新型コロナウイルスのワクチンが最も必要なのは、航空会社かもしれない。全日本空輸(ANA)が航空機の大幅削減を決めただけでなく、2021年にも全従業員1万5000人を対象に副業範囲を拡大する方針を固めた。中小規模の航空会社および関係会社も苦しい経営が続く。

だが、日本以上にダメージを受けているのが韓国の航空業界だ。コロナ禍前より危険信号が灯っていたが、コロナ・ショックにより「大破綻」は決定的となった。では、具体的にどこの会社が危ないのか? 

本稿では、人気経済評論家・渡邉哲也氏の新著『世界と日本経済大予測2021』 (PHP研究所)より、航空会社が直面する危機と、韓国の経済事情について解説する。


JALが大損害を回避できた理由

政府は中国、タイ、ベトナムなど16の国と地域のあいだでビジネス関係者らの入国を相互に認める協議で、PCR検査の結果が陰性であることの証明書の提出を義務付けるなどの方法を検討。

2020年10月には日本からの渡航者にPCR検査の予約システムが導入された。また、ビジネス関係者らの往来も条件付きで再開する見通しだ。

日本のような島国は、海を越えた人の移動さえ制限すれば、ウイルスの侵入を防ぐことができる。海が「自然の防波堤」の役割を果たすからである。

ところが大陸国家はそれができず、他国から人の流入と一緒にウイルスも入り込み、感染が広がってしまう。そうなると、海外ではウイルスの撲滅はほぼ不可能で、今後別の新型ウイルスが蔓延すれば、さらに困難な事態を招きかねない。

こうした状況で、新型コロナウイルス感染症の拡大で多大な影響を受ける業種はホテルやインバウンドなどの旅行業界だ。

なかでも航空会社が最も厳しいという見方もあるが、それは正しくない。航空会社は貨物も扱っており、旅客が少ない時期は貨物で補っている。乗客の座席にも段ボール箱を並べているシーンをテレビなどで見た人も少なくないだろう。

日本航空(JAL)は2020年8月3日に2020年度第1四半期のグループ連結業績の決算で純損失が937億円と発表した。これは2009年度第1四半期決算の最終損失990億円に次ぐものであるという。

しかし、新型コロナウイルスの影響で世界的に人の動きがなくなるなか、このレベルにとどまったのはある意味立派と言えなくもない。その原動力になったのが貨物の健闘で、貨物郵便収入は対前年比16・9%増の265億円となっている。


立ち行かないLCCの運営

航空会社のなかでも大ダメージを受けるのは、大韓航空やブリティッシュ・エアウェイ25ズ(英国航空)のようなナショナル・フラッグキャリア(国を代表する航空会社)ではなく、ローコストキャリア(LCC=格安航空会社)であるのは疑いない。

LCCはオペレーティングリースを基本としており、自社の機体を保有する企業はほとんどない。たいていの場合、リース契約期間中の途中解約は認められていない。そのため、運航できない状態が続けば、リースコストが経営を圧迫するのみになる。

各国ともに運航再開はナショナル・フラッグキャリアが優先され、LCCは後回し。これは空港のオペレーションを考えても仕方がないことだ。飛行機の運航以外に燃料の積載や修理点検、空港内の移動は、各航空会社が各社の責任で行なっているが、LCCはほとんどの場合、大手航空会社に代行してもらっている。それでナショナル・フラッグキャリアの運航再開が後回しになって、誰が納得するかという話である。

そう考えると、2021年最初に破綻が進むのは、LCCなのは間違いない。


韓国のメイン空港に旅客が来ない

それでも日本の航空会社はだいぶマシ。世界的にみて最も大きなダメージを受けているのが、韓国の航空業界である。

韓国と言えば、同国の航空業界第5位のイースター航空の経営危機を忘れてはならない。2019年の日韓関係の悪化に伴い、韓国の航空各社は日本乗り入れ便を次々と運休させた。いわゆる「No Japan」キャンペーンである。

これにより国際線の半分近くを日本行きに頼っていたイースター航空は大きな痛手を負った。客室乗務員に最長4週間の無給休暇を取るように要請するなど、末期的状況に陥り、2019年にはチェジュ航空による買収が決定した(2020年7月に買収撤回)。

こうした状況に2020年のコロナ禍が重なり、韓国のLCC(格安航空会社)はどこも青息吐息だ。イースター航空の買収に動いたチェジュ航空も先が見えない状況が続く。

そもそもLCCは基本的に航空サービスのための資産がなく、オペレーティングリースで回している。とくにアジアのLCCは短距離便中心で、エアバスA321とボーイング737を中心とした小型機を運用している。

小型機による短距離便で日本を中心とした地方空港や、オープンスカイ協定に基づいて、地方間の空港便を飛ばしていた。日本の空港だと成田や羽田ではなく、たとえば清州―新千歳など、国内便と同様に地方空港間の便を中心に運用している。

LCCが担っていた役割が、もう一つある。韓国のメイン空港である仁川に旅客を集めることである。国際空港をハブにして、仁川から中長距離便で欧州やその他の地域に飛ばしていた。

ところが、コロナ禍で欧米に行けない。地方間の航空便は完全に止まっている。そうなるとLCCは収入がないうえに、リース代など運営コストばかりがかさむ悪循環に陥る。飛行機そのものも小型機なので、貨物機としての運用ができない。これだけ悪い影響があれば、LCCは存続そのものが厳しくなる。

人口5000万人程度の国の規模で航空会社9社は多すぎるのは明らかなのに、2020年春に2社が新規に参入予定であった。マーケットが飽和状態になって、共倒れの危機に陥るのは子供でもわかる理屈だろう。幸いと言うべきか、新規参入はコロナ禍で保留になっているが、韓国の自己破滅的な経済運営は国家全体を沈没させかねない。

同じ航空会社でもナショナル・フラッグキャリアの大韓航空はまだ自社保有機が多いが、アシアナ航空の場合、8割近くがオペレーティングリースなので相当苦しい。現在、アシアナ航空の買収交渉を進めている会社がいくつかあるが、交渉が頓挫すれば、アシアナ航空も破綻する可能性はある。

韓国の産業構造は養鶏場と一緒。儲かると思ったら、市場規模も考慮せずにぎゅうぎゅうに詰め込む。その結果、マーケット全体が健全性を失い、極端な場合、健康な鶏まで一緒に死んでしまうのである。