「初任給40万」中国企業が日本の学生をかっさらう

「初任給40万」中国企業が日本の学生をかっさらう

近藤大介(『週刊現代』編集次長)

IT分野を中心に中国企業の台頭が著しい。世界最大の中国市場で「勝ち組」となった企業が日本進出を果たしているいま、日本企業は中国企業の下請けになってしまうのか? 『二〇二五年、日中企業格差』(PHP新書)著者で、中国問題をライフワークとする近藤大介氏が最新情勢をレポートする。

日本市場の魅力は「安い」こと

最近、頻繁に来日するようになった旧知の広東省の電機メーカー社長は私にこう言った。

「日本市場の魅力は、何もかも『安い』ことだ。日本企業を買収しようと思うと、驚くほど安い。人件費も不動産価格も安い。おまけに技術力は高く、国民は勤勉で、社会は安定している。しかも中国の隣国だ。中国企業にとって日本市場は、まさに『宝の山』なのだ。

すでに中国とほとんどの国との間の経済関係は、中国からの投資額が中国への投資額を上回っている。これまで中国企業は、政治リスクを抱える日本への投資を躊躇してきたが、もう安心というわけで、2018年が中国企業の『日本進出ラッシュ元年』になっているのだ。中国企業にとって日本市場は、世界で最も『買い』なのだ」

たしかに、最近では日本でも、中国企業の存在をじわじわと感じるようになってきた。アリババのアリペイや、テンセントのウィチャットペイ(ともに電子決済)は、日本の百貨店やコンビニなどで浸透し始めている。

日本人よりも一足先に、中国人観光客たちが利用しているのだ。東京のデパートの正面玄関には、「アリペイ使えます」「ウィチャットペイ使えます」といった中国語の大きな貼り出しが出ている。

中国語で書かれているため、日本人はあまり目に留めないが、各デパートにとっては、すでに中国人観光客なしには商売が成り立たないほど、重要な存在になりつつあるのだ。

日本では、まだ電子決済の普及率はクレジットカードを含めても2割程度だが、中国ではすでに、アリペイとウィチャットペイ合わせて延べ13億人を超える人々が、日々の消費でスマホ決済を利用している。

中国の各都市を歩いていても、財布から現金を取り出すという光景はもはやほとんど見られず、完全なキャッシュレス社会が到来している。しかもスマホ決済は日々進化していて、指紋認証時代を経て、顔認証、静脈認証時代が始まっている。

つまり、中国はあらゆる消費の基礎となる決済の部分で、日本のはるか先を行っているのである。この1点を取ってみても、「日本=先進国、中国=発展途上国」という20世紀的発想は、もはや通用しないことが分かる。

実際、2017年秋以降、中国企業が日本進出する動きが顕著になってきている。例えば同年11月、富士通は中国パソコン最大手のレノボ(聯想)にパソコン部門を売却した。

レノボは、2011年にNECのパソコン部門も買収しているので、これで日本のパソコン市場の4割強を握った。レノボは民営企業を装っているが、中国政府傘下の中国科学院から興った会社で、いまでも中国科学院が最大の株主だ。北京の本社も中国科学院の敷地内にある。

2018年6月には、鴻海傘下のシャープが、東芝のパソコン部門を買収した。1985年に世界初のノートパソコンを発売し、「ダイナブック」で世界シェアトップを誇った名門も、中国系企業の軍門に降ってしまった。これからは日本でパソコンを買うと、中国系の会社の製品を買うことになる可能性が高い。

また、2018年7月には、ソフトバンクが、配車アプリ世界最大手の滴滴出行とDiDiモビリティジャパンを設立し、秋以降日本の主要都市でサービスを開始する。

滴滴出行は2012年に北京で創業した配車アプリ会社で、2018年現在、中国国内で4億5000万人以上の顧客を抱えている。

日本においても、すでに羽田空港を始め、各空港などに進出し、多くの中国人観光客を運んでいる。これは日本では白タクの違法行為だが、友人知人が空港に車で迎えに来たのと区別がつかないため、なかなか取り締まりにくい。その間にも、「赤信号みんなで渡れば恐くない」とばかりに、日本各地で浸透しつつある。

それを今後は、日本のタクシー会社と提携することで、合法的に進出しようというのである。スマホを使った配車システムでは、中国側はすでに膨大なビッグデータを蓄積しており、「中国が主で日本が従」という関係にならざるを得ない。

シェアサイクル中国最大手のモバイク(摩拝単車)も、すでに札幌で試験運営を始めた。今後は、日本全国のコンビニなどとマッチングしていくことが考えられる。日本には自転車文化が根づいていて、都市の交通網が整備されているため、シェアサイクルと相性がよい。

火鍋チェーン中国最大手のカイテイロウ(海底撈)も、東京・池袋に300席もある巨大店舗が上陸した。居酒屋だった店舗を2階分改装し、豪華な店舗に作り替えた。

2018年4月には、新宿・歌舞伎町の一等地に、2号店をオープンさせた。スマホが汚れないよう専用のビニール袋を客に支給したり、洗面道具を無料提供するピカピカのトイレなど、従来の中華料理店の常識を覆すサービスぶりである。

「池袋の象徴」と言われた西武百貨店を出ると、激辛火鍋の匂いが、プーンと鼻を突いてくる。きらびやかなウインドーを眺めながら、この強烈な匂いを嗅ぐたびに、中国企業の日本進出を象徴するようだと感じる。

ちなみに、西武百貨店1階の化粧品売場にも「爆買い」中国人たちが殺到している。そして池袋北口一帯は「東京の中華街」と化している。

他にも、前述のファーウェイとOPPO、世界の商業ドローン市場の7割を握るDJI(大疆創新)、世界53カ国・地域に支店を持つ中国銀行、中国最大の民泊企業の途家、中国最大のスマホ・ニュースサイト『今日頭条』を擁するバイトダンス・テクノロジー……。

世界最大の中国市場で「勝ち組」となった各業界の中国企業が、続々と日本進出を果たしているのだ。


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