コロナショックによる経済への影響が読めない中、やはり心配になるのは「自分のお金をどう守るか」だろう。「今こそ投資」とばかりに、証券口座を開く人が増えているという話も聞く。

経済評論家の藤巻健史氏は、「巨大な危機が確実に進行している」と主張し、「今は『守り』の資産運用に徹するべき」とアドバイスする。そのことを説いた著書『コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方』(PHPビジネス新書)を発刊した藤巻氏に、「自分の資産を守るため、今すぐすべきこと」についてうかがった。

*本稿は、『コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方』(PHPビジネス新書)の内容を抜粋・編集したものです。


今は「守る」時期。すべての資産を円で持つのは無謀

投資の基本は「安い時に買って高い時に売る」。ただ、それができれば苦労はないわけで、プロですらそう簡単にはいきません。

ただし、これはあくまで「短期の値動き」の話です。どんなプロも短期の動きを正確に読み解くことは不可能です。ただし、「大きなトレンド」ならば、ある程度読むことができます。

その大きなトレンドを考えるならば、今は「守りのスタンス」に徹する時期だと思います。

今の日本はあまりにも巨額な財政赤字を抱えているうえ、「異次元の量的緩和」を繰り返したことで、「いつ水があふれてもおかしくないコップ」のような状態です。そこにコロナショックが襲いかかり、さらにリスクが高まっているのが現状。水があふれるとはつまり、ハイパーインフレが起きて円の価値が暴落し、資産の価値も暴落するということです。

コロナショック後の経済の先行きがあまりにも不透明な今、リスクを取るべきではないのです。こんな時に、お金を儲けようとするのは、ギャンブルというより、ただの無謀です。

インフレ時のセオリーは、他国に自分のお金を逃がすことです。第一次世界大戦後のドイツでハイパーインフレが起きた時も、助かったのは周辺諸国に財産を逃がしていた人たちだと聞きます。

有事の際に、自分の資産を守るために買う通貨のことを「避難通貨」といいます。手持ちの円を一部だけでも避難通貨に替えておけば、ハイパーインフレで円が紙くずになった時の保険になります。

そもそも、資産をすべて円で持っているということは、自分にはその意識がなくても、「円に100%賭けている」のと同義なのです。リスクヘッジの基本は分散投資です。ハイパーインフレが起ころうと起こるまいと、資産の一部を別の通貨に変えておくことは必須と言えるでしょう。

避難通貨の条件は、何よりも信頼性です。そうなるとやはり、先進国の通貨および金融商品ということになるでしょう。

中進国や新興国などは、経済的には伸びていても金融市場が発達していないので、金融商品の流動性リスクがあります。流動性リスクとは「売りたい時に適切な値段で売れない」というリスクのこと。私は30年近くマーケットの世界で生きてきましたが、売りたい時に売れないマーケットほど、怖いものはありません。

例えば、不穏な動きを察知して、1000万円の金融商品を売りに出したとします。しかし、誰も買い手がつかず、実際に売り注文が実行された時には200万円に下がっていた、などということもあり得るのです。刻々と損が膨らんでいくのをなすすべもなく見守るのは、まさに地獄です。

コロナショック後は、中国経済のさらなる拡大を予測する人もいますが、中国もまた、流動性リスクの高い国です。2015年7月、中国の上海株式市場で、多数の株が売買停止になったのは記憶に新しいところ。中国だけでなく、ブラジルやロシア、インドといったBRICs諸国も注意が必要だと私は思っています。


余裕資金がない人も、今すぐドルを買うべき

そう考えると、お金を逃がす先の候補は絞られてきます。具体的には米ドル、イギリスポンド、スイスフラン、豪ドル、カナダドルといったところでしょうか。ここでは詳しくは触れませんが、ユーロはある「構造的欠陥」を抱えているため、あまりお勧めできません。

どれを買ってもいいのですが、中心に据えるべきはやはり、米ドルでしょう。

日本円の金融資産をどのくらい持っているかにもよりますが、当面の生活には使わないであろう余裕資金は、ドルおよびドル資産に替えておくことをお勧めします。ちなみに私は資産のかなりの部分をドルに移しており、日々の生活に使う円が足りなくなって困るほどです。さすがにこれはやり過ぎにしても、ある程度まとまった金額をドルに移してしまってもいいのではないかと思います。

「自分にはそもそもドル資産に替えてまで守るべき資産なんてない」「住宅ローンの返済や教育費などで家計は火の車」という人もいるかもしれません。しかし、そういう人たちこそ、今から準備を始めるべきです。今、貯金がまったくないというなら、毎月の積立でドル資産への投資を始めていくという方法もあります。