平田満 映画『蒲田行進曲』でヤスを演じた思い出

平田満 映画『蒲田行進曲』でヤスを演じた思い出

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、劇団「つかこうへい事務所」に加わっていた俳優の平田満が、つか氏の代表作『蒲田行進曲』が映画化するにあたり、大部屋俳優のヤスに抜擢された当時の思い出について語った言葉についてお届けする。

 * * *
 平田満は一九八二年、つかこうへいの舞台『蒲田行進曲』の映画化作品で主人公に大抜擢される。往年の時代劇の撮影所を舞台にした物語で、大スターの「銀ちゃん」のために命がけで撮影に臨む大部屋俳優「ヤス」を演じた。

「映画は映画の人がやるもんだと思っていたので、まさか出るとは。どんないきさつで僕になったのかは全く知りません。つかさんに『お前、今度映画に出るぞ』っていきなり言われて。

 舞台では柄本明さんがヤスをやっていて。その舞台には僕も出ていましたから、稽古の段階からつかさんの言葉は聞いていました。つかさんの世界観が凝縮されているなあと思いました。かなりテンションの高いというか、中身の詰まった芝居だと思っていました。

 それが直木賞をとって映画になって。ですから、自分がどうこうよりも、つかさんの言葉が一般の人にも受け入れられ、面白く観てくれているということが嬉しかったですね」

 撮影は物語の題材でもある、東映京都撮影所で行われた。

「東映は怖い所だと聞いていたんですが、知らない強みというか。ペーペーなので大きな顔をしなければいいだろう。みんな怖い人だから目を合わせないようにしよう。そんな感じでした。

 知らない方がかえってよかったんでしょうね。生半可に『俺は知っているんだ』となったら向こうも『おい、違うぞ』となったかもしれませんが、何も知らないので何を言われても『はい』とやっていました。

 それで人畜無害な奴と思われたのかもしれません。軋轢とかは全くありませんでした」

 監督は深作欣二だった。

「優しかったですよ。僕を見てすぐに『コイツはこういうのは初めてなんだな』と分かってくれたんでしょう。怒ることは全くなくて、何度もリハーサルしてくれたり、『ここにフレームがあって、こう顔が映るんだよ』と教えてくれたり。

 監督がそうしてくださると、スタッフも『あのできない奴が──』とはならないんですよ。監督がそうなら、それについていこうということだったんじゃないですかね。

 それから深作さんは最初の段階から『変に映画用の芝居とかじゃなくて、舞台でやってるように芝居してくれればいいから』と言ってくれたんですよね。それなら僕も柄本さんがやっていたのを体感していたので、やりやすかったです。他の役者さんからすると『いつもこんなテンションでやってるの』って異様だったみたいですが」

 ヒロインの小夏は松坂慶子が演じている。

「松坂さんがまた腰の低い方で。こちらの方がつかさんの舞台を知っていると思って、『こんな芝居でいいですか?』と聞いてくださったこともありました。

 大スターでこちらは雲の上の人と思っていましたが、芝居が終わったら無視なんてことも全然なく普通にお話しくださるし、凄く嬉しかったですね。

 良い人たちに出会えましたね。おかげで、どうしたらいいかと悩むことなくやれました」

●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中。

■撮影/木村圭司

※週刊ポスト2019年7月19・26日号


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