新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ビデオ会議やオンライン授業が増えた方は多いはず。また、VoicyやStand.fm、Radiotalkなど音声配信プラットフォームも多数登場。Twitterも音声ツイート機能を一部OSでスタートするなど、「オンライン上での音声コミュニケーション」に注目が集まっています。

スムーズなコミュニケーションを実現するためには機材、特に「マイク」が大きな役割を担います。そこで今回、長年ラジオDJやナレーションなどを務める“音声コミュニケーションのプロ”であるサッシャさんに、オーディオ評論家の土方久明さんがインタビュー。リモート収録に臨むなかで気づいたことや、実際に試したマイクの感想、そして伝わる話し方の工夫についてうかがいました。

■「音が良いと発言力が増す」 リモート収録で実感した「マイク」の重要性

—— 新型コロナウイルスの影響で、テレビやラジオの現場もリモート収録が増加しています。サッシャさんもレギュラー出演されているJ-WAVEや、「ズームイン!!サタデー」などのテレビ番組でリモート収録をされたんですよね。

サッシャさん:ラジオは感染者が出なかったので結果的にスタジオに行けていましたが、備えだけはしていました。テレビは2ヶ月リモート出演しました。

—— 苦労した点はありましたか?

サッシャさん:まずは環境の整備でしたね。どうやってスタジオに近い環境を構築するか、というのが第一のハードルでした。まずラジオの場合、スタジオって余計な音が入らないクリーンな環境なので、それを自宅でどう実現するか。次に通信環境。収録か生放送かでも違いますけど、安定した通信のためには有線LANの使用が必須条件。そうすると我が家では収録場所がリビングに限られるなあとか。

それからマイクです。特にラジオの場合は音が全てなので、自宅でどんなマイクを使うべきかは非常に悩むところでした。ダイナミックなのか、コンデンサーなのか…。

テレビは映像のクオリティの方を大事にするので、PCじゃなくiPadのカメラを使うことにしよう、と。一方音声に関してはそこまでシビアではないんですね。なので最初はスマホ付属のマイク付きイヤホンを使ってくださいと頼まれて。

—— あー、テレビでタレントさんが使っているのをよく見ますね。

サッシャさん:それで使ってみたんですが、収録を見直すと音がこもっているなあ…と自分としては納得いかなくて。なので、マイクを変えたい!と。そこからいろいろ試してみて思ったんですが、リモートだとスタジオと物理的な距離があるから、音質が悪いと発言力が減るというか…クリアな音ではっきり喋れると、発言権が強くなるなと感じましたね。

—— 音が良いと、発言権が強くなる!

サッシャさん:僕だけが喋るって決まってたらみなさん耳を傾けてくれるからいいと思うんですけど、テレビって出演者が何人もいるから、ごちゃごちゃっと一斉に喋っちゃうときがあるじゃないですか。そういうとき、クリアな音声の人の方が自然と耳に入りますよね。

—— なるほど、そうするとスタジオにいる人ともコミュニケーションが取りやすいから、発言を拾ってもらいやすくなる、と。

サッシャさん:それはビデオ会議でも同じだと思います。

—— すごく納得です。

■簡単に使えて音がいい。いいとこどりの「USBマイク」

—— いろいろ試したということですが、どんなマイクを試したんでしょう?

サッシャさん:主にオーディオテクニカの「AT9933USB」「AT9934USB」「AT2020USB+」です。

—— どれもUSB接続のコンデンサーマイクですね。

サッシャさん:ダイナミックマイクも考えたんですが、大きな声を出せない自宅の環境ならコンデンサーマイクもアリだなと。それに、色々機材を噛ませずUSBでシンプルにつなげられる安心感がいいなと思いました。

コンデンサーマイク

コンデンサー(蓄電器)の原理を応用したもの。振動膜にあらかじめ電気を貯めておき、音を受けて振動膜が動くと電圧がかわる。感度が高いので細かな音が録りやすく、「小声でささやくように喋る方に向いている」(サッシャさん談)

ダイナミックマイク

振動板(ダイアフラム)の中央に一体化したコイルが取り付けられ、周囲にコイルをはさむようにマグネット(永久磁石)が形成されている。ムービングコイル方式とリボン(ベロシティ)方式がある。「僕のように(笑)、大声でハキハキ喋る方に向いている」(サッシャさん談)

