画面中央には、ポニーテールの女の子の後ろ姿。遅れて登場した男性が目の前に座ると、まるでニュース番組のようにインタビューが始まった。

 アナウンサー役の女の子の「なんで毎日サンダルを履いているんですか?」といった無邪気な質問に、顔をほころばせながら答えるのは市川海老蔵(42才)。質問するのは長女の麗禾ちゃん(れいか・8才)だ。その声の柔らかさは、どことなくアナウンサーだった亡き母・小林麻央さん(享年34)を思わせる──。

 海老蔵が6月3日に開設したYouTubeチャンネルでは、長男勸玄くん(7才)と相撲を取る様子や、麗禾ちゃんと100円ショップで買い物を楽しむ様子などがアップされており、すでに登録者数が16万人を超える(6月22日現在)人気チャンネルだ。歌舞伎関係者はこう語る。

「配信動画のラインアップの中では、顔は見せなくても麗禾ちゃんが中心で取り上げられているものが意外に多い。そこには、“姉弟格差”を埋めてあげたいという海老蔵さんの思いがうかがえます」

 2019年7月に初舞台を踏んだ勸玄くんは“かんかん”の愛称で親しまれ、歌舞伎ファンだけでなく、若い女性や子育て中のママ世代からも大人気。海老蔵も勸玄くんが稽古を積む様子をSNSで積極的に発信している。

「昨年1月、海老蔵さんの十三代目市川團十郎白猿襲名と同時に、勸玄くんが八代目市川新之助を襲名することが発表されました。歌舞伎界きっての名門・成田屋の後継者として、勸玄くんはすでにレールを歩み始めているのです」(前出・歌舞伎関係者)

 一方の麗禾ちゃんも、歌舞伎が大好きで、インスタグラムでは勸玄くんと一緒に練習する様子も見られる。

「2018年1月の初春歌舞伎公演の『日本むかし話』では、かぐや姫を見事に演じきり、海老蔵さんも大喜び。新型コロナがなければ、5月から行われる予定だった『十三代目市川團十郎白猿襲名披露』興行にも出演する予定でした」(別の歌舞伎関係者)

 しかし歌舞伎界には「女性は子役でしか舞台に立てない」という「掟」がある。

 歌舞伎の名門・高麗屋に生まれた松たか子(43才)も、同じく名門・音羽屋の長女・寺島しのぶ(47才)も、それゆえ歌舞伎役者ではなく、女優の道を選ばざるを得なかった。

「生まれたときから家族も周囲も歌舞伎一色。幼少の頃の松さんのいちばんの遊びは“歌舞伎ごっこ”で、雑誌『演劇界』をボロボロになるまで何度も読み、ほとんどの演目の名ぜりふを諳んじられるほどだったそうです。寺島さんも幼い頃から父・尾上菊五郎さんと同じ舞台に立つことを夢見ていたと公言しています。しかし、成長するにつれ、それが決して実現できない“夢”であることを思い知った」(前出・歌舞伎関係者)

 そんな女性たちの苦悩を目にしてか、海老蔵のなかには「梨園はこのままでいいのか」という強い思いがあるようだ。

 2017年2月、「六本木歌舞伎『座頭市』」で主役を務めた海老蔵が、相手方に指名したのは寺島しのぶ。そのとき、海老蔵はこう話していた。

「歌舞伎がいまの形になってから2〜300年という月日が経って、そろそろ考え直す時期(中略)性別を理由に女性が歌舞伎をできないことが、ぼくにはわからなかった」

 冒頭の動画で、麗禾ちゃんは、父と弟の襲名披露が新型コロナの影響で延期されたことについて「どんな気持ち?」と質問。それに対して海老蔵は「いまは一歩足を止め、新しい時代が来る、新しいことが起こる。そして過去の大切なものはちゃんと残していく。精査する。自分が判断して冷静に考える時間だと思う」と噛みしめるように語った。

 パパの“難しい回答”にも熱心に耳を傾け、「ありがとうございました」とお礼を言った麗禾ちゃん。いつかきっと、この言葉に込められた父の真意が大人になった彼女を舞台に上げる日がくるだろう。

※女性セブン2020年7月9日号