毎回、20%を超える世帯視聴率を叩き出している人気ドラマ『半沢直樹』(TBS系)。ドラマの放送中や放送後に、視聴者が“参加”する「ネット大喜利」が盛り上がりを見せている。こうしたテレビの新たな楽しみ方について、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 コロナ禍による放送中断もまったく関係なし。2週間ぶりに放送された13日の第8話が自己最高の世帯視聴率25.6%を記録し、クライマックスに向けて大いに盛り上がる『半沢直樹』(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

 原作小説を大胆に脚色した脚本、スピード感と重厚感を併せ持つ演出、それに応える俳優たちの熱演……盛り上がる要素が多い中、もう1つ特筆すべきは「放送中や放送後にネット上で大喜利を楽しむ人が増えている」こと。まるで『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)のように盛り上がっているのです。下記にいくつかの例を挙げていきましょう。

 第1話のラストカットで、大和田暁取締役(香川照之)が「そうですか。半沢くんが動き出しましたか。ご報告どうも」と言って通話を切り、スマホを大テーブルの奥に放り投げるシーンがありました。ここで「届かないであろうスマホをどう回収するのか?」というネット大喜利がスタート。「よつんばいでしょ」「テーブルクロス引きで」「ドローンで回収!」「マジックハンド」「“カマキリ先生”になったら前足が届くと思う」(『香川照之の昆虫すごいぜ!』のキャラクター)。

 コロナ禍の影響で次回放送が延期になり、生放送の代替番組が発表されると、すぐにネット大喜利がスタート。「オープニングは大和田が『特別編、始まりますです!ですですDEATH!』」「じゃあエンディングは半沢が指で数えて『来週もおーねーがーいーしーまーす!』」「曽根崎を挟んで、半沢&大和田の生『さあさあさあ』が見たい」「撮影は半沢たちが常連の小料理屋。井川遥アリで」。

 さらに番組サイドが生放送で出演者にぶつける質問を募集すると、再びネット大喜利スタート。「(堺雅人さんに)香川さんのアドリブに笑いをこらえる秘けつは?」「(香川さんに)頭取と虫取りどっちになりたい? 出演者の皆さんを昆虫にたとえたら?」「(片岡愛之助さんに)“直樹”って生で呼んでみて」「(前作の)壇蜜さんのネイルサロンはオープンした?」「大和田暁スピンオフの可能性は?」。

香川照之もネット大喜利の仕掛け人に

 先週13日の第8話でも、意外なシーンでネット大喜利がスタート。半沢直樹(堺雅人)と黒崎駿一(片岡愛之助)が対峙しているとき、割って入った部下の古谷(宮野真守)を黒崎は「あんたは黙ってなさい!」と一喝し、股間をわしづかみにしました。これを見た人々から、「マモの大事にマモってる所が黒崎の標的に」「黒崎さんにつかまれるマモのマモ」「ナムアミダブツ…」。

 また、第9話の放送を待つ現在もネット大喜利の真っ最中。予告映像に半沢が「やられたらやり返す。3人まとめて(倍返しだ)」と叫ぶシーンがあり、「その3人は誰なのか?」というネット大喜利がスタートしたのです。「たけし、さんま、タモリ」「信長、秀吉、家康」「バース、掛布、岡田」「JFKもおねしゃす」「武藤敬司、蝶野正洋、橋本真也」「大和田、香川照之、市川中車」「菅、石破、岸田」「東京03」。

 しかもこのネット大喜利は香川さんがツイッターで、「一体どの3人?」と問いかけたことで、さらにヒートアップ。出演者も視聴者とともにネット大喜利を楽しんでいるのです。

 その他でも、大和田の顔に関係のないフレーズを重ねて笑いを誘い合うなど、ネット大喜利は広がりを見せています。ドラマにおけるネット大喜利にはどんな効果があり、他作への影響はあるのでしょうか。

ドラマをより能動的に楽しむために

 制作サイドにしてみれば、視聴者によるネット大喜利は大歓迎。「どんどんやってほしい」と思っていますし、むしろ「ネット大喜利が発生するシーンをどう作るか」を考えています。

 ネット大喜利が盛り上がる最大のメリットは、視聴者のリアルタイム視聴を促進するから。放送後の録画視聴やネット視聴ではなく、リアルタイムで見てもらい視聴率の獲得につなげたいのです。

 基本的にネット大喜利は瞬発力勝負であり、熟考するのではなく、思いついたらどんどん書き込んでいくもの。「これはお題だ」と感じた瞬間からスタートし、多くの人々が呼応することで盛り上がりますが、いつ次のお題に変わるかわからないため、リアルタイムで見ることが大前提となります。

 好きなものを好きなときに見られるオンデマンドが普及して便利になった一方で、「今でなければダメ」というライブ感のあるコンテンツは希少価値が高くなりました。ネット大喜利の存在が全話世帯視聴率20%超の脅威的な数字に貢献しているのは間違いないでしょう。

 もともとドラマは、「スタッフとキャストが作ったものを見る」という視聴者が受け身になりやすいタイプのコンテンツ。しかし、ネット大喜利をしながら『半沢直樹』を見ている人々は「自ら参加する」という感覚で、より能動的にドラマを楽しんでいます。能動的な視聴の例としては、映画『天空の城ラピュタ』の「バルス」が有名ですが、頭を使って考え、楽しく競い合うネット大喜利は、より進化した楽しみ方と言えるのではないでしょうか。

 録画やネットでの視聴が普及した今、世帯視聴率15%以上を獲得する作品は、年数本程度になりました。これまで通りの受動的な姿勢で見る人々だけでなく、「自ら発信して楽しみたい」という能動的な姿勢の人々を取り込まなければ、『半沢直樹』のようなヒット作になることは難しいのです。

 また、多くの人々がネット大喜利に参加することで、ツイッターのトレンドワードにランクインし、出演者が反応することでメディアが記事化するなど、反響は広がる一方。今後もネット大喜利が盛り上がるような脚本・演出を仕掛けるドラマは間違いなく増えるはずですし、新たなドラマの楽しみ方として定着していくでしょう。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。