国内69勝、海外3勝を挙げ、2003年にアジア人初の世界ゴルフ殿堂入りを果たした女王・樋口久子。1970年代、ズボン姿が常識の女子ゴルフトーナメントにスカートで登場すると、ファンの人気を独占した。

 1977年にその樋口の10年連続賞金女王を阻止したのが、“女性版・鉄人”と呼ばれた大迫たつ子だった。

「ギャラリーが強い樋口さんを応援するのは当たり前で、7期先輩の樋口さんに追いつきたいという一心だけで猛練習をやってきました。打倒・樋口しか頭になかったです」

 そう話す大迫たつ子プロは、今も破られることのない国内ツアー278試合連続予選通過の大記録を打ち立て、現役24年間で日本女子プロ4回、日本女子オープン2回などメジャー8勝を含む通算45勝を挙げた。これは歴代4位の記録だ。1991年の日本女子プロでは最終日最終組で岡本綾子と一騎打ちの末、優勝。今もゴルフファンの間で語り草になっている名勝負だ。

 優勝回数を重ねると、周囲から様々な声が聞こえてきたという。

「若手に勝ってほしいという空気は常に感じていました。実際に優勝した試合で表彰式のあと“何度も勝っているんだから、たまには若手に勝たせてやってよ”とトーナメント関係者からいわれたこともある。

 でも私は優勝を競った試合では絶対に負けたくなかった。若い選手に“ゴルフってこういうことよ”“勝つのは大変なのよ”と身をもって経験させてやりたかった。私たちもそうやって樋口さんたちと真剣勝負して強くなりましたからね」

 ギャラリーの声援が優勝争いをしている若い選手に向けられることもあったという。

「さすがにパットを外して喜ばれるというほどの露骨な経験はありませんが、相手が贔屓にされると余計に燃えましたね。ただ、私は鈍感なので気がつかないことも多かったのですが(苦笑)」

 賞金より名誉。メジャー(公式戦)には1か月前から照準を合わせて練習したというが、最近の女子プロブームをどう見ているのか。

「華やかでいいですね。スタイルもいいし、ウエアもカラフルで可愛い。昔はモノトーンの地味なウエアで、私なんか何を着ても同じでした(笑い)。ただ、今も昔も変わらないのは練習しないと勝てないということでしょう。私たちの世代は勝つために死に物狂いで練習しましたから」

※週刊ポスト2020年4月3日号