著名人の「新型コロナウイルス」への感染が増加するなかで、自身の感染を謝罪をする対応について、賛否の声が上がっている。

もし自分が感染してしまったら、どういう対応をするだろうか? 自分が悪いと謝罪するのか、他人のせいと考えるか、環境に原因を求めて説明するのか…。ここには性格や考え方の違いが大きくあらわれる。

本稿は、新著『人間関係の悩みをスッキリ解く 5つの公式』を上梓した心理カウンセラーである石川千鶴さんに、作家エージェンシー代表でかつ自身も『花戦さ』などのヒット作品の著者でもある鬼塚忠さんが、人の性格がどう形成されていくのかについて聞いた。》

同じ出来事に対して、人の考え・感情・行動はこんなに違う。

(鬼塚)石川先生は、人は同じ出来事に直面したとき、考えや感情、行動は大きく違うと本で書かれていましたよね。

(石川)はい。例えば、今、世界中で蔓延している新型コロナウイルスですが、すごい恐怖ですよね。私も感染しないように日々生活しています。この新型ウイルスですが、鬼塚さんは、もし感染したらどう考えますか?

(鬼塚)もし感染したら、ですか。どうって、おそらく、感染を避けるよう必死に細心の注意を払ったけど、どこかに隙があったのでしょうね、と半ば諦めるというか。そう考えますね。

(石川)つまり、鬼塚さんは自分が悪いと考えるのですね。説明しますね。人は予想しない出来事に直面したとき、主に3つに思考回路に分かれます。

みな、同じような反応を示すわけでなく、それぞれに考え方の癖があります。その3つとは「自分否定タイプ」「他人否定タイプ」「世の中否定タイプ」です。

自分否定タイプの場合、感染の予防に怠りがあった自分が悪いと考え、そのあと、私はダメな人間だと思い込み、気持ちは落ち込みがちになります。周囲の人間に「申し訳ない。私のせいで感染し、仕事もしばらくはできなくなった」と平に謝るでしょう。

(鬼塚)確かに。もし感染したら、間違いなくそのような行動に出るでしょうね。

(石川)では他人否定タイプの場合、誰が私に新型コロナウイルスを伝染させたのだという考えになり、その感染者を探し出そうとし、あの会話の時に、マスクをしなかったあの人じゃないか、というふうに決めつけ、あの人は自分のことしか考えていないと激しく怒り、その人をとことん追求するでしょう。

世の中否定タイプはどうでしょうか。こんなウイルスを感染させたのはウイルスの蔓延を許した社会が悪い。そして、この国の政治家は国民のことをどうとも思っていない、と思うようになり、失望、あきらめの感情が出てきます。

ついには、この国の政治家たちは自分たちの保身ばかり考えてとなげき、ため息をつきます。大まかにいうとこのように「自分否定」「他人否定」「世の中否定」の3つのタイプに分かれます。鬼塚さんは、自分否定タイプでしたね。

(鬼塚)どうやら、私は自分否定タイプに属しそうですね。他人否定タイプの人、世の中否定タイプの人も私の身の回りにたくさんいます。

確かに、電車の中で足を踏まれたら、「すみません」と自分を悪く思う人、「痛いじゃないか」と踏んだ相手を責める人、「この電車は混みすぎなんだよ」と嘆く人がいますよね。

(石川)その反応で人の性格がわかります。性格は「考え方のくせ」とも言い換えられます。

性格は後天的な要素で形成される

(鬼塚)性格って生まれつきのものなのではないですか?

(石川)性格は生まれついたものがすべてではありません。その大半が生まれ育った環境によって形成されたものなのです。人は誰でも考えを巡らせる際にある一定の思考の型に当てはめます。

すでにある考え方の道筋が出来上がってその上に乗るだけです。人は考えているようで、実は、いつも同じような思考回路をたどり、そこから行動を起こしたり、感情が生まれたりします。

(鬼塚)人が行動を起こしたり、感情を持ったりする基礎となる性格の大半は、生まれ育った環境により形成されるということですね。では、人の性格、つまり考え方の癖はどのように作られるのでしょうか?

(石川)脳科学的に見ると、思考の根っことなる部分は7歳までに完成されると言われています。人は生まれてきたばかりの頃、身体はまだ完成していません。脳も臓器も非常に不安定な状態です。

赤ちゃんが激しく揺さぶられると脳内が傷つき、障害が残る「乳幼児揺さぶられ症候群」という症状がありますが、これも脳が不安定であることに起因するものです。

そして、3歳までに受けたネガティブな刺激は消えることなく、一生残ります。成長の段階で脳も発達し、3〜7歳くらいまでの間に大人と同じような脳が完成されていきます。

その間にネガティブな刺激を緩和する機能が作られます。この機能が3歳以降の早い段階で作られる人はネガティブな刺激もネガティブなものとして残りません。

しかし、この機能がゆっくり作られる人の場合は、この間に経験したネガティブな刺激はネガティブなものとして刻まれます。幼少期の刺激は大人に比べて強烈に頭に刻み込まれます。そして、この間に得た経験から生きるためのルールが形成されていきます。

例えば「まったくダメねえ。これちゃんとやりなさい」と親に注意されるとします。小学校を過ぎて、ある程度、親の言葉の真意が分かるようになれば、「ああ、親は私に期待をかけているんだな」と気持ちを推し量ることができます。

ですが、小学校に上がる前の子どもはそのように人の言葉の真意を探ることはできません。ですから、「ダメねえ」「やりなさい!」と言われれば、そのまま受け取ります。

その結果「親にダメと言われた。だから自分はダメなのだ」とか「やりなさいと言われたのは私ができないからだ」と思うようになるのです。このような経験が重なるうちに、「いつも親が私に怒っているのは、私がダメだからだ」という考えが定着してしまいます。

このように、小さい頃から、きつく叱られたりすると、自分を否定的に考えがちになります。このような人は先にあげた自分否定タイプになります。

子どもは親の反応を見て、考え方をコピーしていく

(鬼塚)まさしく。私も自分否定タイプですから、そういう感じで育ってきたという記憶があります。

(石川)これが例えば「あの子みたいになっちゃダメよ」「ああいう子はよくないわね」と誰かを非難するようなことを言われ続けて育つと「他人が悪い」という思考が根付いた「他人否定タイプ」になります。

また、この世の中は悪い人ばかりだから気をつけなさい」と言われながら育つと「世の中否定タイプ」になります。このように、小さな頃の環境的な要素が人間の性格の形成に大きく影響します。

子どもは親の背中を見て育つ、と言われるように、子どもは親を真似て育ちます。例えば、母親と一緒に駅のホームを歩いていた時、母親が誰かとぶつかったとします。

その時、母親が「すみません」というか、「痛いわね」というか、「このホームは狭いわね」と言うか、母親のタイプによってその反応は違います。

そして子どもは母親の反応を見て、考え方までも真似ます。こうして、自分否定タイプの子どもは自分否定タイプに、他人否定タイプの子どもは他人否定タイプに、世の中否定タイプの子どもは世の中否定タイプになりやすいのです。

(鬼塚)思考タイプは遺伝ではなく、育っていく環境のなかで親から子どもに引き継がれやすいということですね。では、どのようにして一度根付いた思考タイプを変えることができますか?

(石川)性格、つまり思考は作り上げるものです。ですから必ず性格は変えることができます。