トランプ大統領の方針のもと、アメリカは中近東から中国方面に軍事プレゼンスを移行している。これを警戒する中国は、11月の大統領選に向けて、トランプ氏に「ネガティヴ・キャンペーン」を仕掛けているという。そのためもあってか、バイデン氏有利、トランプ氏不利の構図が伝えられてきたが、実態はどうなのか。「日本の良さ」を誰よりも知る二人が、混迷の世界情勢を読み解く。

※本稿は、『ウイズコロナ世界の波乱日本は民度の高さで勝利する』(かや書房)の内容を抜粋・編集したものです。


横須賀基地が重要な拠点になる

【ケント】トランプ大統領は中近東の重要度、優先順位を、うんと下げました。これは大きなことですよ。

【石平】下げましたね。

【ケント】これまではエネルギー面で中近東に依存していましたから、あの地域の安定はアメリカにとって最優先課題でした。しかし、そのアメリカは今や産油国になってしまいました。もう、エネルギーを輸出する国なんです。アフガンから現在、どんどん軍を減らしています。

11月の大統領選挙までにゼロにできるかどうかはわかりませんが、アフガンで戦争を続ける意味がもはやないんです。

【石平】アメリカにとって今後の戦略として正しいのは、いわゆる、リバランス政策です。現在重要なのは、やっぱり、アジア太平洋地域。それはアメリカにとって生命線ですから。

【ケント】そうなんです。中近東から完全に引き揚げることができるかというと、そうはいきません。なぜかというと、アメリカはもう中近東の石油に依存していませんが、同盟国が依存しているからです。ですから、そこには軍事プレゼンスを置かないといけないのです。しかし、それ以外に戦争をする大義がなくなってしまいました。

中近東の「終わらない戦争」に費やしたお金は、日本円に換算して約1800兆円です。そのお金があったら、アメリカをもっといい国にできました。

現在、アメリカは中国方面に軍事プレゼンスを移行しています。最近はあまりニュースになっていませんが、南シナ海で中国と追いかけっこをやっていますよ。まるで、アニメ『トムとジェリー』のようにね。

【石平】ですから、もうアメリカ海軍の大半を今後は、太平洋、アジアに持ってくるんでしょ。

【ケント】そうなんです。横須賀基地はこれから非常に重要な拠点になります。南シナ海の軍事作戦をもっと早く行うつもりだったのですが、空母の乗組員がコロナに感染してしまい、ちょっと遅れてしまいましたが、確実にやっています。

大統領選挙のために中国は現在、選挙妨害としてサイバー攻撃をしているでしょ。内容は「トランプのネガティヴ・キャンペーンと、バイデンの持ち上げだ」と米国情報筋が警告しています。


大統領選の鍵を握るのはあくまで「激戦州」

【ケント】(11月の大統領選について)日本のマスコミは、世論調査の結果だけを見て、トランプが不利だと嬉しそうに報道していますが、アメリカも日本も世論調査ほど当てにならないものはありません。前回の2016年の選挙でも、ずっと世論調査ではトランプが不利だったんですから(爆笑)。

【石平】世論調査だけ見れば、トランプは大統領になっていないはずですわな。

【ケント】そうなんです。選挙人制度はわかります?

【石平】はい、わかります。

【ケント】直接投票ではありません。各州にその州の国会議員と同じ数の選挙人が割り当てられます。この選挙人はそれぞれ、誰に投票するかをすでに決めていて、州ごとに一番多く票を集めた候補者が、その州の選挙人の票を総取りできるというシステムです。要するに、子どものとき、誰でもやった陣地取りごっこだと思ってください。

前回の選挙では総得票数はヒラリーのほうがおよそ300万人多かったのですが、それは、民主党が圧倒的に強いニューヨークとカリフォルニアで「300万人ほど票を獲得しすぎた」だけです。

【石平】民主党の牙城ですからね。

【ケント】そうです。今回も数の上ではニューヨークやカリフォルニアはバイデンが勝ちますよ。しかし、どんなに大きな差をつけても、選挙人の数は変わりません。絶対トランプに投票する州もある。民主党が強いニューヨークとカリフォルニアは代表的ですが、絶対そうしない州もある。

問題は、そのほかにスイングステートと呼ばれる「激戦州」があります。選挙戦は主に、どちらの支持基盤なのか、わからない州で行われます。フロリダ、ノースカロライナ、オハイオを含めて12の州だと思います。

【石平】いわゆる紫の州ですね。大統領選挙で、各州、どちらが強いのかを地図で色分けする。赤が共和党で青が民主党。そのどちらでもないグレーゾーンを紫で表現します。ですから、大統領選は、どれだけ紫を取り込めるかにかかっているという話を聞いたことがあります。

【ケント】その通りです。どちらに入れるか未知数の州。本来は赤だけれど、もしかして、コロナの対応次第で青になるかもしれないという州です。それらの州でトランプ大統領のコロナ対応が評価されるかどうかが、鍵を握るんです。

次の大統領選挙は、大統領のコロナ対策の審判になると思います。しかし、新型コロナウイルス自体、トランプさんの責任ではありませんし、経済優先の対策は高く評価されると私は思います。

むしろ、問題になっているのは民主党の知事や市長です。経済活動を再開しようとするときに、独裁者みたいにいつまでもロックダウンしようとします。私には、これが一種のファシズムに見えるんですよ。トランプさんは「早く経済を再開させましょう」と言う。しかし、民主党の知事や市長は「いや、それは危ない」と止める。

特に厄介なのは、学校を再開しようとするときに、教員労働組合でコロナに関係のない不合理な政治的条件をつけようとすることです。そして、最も困っている人たちは、小・中・高校生の子どもを持っている家庭です。子どもが学校に行かないと、親がまともに仕事に戻れません。

【石平】いい加減、日本人も懲りたでしょ。テレビに出てくる自称・専門家が「なぜ、ロックダウンしないんだ」とさんざうるさく言って、「では、自粛してください」って言うと、また文句を言う。

【ケント】ですから、コロナ対策に関してはトランプさんは大丈夫だと思います。結局、世論調査を見ていると、トランプさんはスイング・ステート(激戦州)の中では有利なんですよ。ただ先ほど言ったように、あまり世論調査を妄信してはいけないのです(笑)。しかし、よほど下手なことをしない限り、私は当選できると思うんですよ。