正しい保湿の方法などを教えてください。

 気温も湿度も上昇してくる今の時期は、「汗」が原因でアトピー性皮膚炎の症状が悪化してしまうことが多くあります。本来、汗には「体温を調節する」「皮膚を乾燥から守る」という重要なはたらきがありますが、一方で汗に含まれるアンモニアや塩分が弱った皮膚への刺激となり、かゆみを誘発してしまうのです。

 アトピー性皮膚炎がある肌は湿疹がない部分も皮膚のバリア機能が低下しているため、今の時期はとくに皮膚への刺激を避け、しっかりと保湿することが大切です。汗はこまめに拭いて、ぬるめのシャワーで流すと良いでしょう。できれば朝晩シャワーを浴び、そのあとは余分な水分を拭き取って、肌に合う保湿剤をたっぷり使って全身を保湿してください。外出する際は日焼け止めを使用して肌を守り、吸水性や通気性の高い下着や衣類を身に着けましょう。バランスの取れた食事と十分な睡眠で、抵抗力を落とさないようにすることも大切です。

Q.タオルやスポンジ、ボディシャンプーの選び方は?

 なるべく防腐剤、香料、着色料が入ってない保湿力の高い石けんやボディソープを選び、よく泡立て、その泡を転がすように皮膚を洗い、よくすすぐことも重要です。ナイロンタオルは避け、木綿などの柔らかいタオルでこすらずに押さえるように拭きましょう。洗髪後に関しても、リンスが残っていると皮膚の状態が悪化する場合があるので、よくすすぎましょう。

■汗をたくさんかくスポーツ系の習い事も大丈夫ですか?

Q.汗をかくスポーツをしても良いでしょうか?

 汗はアトピー性皮膚炎を悪化させる要因になる一方で、「入浴や運動による適度な発汗は症状を悪化させないために重要」という説もあります。また、適度な運動は子どもの心身の発達にとっても重要です。皮膚の健康を総合的に考えると、できるだけ汗をかかない生活よりも、汗をかいた後に皮膚トラブルを起こさないためのケアをしていくことが大切です。

 われわれは、「スポーツを避ける」などの人生の可能性を制限するような指示を積極的にすることはありません。スキンケア・軟膏治療・悪化要因の対策をしっかり行い、習い事やスポーツを積極的に行っていただきたいと思っています。

Q.夜寝る前など、かゆくてしょうがない時の対処法を教えてください。

 かゆい部分を冷やすことは一定の効果があります。アトピー性皮膚炎のかゆみを我慢することは難しいので、医師に相談し抗ヒスタミン薬の内服を検討したほうが良いでしょう。

Q.体質改善のために、食生活で気を付けられることを教えてください。

 野菜をたくさん含んだバランスの良い食事(特に和食系)はアレルギーに良いといわれています。インターネット上の膨大な、アトピー性皮膚炎に良いとされる食品やサプリメントの中には、医学的根拠の乏しい「民間療法」が多く含まれていると思われます。

 アトピー性皮膚炎は良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性疾患なので、迷ったり苦しんだりすることもあります。「民間療法」が魅力的に映ることもあるかもしれませんが、「①スキンケア②軟膏治療(ステロイド外用薬)③悪化要因への対策」が、医学的根拠のある治療の三本柱であることを思い出し、医師としっかり相談してほしいと思います。

<文/小宮山のんの>