—— 僕もAT2020USB+を使ってみたんですけど、びっくりするくらい使いやすい。USBオーディオクラス対応だから基本的に全部のソフトで音声入力として使えますし、設定も慣れてしまえば1回10秒かからないですもんね。

サッシャさん:今回リモート収録環境を作るときに、J-WAVEのミキサーさんたちにも相談したんです。そしたらコンデンサーマイクは電源管理が難しいからすごく大変だよって言われたんです。ファンタム電源を入れる前につなげちゃいけないとか、いろいろ作法があるんですよね。

でもUSBマイクだと、コンデンサーでも全然そういうのを気にせず使えました。「簡単」と「音が良い」という“いいとこどり”で、びっくりしました。

—— 全く難しいことを考えずに音を良くできるから、普段機材を触り馴れてない人でも使いやすいと思います。試してみて、それぞれ実際どんな感想でしたか?

サッシャさん:「AT9933USB」は実売価格3,000円台ですけど、音が良いんですよ。ビデオ会議に使うの、とてもいいと思います。僕はオンエアでも使いました。この値段で自分の発言が通りやすくなるんだったら安いもんですよね(笑)

「AT9934USB」もすごく良かったです。AT9933USBから一歩先に進んで、音声コンテンツを手軽に始めたい方にいいと思いました。ただ僕が組み合わせたいiPadと相性が合わないみたいで、音量がすごく小さくなってしまって。 PCと組み合わせて使うなら問題なかったんですけどね。

「AT2020USB+」はもう、いろいろ使ったなかで圧倒的にパフォーマンスが高い。プロでも満足できるコンシューマー向けモデルという点では上位に位置するモデルだと思います。J-WAVEのスタジオでも使ってる「AT2020」のUSB版ですしね。

—— AT2020USB+はNetflixのリモート収録用推奨機材にも挙げられていますね。振動板の性能が優れてるから集音性能も高いし、筐体が金属製だから、接続機器とかUSBケーブルを介して伝わってくるノイズへのシールド効果も高い。マイクを選ぶときに大事になってくる「集音性能」と「低ノイズ」をしっかり満たしてくれるモデルですね。友達とのビデオチャットに使ってみたんですが、「すっごく音良いね!」とみんな驚いていました。

編集部:今回のオンライン取材も、サッシャさんと土方さんだけAT2020USB+を使っていただいてるんですが、PCの内蔵マイクを使っている他メンバーと比べて音がクリアで本当に聴き取りやすいです。

■OA中に大活躍。「AT2020USB+」はもはや手放せない存在に

—— それにAT2020USB+はヘッドホン端子が付いているのがすごくいい。

サッシャさん:そうなんです。AT9934USBにもついてるんですけど、AT2020USB+はさらにヘッドホンの音量調整と、マイクとヘッドホンのバランス調整っていう2個の音量調整ができる。

ヘッドホン端子が付いてるのが何故いいかって、自分の声を直接聴けるんですよ。

最初にテレビのリモート出演したときはマイク付きイヤホンをiPadにつないでやったんですが、それだと自分の声は入ってこない状態なんですよね。これ、業界では「マイナスワン」と言うんですけど。なので、耳栓して喋るみたいな状態になるのですごく大変で。もしくはミックスされた放送上の自分の声が入ってくる。そうするとちょっとディレイが発生したりして。

でもAT2020USB+を使うと、マイクで拾った声をイヤホン端子で直接自分の声を拾えるから、自分が聴いてる声と放送中に流れている声が手元でミックスされた状態で聴ける。これ、オンエア中にものすっごく役立ちました。僕がAT2020USB+を手放せなくなった理由はこれも大きいですね。

—— 話しやすさが変わる、と。これはビデオ会議でも役立ちそうですね。AT9933USB / AT9934USB / AT2020USB+は、テレワーク関連や巣ごもり娯楽の楽器録音用途で、今とにかく売れてるそうです。特に AT2020USB+は、4月からの昨年対比で3倍近く売れたとか。

