長期予報によれば、今年の夏は35℃以上の日が多くなる酷暑になりそうなのだとか。犬にとっても、飼い主さんにとっても辛い夏になりそうだけど、楽しく元気に乗り切ろう!!(Shi-Ba 2017年9月号より Vol.96より)

Style1 このコと一緒に暮らしたい!!「純白の美男子」に惚れ込んで

柳本慶太さん、美和さん&ヴァイス

「柴犬を飼おう」 
東京都にお住まいの柳本さんご夫妻がそう思ってから、ヴァイス(オス・10ヶ月)を飼うまでには少しタイムラグがある。最初は都内や近郊のブリーダーで探していたそうだが、「私の父は熊本出身なんです。せっかくなら、ゆかりのある土地から犬を迎えてみたいと思って」と美和さん。ふとした思いつきだったのかもしれないが、その思いつきがヴァイスを目にした瞬間に、運命の出会いへと変幻したのだ。お二人とも、すぐに飼う気になってしまった。

「純白の美男子。それがヴァイスと出会った時の第一印象でした。親バカですよねぇ」
そう言って笑う慶太さん。ひと目惚れというやつ。しかし、恋愛にも犬を飼うにも第一印象やひと目惚れは重要な要素。また、それが結果として大正解となることが多い。慶太さんと美和さん、ヴァイスの場合もそうだったのだ。

自営業の慶太さんは自宅で仕事することが多い。デスクに向かって仕事に没頭していると……。

「ふと気がつくと、ヴァイスがオスワリしてジッと見てるんです」
ジッと目で訴えながら、慶太さんが振り返るのを待っているという。吠えて要求してくることはあまりない。犬なりにいろいろ考えてるのだろうか?目が合えば、仕方ないので仕事を中断してヴァイスと遊んでやるのだが、それが慶太さんにとってもちょうどよい気分転換になるそう。

また、ヴァイスを飼うようになってから毎日1時間近く近所を散歩するようにもなった。これもまた仕事のストレスを解消して、生活のリズムが整う好結果に。柳本さんが住む場所は東京駅や銀座も徒歩圏内という都会のど真ん中。丸の内のオフィス街や秋葉原の電気街など、人であふれる町並みが散歩コースになる。

飼い始めて最初の頃はヴァイスは人混みに慣れなくてビビッていたという。しかし、最近ではそれにも慣れてきた。もうすっかり都会っ子って感じ。だが、やっと馴染んできた東京暮らしも、夏が過ぎたら終わってしまう。

「仕事の都合で、年内に中東のドバイに引っ越すことが決まったんです」

当初はヴァイスも連れて行くか、それとも親類に預けるか迷ったが、
「連れて行く!」
慶太さんの強い決意で同行が決定した。この数ヶ月の暮らしで、ヴァイスとお2人の間には、しっかり家族の絆ができていた。もはや、離れて暮らすことなど考えられない。

中東は、日本人には馴染みのない異文化の世界。気候もがらりと変わるため、心配なことはいろいろある。しかし、今の慶太さんの楽しみはアラビア海や砂漠を背に白いヴァイスが躍動する姿。今は、それを見ることが楽しみでならないと言う。

How to keep ヴァイスの場合

白さでは誰にも負けません!!

柳本さんがヴァイスを飼う気になったのも、白い毛色に惚れ込んだゆえ。「ヴァイス」の名も、ドイツ語で「白」という意味。大学でドイツ語を学んでいた慶太さんの命名によるものだ。

“欽ちゃん走り”にはどんな理由が!?

歩道の人混みが多くなると、体が斜めになり“欽ちゃん走り”してしまう。ビビって興奮してるのか? それともヴァイスなりに会得した効率的な歩き方か? この方が人混みをすり抜けやすいような……。

かわいがってるけどしつけは意外とキビしい

優しそうな慶太さんだけど、意外とスパルタの父なのだとか。とはいえ、暴力は絶対にふるわない。ひっくり返して、コンコンと長〜い説教をして諭すのだという。

しつこいヤツはちょっと嫌かも

最近は犬同士のあいさつもちゃんとできるようになった。でも、テンションが異常に高かったり、しつこくしてくるヤツはちょっと苦手。ぐいぐい寄って来られると、つい腰が引けて逃げまわってしまう。

【好き】テニスボールの大きさにはけっこうこだわってる

テニスボールを投げて遊んでもらうのが大好き。でも、普通のテニスボールだと大きすぎてくわえられないので、少し小さめのオモチャのテニスボールが一番のお気に入り。ボールが弾む音を聞けば、うれしくなって即座に遊ぶ態勢に。

【嫌い】キャスターバッグのガラガラ音が怖い!!

散歩コースにはホテルも多く、キャスターバッグを引いて歩く旅行者をよく見かける。しかし、ヴァイスはバッグに付いてる車輪のガラガラ音が大嫌い。音を聞いただけでビビッて飛びあがる。家の中でもキャリーバッグを見れば怖がり逃げ回る。

ヴァイスが考える柳本家の序列

叱る時には怖い慶太さんが序列の1位。「私も叱る時は叱るけど、あれだけの迫力はありません」と言う美和さんは2位。ヴァイスは3位。

Text:Makoto Aoyama Photos:Michio Hino

Style2 ゆっくりと流れる優しい時間をずっと一緒に

石川陽子さん&ユウヤ

「主人の名前が勝也で義父は拓也。我が家の男性陣は“也”がつきます。ユウヤの名前を漢字で書くとすればそうね……“裕也”ですかね。あの内田裕也さんと同じ。ふふふ」と笑うのは、東京都にお住いの石川陽子さん。石川ユウヤ(オス・15歳)の飼い主だ。

