11月1日、大阪都構想の是非を巡る住民投票が実施される。2015年の住民投票では僅差で否決され、当時の橋下徹市長は政治家を引退した。新型コロナ禍にあるいま、大阪都構想は大阪市民・府民の生活をどう変えるのか。日本に活力を与えるモデルとなるのか。日本維新の会代表で大阪市長の松井一郎氏に、「ラストチャンス」と語る住民投票の“覚悟”について聞いた。

※本稿は『Voice』2020年11⽉号より⼀部抜粋・編集したものです。

聞き手:Voice編集部(中西史也)
写真:大島拓也


知事・市長が変わっても二重行政に陥らないために

――大阪市を再編し、代わりに4つの特別区を新設する「大阪都構想」の住民投票が今年11月1日に行なわれる予定です。新型コロナ禍にあるいま、都構想の可否を問う理由をあらためて教えてください。

【松井】 コロナ感染防止策と経済政策は引き続き両立して実行していきます。そのうえで、中長期的な課題にも同時に取り組むのが政治家の役目です。

僕は、コロナ危機によってむしろ都構想の必要性が増したと考えています。世界中の経済が疲弊しているなか、それを再活性化するために必要なのは、地域ごとの成長戦略です。

戦略を立ててスピード感をもって実行していくリーダーや組織が不可欠でしょう。

いまは吉村知事と僕が同じ方向を向いて大阪全体を動かしていますが、将来、人が替われば再び府市の方針がバラバラになり、成長戦略すらつくれなくなってしまうかもしれない。

実際、橋下(徹)さんが大阪府知事に就任した2008年、大阪の大戦略を府市一体で策定しようとしても、当時の平松邦夫大阪市長は協力する気がなかったために物事が進まなかった。

大阪は戦後ずっと、府と市が連携できない「不幸せ(府市あわせ)」の状態でした。橋下さんが大阪市長、僕が大阪府知事に就いた2011年以降は、大阪が一体となって政策を実行してきました。

コロナ禍のいま、もう二度と大阪のなかで対立する愚かしい状況をつくってはなりません。

大阪都構想が実現すれば、経済戦略や広域インフラといった大きな施策は府に一元化し、住民の基礎的な行政は4つの特別区が担います。

超高齢化社会が進んで住民のニーズが多様化するなか、約270万人の大阪市民の声を大阪市長が一人で聴いて判断していくのは困難を伴います。

選挙で選ばれた区長を4人据える体制にすれば、よりいっそう住民の声をすくい上げ、迅速に意思決定することが可能です。

――首長個人の手腕ではなく、政策を実行するためのシステムを構築する必要があるのですね。

【松井】 そうです。東京都も1943年までは東京府と東京市に分かれており、二重行政が行なわれていました。そこで当時の東條英機内閣が、戦時下において府市一体で政策を進めるために都制度を導入した。

その後、東京都は日本を牽引するエンジンとなり、いまでは「東京一極」と言われています。しかしこれからの日本が成長していくためには、一極だけでは限界がある。二極、三極をつくっていかなければなりません。

大阪の大都市としてのポテンシャルを活かすためにも、大阪都構想を実現して東京と並ぶ日本の二極にしたいと考えています。