不登校児童の数は年々うなぎ上りに増加し、現代ではもはや珍しいことではなくなってきています。しかし、いざ学校に行けなくなると不安や焦りに押しつぶされてどう対処すべきか悩んでしまっている、という親子がたくさんいます。本稿では作家の佐藤優さんが、中学生のナギサとミナト、ロダン先生の対話形式をとって「不登校」について解説します。

※本稿は佐藤優著『正しさってなんだろう 14歳からの正義と格差の授業(Gakken)』から一部抜粋・編集したものです

不登校は1つの意思表示

【ロダン】本当にどうしようもなくなったら、逃げたっていいんです。はなれてみれば、それまで自分の世界のすべてだと思いこんでいた学校やクラスが、実は、すごくせまい、かぎられた世界にすぎないことがわかるし、そこでなやんだり苦しんだりしたことも、いつか「なんであんなことで絶望してたのかな。世界はもっと広いのに」と、冷静にふり返ることもできるかもしれません。

【ミナト】いまいる学校やクラスがすべてじゃないって気づくだけでも大きいかも。

【ロダン】人生はいくらでもやり直しが効く。1度や2度、つまずいたくらいであきらめる必要は全然ないし、いまのクラスが合わないなら、クラス替えまで待てばいい。それでもダメなら、いったん人間関係をリセットして、別の学校に転校したり、地元とははなれた学校に進学すればいいんです。

【ミナト】高校デビュー、とか言われたりしないかな......。

【ロダン】そんなくだらないこと、言いたいやつに言わせておけばいいんです。属する集団が変われば、自分の立ち位置が変わるのは当たり前で、あるグループで3軍だったからといって、別のグループでもずっと3軍なんてことはありえません。

入試で同じような学力の生徒が集まれば、余計な気をつかう必要がなくなって居心地がよくなる、というのは実際よくあることだし、考え方や好みが似た人がたくさんいれば、親友だってきっと見つかります。

【ナギサ】クラスメイトのいじめや、教師による体罰や言葉の暴力に耐えられなくなった人は、学校を辞めるのも選択肢になるわけですね。

【ミナト】大人は、いまの会社がイヤなら、勝手に別の会社に転職すればいいかもしれないけど、子どもは自分だけでは決められないよ。

【ロダン】大人になっても職場のいじめはなくならないし、パワハラ上司もいれば、会社や取引先のえらい人によるセクハラだってある。それがイヤなら、自分で転職や独立を決めればいいけど、中高生は親の同意がなければ、転校もできません。

だから、親に相談してほしいんだけど、なかには親が無関心で、親身になって話を聞いてくれないこともある。

【ナギサ】それ以前に、親になんて言えないって人も多そう......。

【ミナト】反抗期のまっただなかだと、親とは口もききたくないって人もいるだろうし。

【ロダン】そうなると、できることはかぎられる。でも、あきらめることはありません。学校をサボればいいんです。理由を聞かれたら、「おなかが痛い」「頭が痛い」とか言えばいいでしょう。

それが何日か続くと、親から文句を言われるだろうし、担任の先生からも「学校に来るように」と催促されるかもしれない。それでも不登校を続けていれば、さすがに親も気づくはずです。何かおかしい、と。

【ナギサ】ウソをつくのはちょっと......。

【ロダン】そう思う人は、正直に親に打ち明けてください。学校で何が起きていて、どんなことをされたのか。それが言えない人は、だまっているしかない。学校に行かないことだって、立派な意思表示です。

子どもが真剣になやんでいるなら、親の出番です。親が味方になって動いてくれるまで、1人で抵抗を続けるしかないんです。そうして不登校を選んだ小中高校生がいま30万人近くいます(図)。

【ミナト】ぼくたちと同じ中学生が多いね。