サッシャさん:ですよね。AT2020USB+は品切れしてて最初買えなかったですもん。品切れしてなければ3倍どころか5倍くらい売れたと思いますよ(笑)。

やっぱりオーディオテクニカっていうメーカーへの信頼感も厚いと思うんです。僕はJ-WAVEの放送にも、SUMMER SONICのMCにもオーディオテクニカ製マイクを毎年使ってますけど、それ以外にもイベントや放送とかいろいろなプロの現場で使われてるじゃないですか、オーディオテクニカ製マイクって。そういうシビアな環境のなかでブラッシュアップされてきた技術が、コンシューマー製品に投入されているわけです。プロ用とコンシューマー用、両方の知見があるから、無駄を省いて価格を抑えつつクオリティの高い製品を作れるんじゃないかなと思います。

■どんな声を、どんな人に伝えるかを真摯に考える

—— YouTubeなんかの動画コンテンツに加えて、個人でできる音声配信プラットフォームも盛り上がってきています。サッシャさんは小さい頃からラジオに親しんできたそうですが、映像付きでない、音声のみのコンテンツの魅力ってどういうところにあると思いますか?

サッシャさん:たとえば夜寝るとき、目を閉じてベッドに横たわっていると、昼間は聴こえなかった音 ——遠くの幹線道路の車の音とか犬の鳴き声とかまで聴こえたりしますよね。人間の五感って相当視覚情報に頼っているんです。

たとえば会話で、相手が「美味しいですね」と言ったとき。多少声のトーンが暗くても、すごくいい笑顔をしていたら「ああ本当に美味しいと思ってるんだな」と分かったりしますよね。でもラジオは声だけだから、そうは行かない。本当に感情が載ってないと伝わらないんです。

ラジオは「聴覚」ひとつだけで楽しむもの。なので集中力が高まって、相手が何を考えて話そうとしているのか聴き分けようとしてくれる。だから内容がしっかりと伝わる、というところが魅力だと思います。

—— そういうことからも、声の細かな情報まできちんと拾ってくれるマイクって重要だなと思わされますね。ただ、声だけで伝えるってすごく難しい気がして…。 どんなことに気を配っていらっしゃいますか?

サッシャさん:ラジオの仕事を始めた最初の頃に言われたんですけど、まず「伝えたい相手」と「伝えたい内容」を具体的に決めるんです。たとえば……40代くらいの親戚のあのおばさんに話そう、そうすると敬語だけど打ち解けた感じのしゃべり方になるな。この話題はきっとこんな感じに伝えると分かってもらいやすそうだな、という感じで。

—— なるほど、言葉を伝えたい人を思い浮かべて喋る、と。

サッシャさん:そんなに難しく構えなくてもよくて、皆電話でやってるんですよ。それと同じ。音声コンテンツをやりたいと思っている人って、きっと自分がすごく好きなものとか伝えたいことがありますよね。その気持ちを、伝えたい人を思い浮かべてそのまま話せばいいと思います。

それと自分の喋りを録音して聴くといいですよ。そうすると自分の話し方のクセとか、伝わりづらいところを客観的に把握できるので。

—— そうですよね、そう思いつつも、録音した自分の声を聴くのって気持ち悪いなと思ってしまって…。

サッシャさん:僕もそうですよ(笑)。普段自分が知ってる声と違うから恥ずかしくてイヤだな、気持ち悪いな、もっと良い声に生まれたかった、とか思います(笑)。

—— サッシャさんほどの方でもそう思っていらっしゃるとは!

サッシャさん:でもやっぱりそうやって自分を客観視するってすごく大事なことで、それを積み重ねていくことでだんだん良いものができていくんだと思います。

聴いて落ち込む必要は全然なくて。まずは当たり前に受け止めて、そこから自分で「こうしていきたい」って考えていくと、喋り方って変わってくるんです。

—— お話しをうかがっていると、どんな声をどんな人に伝えるかを真摯に考えることは、最終的に“良いコンテンツづくり”にもつながるんだなと感じます。自分の声を伝えてくれるツールである「マイク」が、ビデオ会議やオンライン授業、音声配信などオンラインでの声のコミュニケーションについて考えを深めていくきっかけのひとつになるといいですね。