27歳でソフトバンク〔株〕の社長室長に就任し、孫正義氏のもとで「ナスダック・ジャパン市場開設」「〔株〕日本債券信用銀行(現・〔株〕あおぞら銀行)買収案件」「Yahoo! BB事業」などにプロジェクト・マネージャーとして関わった三木雄信氏は、孫氏は創業当時からずっと「SQM思考」で行動してきたと言う。

SQMとはSocial Quality Management、つまり、社会全体で供給者と需要者をつなぎ、必要なものを必要なときに必要なだけ供給すること。ソフトバンクグループが多額の借金をし、時にはあえて赤字を出すのも、SQM思考をしているからだ。

※本稿は、三木雄信著『SQM思考ソフトバンクで孫社長に学んだ「脱製造業」時代のビジネス必勝法則』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。


借金できるのも実力のうち

日本人は「借金」という言葉が大嫌いです。

「お金を借りること=悪いこと」という価値観が根付いているのでしょう。確かにひと昔前は、自前でコツコツお金を貯めるのが最も確実で安全だったかもしれません。

しかし、孫社長の考えは正反対です。

「お金を貸してくれるということは、ソフトバンクという会社の価値を認めてくれている証拠。だから借金できるのも実力のうちなのだ」

つまり借金は、マイナスを背負うどころか、企業価値の証明になる素晴らしいことなのだ。そう孫社長は考えているわけです。

今は世の中の「人・もの・金」を必要なときに必要なだけ調達できる時代です。そして調達に必要なのは事業アイデアだけ。以前は土地や建物を担保にしなければ借りられなかったお金が、発想一つで手に入るのです。

孫社長なら、「借金しないなんて損じゃないか!」と言うでしょう。


「お金は天から降ってくる」

「お金は天から降ってくる」

これは孫社長がよく口にしていた言葉です。

事業アイデアが次々と湧いてくる孫社長にとって、これは冗談ではなく実感だったのではないでしょうか。おかげでソフトバンクグループは、いまや日本有数の「借金王」です。

2018年12月に東洋経済新報社が発表した「借金の多い企業トップ500」でも、4年連続で堂々の1位に輝きました。

その額は、前年の12.6兆円からさらに膨らみ、13.7兆円に到達。米国の携帯電話会社のスプリントや英国の半導体設計大手ARMを買収したことが巨額負債の原因だと報じられています。ARMの買収だけで約3兆3,000億円を投じたのですから、負債額が膨らむのも当然です。

これを読んだ人は「そんなに借金してソフトバンクは大丈夫なのか?」と思うかもしれませんが、もし孫社長がこの記事を読んだら、「どうだ、ソフトバンクはすごいだろう?」と鼻高々で自慢するはずです。

ソフトバンクに実力がなければ、これだけのお金を借りられるはずがありません。

しかも借金して買収したのは、スプリントやARMという巨大企業。特に後者は、「世界中のスマートフォン端末の97%はARMが設計したチップを搭載している」とされるほどの圧倒的シェアを誇ります。

今後IoTが拡大し、あらゆるものにチップが搭載されるようになれば、ARMは半導体設計の世界でほぼ一強の勝ち組になるのは間違いありません。それはつまり、買収したソフトバンクが世界的な勝ち組になるという意味でもあります。

借金の額が大きくても、そのお金を投資して得られるリターンが借金の額をはるかに超えるものならお得じゃないか。

これが孫社長の思考回路です。

「借金=悪」の思い込みから抜け出し、「自分たちの会社や事業の成長性を高めるための有効資源」とポジティブに捉えることが、これからの時代に勝てるビジネスを生み出すためには必須となるでしょう。