ともに少しずつ前へ【子育て体験談】

ともに少しずつ前へ【子育て体験談】

◆ともに少しずつ前へ〜負けそうな私を立ち直らせてくれたできごと

5歳になる息子は、2人の姉にくっついて遊ぶかわいげな“僕ちゃん”と、“オレオレ反抗期”を巧みに使い分けながら毎日元気に過ごしています。

息子は安産で生まれましたが、生まれてから活気がなく、母乳もさほど飲めないのにお腹がスイカのように膨れ上がりました。大学病院に転院して検査したところ、ヒルシュスプルング病であることが判明。息子の場合は肛門から直腸にかけての神経が先天的に欠損しているため、便とガスを出すことができず、手術で神経のない部分を切除することが決まりました。

しかし、新生児期ではまだ体が小さいので、生後4カ月ぐらいになってから手術をすることになりました。それまでの間は、自宅で数時間おきにお尻に管を入れて、反対側の管を水の入った紙コップに差し、便とガスを出す処置が必要でした。

動く足を押さえながら、何とか管を入れたかと思うと紙コップの汚水がこぼれたり、夜中に寝た子を起こして管を入れたり、うまくガスが出なくて何十分も手こずったり、それでも結局は腸炎になって入退院するなど、家事育児に加えて息子のお尻と闘う日々でした。

4カ月を過ぎた頃、ようやく根治手術を終えました。主治医の先生からは「これでみんなと同じようになりますが、もう少し経過を見る必要があります」と説明を受け、その直後から、今まで何も出なかったお尻の穴からウンチが出るのを見て、感激と同時に安堵したのを覚えています。それからというもの、おならやウンチが出るたびに嬉しい気持ちになりました。

3歳頃におむつは外れましたが、直腸がなく便をためておく機能が未熟なため、意思とは関係なく便が少しずつ出てパンツにつくようになりました。汚れたパンツを洗うのも大変になり、かといっておむつではかわいそうだったので、生理用ナプキンをパッドにして使うことにしたのですが、1日10回以上出る日もあり、パッドがずれてパンツが汚れることも多々ありました。きれいにした10分後に「うんち出ちゃった」と聞くと、がっかりを通り越して苛立ち、小さくてかわいいお尻を叩きたくなる衝動を、唇を噛みしめながら抑えたことも一度ではありません。

わざと漏らしているわけではないのに、私は息子にも聞こえるため息と暗い表情で、お尻を拭き続けていたのでしょう。ある日突然、「じゃあぼくに、うんちが出なくなるおくすりをのませてよ!!」と泣きながら言われた日には、息子を抱きしめながら、私も我慢し続けていた涙を流しました。保育園でもクラスが上がるたびに恥ずかしい思いをしていたのだと思いますが、息子が泣き言を言ったのはその1回だけで、自分でパッドを貼ってパンツをはく姿を何度も見ていました。汚物を見るたび、洗うたびに、イライラして強くいられないのは母のほうだったと、胸に刺さりました。

また、私には遠くに住む親友がいて、彼女は手術の後遺症で排尿障害を抱えているのですが、久々に再会したときに息子の話をしたら「ちゃんとウンチが出るってすごいことだよ! 喜んであげなきゃ!」と言われてはっとしました。排泄物が出ない苦しみとずっと闘っている方もいます。私だってそれを経験したはずなのに、汚れた下着と臭さにウンザリして、これまでの病気の心配も苦労も治った喜びも、忘れてしまっていました。

成長とともに腸の機能も発達するそうなので、親友と息子の言葉に気づかされた今は、トイレで一緒に声かけしながら便を出し切る練習をしています。そして、後遺症と闘いながらも支えになってくれる親友と、汚れ物の後始末をしてくれる保育園の先生に感謝の気持ちを忘れず、息子とともにこれからも頑張っていきたいと思います。

(山形県・38歳・公務員)

「のびのび子育て11月号」より


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