ユウヤの普段の呼び方は「ゆうちん」「ゆうくん」「ゆうゆう」と実に多彩だが、中でも陽子さんが気に入っているのが、ちょっとかわいい「ゆうちん」。ロックンロールのあの人はとても連想できないけれど。

石川家にユウヤがやってきたのは15年前のこと。もともと実家で犬を飼っていた陽子さんは「飼うなら日本犬」と決めていた。穏やかな性格のユウヤは、石川家にすぐに溶け込み、当時、思春期だった娘の杏子さんともあっという間に仲良くなった。

ユウヤの定位置は、2階のリビングだ。ここには石川家全員が集う食卓がある。時々はお父さんの夕飯のおこぼれをもらえるし、帰宅したばかりの杏子さんがモシャモシャと触りに来てくれる、ユウヤお気に入りの場所だ。そして日中、一番自分のことをかわいがってくれる陽子さんと過ごす場所でもある。

実は陽子さんは浮世絵の摺師(すりし)だ。浮世絵の販売や体験を行うお店で店長を任されている。中国に伝わる民衆版画「年賀」を学んでいたのが縁で、摺師になったという。現在は趣味で浮世絵の彫りにも挑戦。題材は、もちろん大好きなユウヤだ。

「歌川国芳という江戸時代の有名な浮世絵師が、猫を題材にしている作品を発表しているんです。国芳が猫なら、私にはゆうちんで挑戦しようじゃないの、って(笑)」

ユウヤを題材にした作品は、その名も『柴犬ゆうちん草紙』。現在2冊が完成している。1冊目のあらすじは、ユウヤが留守中にこっそりゴミ箱をひっくり返した話。もう1冊が晩酌中のお父さんに、ゴハンをちゃっかりねだる話。柴犬を飼っているお宅なら誰もが経験のある話だが、陽子さんの視点と木版画と和紙の質感が優しく、読んでいるとほっこりする。

ご主人が作ってくれた彫り台に向かって黙々と木版画を彫る陽子さん。文字など細い線を表現するには、硬質の桜の木が向いているのだが、作業にはかなりの力が必要で、自然と無口になってしまう。陽子さんの集中する様子を確認すると、リビングの隅へ行き、丸くなるユウヤ。柴犬らしくベタベタするのが苦手なユウヤにとって、程よい距離を保ちながら2人きりで静かに過ごす時間は至福のひとときなのだろう。安心した表情が印象的だ。

今まで大きな怪我も病気もなかったユウヤだが、15歳のシニアともなると、若い頃のように機敏とはいかない。
「14歳を過ぎた頃から耳が遠くなったみたいで、あまり呼びかけにも応じなくなったんです。階段も自分で降りられなくなってしまって」と陽子さん。

足腰が衰えてきたユウヤを気遣う陽子さんは、ヨガマットを敷き、足が滑らないようにする。ゴハンがモリモリ食べられるように、下がってくるお尻をホールドする。ケアをしなくてはいけないシーンが増えた分、スキンシップの回数が増えた。陽子さんはユウヤにたっぷり触れて、ちょっとうれしそう。だって15年一緒にいても未だ片想いといった感じで、ユウヤへの恋心は不動だからだ。

足腰が衰えないでほしい意味もあるが、外が好きなユウヤのために陽子さんは1日4〜5回散歩へ行く。ゆっくりとしか歩けなくなったが、その速さも心地いい。懸命に前へ進むユウヤに、近所の人からは「頑張れー」と声がかかる。ゆっくり、ゆっくりと。ゆうちん、いいね。その調子だ。

How to Keep ユウヤの場合

オフの日はご夫婦とユウヤでゆっくりと

年末年始、GW、お盆を中心に、1年にトータルで30日は長野県の木曽路にあるセカンドハウスへ出かける。その時は、浮世絵道具は持っていかず、ユウヤとゆったり過ごすことにしているそうだ。

おいしいものには目がありません!

フードには青菜や肉を混ぜている。年々食にこだわりが出てきたのか、オヤツは同じものを食べないので、ジャーキーなどの乾きものを数種類用意している。食べることが大好きで、食が落ちないのは元気な証拠。

10歳過ぎからは完全室内飼いへ

以前は、朝の8時から夕方の18時まで、家のガレージにある犬小屋につなぎ、夜だけ家に入れる生活だったが、5年ほど前から家に入りたがるようになり、今では完全室内飼いにシフト。排泄も室内だ。

女性群をトリコにする堂々とした体格

『ゆうちん草紙』は仲間内の作品展で発表している。モデルのユウヤを一度、仲間に会わせたことがある。みんなの感想は「案外大きいのね」。以前は16kgで、現在は少し落ちて14.9kg。たくましい体格も魅力だ。

【好き】玄関を見下ろせる2階の踊り場

リビングの角がユウヤの定位置だが、1階の玄関が見下ろせる2階のリビングの入口にある階段の踊り場もお気に入り。宅配便の人が来たり、家族の人が帰ってきたりするのを観察できるからだ。

【嫌い】うるさい掃除機あっち行け!

穏やかな性格をしたユウヤは、ガーッと大きな音を立てて進む掃除機が大嫌い。ひょっとしたらロックンロールも苦手かも。それと散歩途中のマンホールも足が取られそうで苦手。踏まないように上手によけて歩く。

ユウヤが考える石川家の序列

一緒に過ごす時間が長い陽子さんが1位。「しつこくされるのは苦手なのに、私が寝付くまで一緒にいてくるんです」と目を輝かせる。

Text:Megumi Hirakawa Photos:Masayuki Satoh