紀平梨花は早稲田へ 中京、関大、明治……フィギュア有力大学の変遷

 昨年末、女子フィギュアスケートの紀平梨花選手が、来春、早稲田大学に進学すると報じられた。現在、スイスを拠点に練習を積む紀平選手は、人間科学部の通信教育過程に進学し、文武両道で北京オリンピックを目指すという。すでに知られている通り、羽生結弦選手もカナダを拠点にしながら早稲田の同学部で学び、昨年9月に卒業した。

 アマチュアスポーツであるフィギュアスケートは、高校を卒業後、大学に進学して競技を続ける選手が多い。シニアで活躍する選手の多くは、「大学生スケーター」なのだ。

 羽生の卒業、紀平の入学で注目を集める早稲田といえば、歴史的に「フィギュア王国」だった。トリノオリンピック金メダリストの荒川静香さんをはじめ、八木沼純子さん、井上怜奈さん、村主章枝さん、中野友加里さんら、世界で活躍するフィギュアスケートを輩出してきた。

 だが、フィギュアスケートの人気に火が付き、テレビのゴールデンタイムに放送されるようになった頃から、大学の勢力図に変化が訪れる。女子の人気を牽引した安藤美姫さんと浅田真央さんが通ったのは中京大学だったし、シングルからアイスダンスに転向し、いまなお現役を続ける高橋大輔選手と、織田信成さんが通ったのは関西大学だった。

 中京大学と関西大学は大学独自のリンクを開設し、練習環境を整えることで、その後、多くの有力選手が進学する「新・フィギュア王国」となった。中京大学では村上佳菜子さんや宇野昌磨選手が、関西大学では町田樹さん、宮原知子選手らが学んでいる。

 最近ではさらに多様化が進み、一つの大学に有力選手が集中する傾向は薄れてきた。そのなかで存在感を増しているひとつが、樋口新葉選手と本田真凛選手が所属する明治大学だろう。

未経験者でもウエルカム! 大学フィギュアスケート部の魅力

 樋口選手と本田選手は、現在、明治大学体育会スケート部フィギュア部門に所属し、部のSNSにもたびたび登場している。この明治大学と法政大学は、一般の観客を入れて行う合同エキシビション「明治×法政ON ICE」を2019年から開催するなど、大学スケートを盛り上げている。

 大学生スケーターたちが所属する大学の「フィギュアスケート部」の意義について、フィギュアスケートに詳しいライターの土田亜希子さんはこう解説する。

「まず前提として、フィギュアスケートのシングルは個人競技であり、有力選手はそれぞれコーチについているため、大学に進学したからといって、選手は必ずしもその大学のフィギュアスケート部に所属するわけではありません。羽生選手のように海外を拠点にしている選手もいますしね。また、部に属したとしても、師事するコーチによってリンクが異なるなど、必ずしも選手全員の練習環境が同じにはならないようなのですが、それでも部に所属することで、競技を続けていく上でのよきライバルや仲間を得られ、一体感を得られることはあると思います」

 フィギュアスケートを現地で観戦したことのある人なら、大学ごとの応援を耳にした経験があるかもしれない。たとえば全日本選手権だと、出場選手の多い大学、最近では明治大学や中京大学の応援が活発だ。熱い声援からは確かに、部活の意義が感じられる。

 それからもう一つ、大学のフィギュアスケート部は、未経験者がフィギュアスケートを始める場として最適だと土田さんは語る。

「フィギュア人気の高まりとともに、見ているだけでなく、自分でもやってみたいという人は増えていますが、いざ始めるとなると、どこで始めたらいいのか、誰に教わればいいのか、いくらかかるのかなど、ハードルの高いスポーツです。いま中学生や高校生の方なら、フィギュアスケート部のある大学に入って始めるのは一つの手だと思います。経験者の少ない競技なので、大学のフィギュアスケート部は初心者が多いんです。早稲田や明治などの有力校は経験者がかなり入りますが、初心者からでも始められる大学は多いですし、とくに国公立大学は、8割以上が初心者だったりします。

 私の見てきたかぎり、大学から始めても、女子はアクセル、男子はダブルジャンプやダブルアクセルまで跳べますし、大会にも出られます。滑るだけではなく、曲を選んだり、衣装を作るなど、身体能力以外の能力も活かせます。これだけフィギュア人気が高まっているのですから、ファンだけではなく、選手も増えるといいなと思いますね」

 海外に目を向けても、世界選手権2連覇中のネイサン・チェン選手はイェール大学で学び、先の全米選手権で2位に入ったビンセント・ジョウ選手も名門ブラウン大学の学生だ。学生スケーターを応援しつつ、自らが学生スケーターになる人が出てくることも期待したい。