「ブス」と言われても憤らない私が強く反応してしまう言葉

「ブス」と言われても憤らない私が強く反応してしまう言葉

「ブス」をターゲットにした企画が炎上したり、女芸人への「ブス」いじりが物議を醸すようになった。容姿差別に関して厳しい目が向けられるようになってきたが、現時点で「ブス」であることに悩んでいる人はいるのではないか。「ブス」=見た目を武器にできない人はどう生きたらいいのか? そのポジティブな回答例の一つが、税理士、MBA取得、そして一児の母である田村麻美さんの生き方だ。

 田村さんはブスであることを受け入れ、その上で、幸せな結婚と経済的自立の両方を手に入れるために、戦略的に生きてきた。その半生を綴った『ブスのマーケティング戦略』(文響社)は昨年の発売以来、売れ続けている。田村さんは「ブス」とどう向き合ってきたのか。また、昨今の「ブス」をとりまく社会の状況についての考えを聞いた。

 * * *
■「ブス」よりも、言われると憤る言葉

──田村さんは小学生のときに自分がブスであることに気づいて以来、ブスを受け入れ、その上で様々な戦略を立ててきました。とはいえ、「ブス」と言われて傷ついたことや、憤ったことはなかったのでしょうか?

田村:ブスと言われること自体には憤らないです。自分が美人だと思っていたら理不尽だと思うんでしょうけど、決して美人ではありませんから、ブスは事実だなと。ただ私は、キャラ的にいじられたり、ネタにされることは多いけど、そんなに酷い言われ方をしていないのかもしれませんね。それには、女子高だったことが大きいかもしれません。高校時代、私は「面白いブス」を目指して、クラスでそこそこ人気者になり、楽しい学生時代を送りました。多感な時期に男子のいる共学で過ごしたら、受け止め方もちょっと違ったかなと思います。

 とはいえ、怒らない人間というわけでは決してなく、最近だと、「女なのに」「ママなのに」という言葉には強く反応してしまいますね。

──「女なのに」「ママなのに」は、どういったときに言われますか?

田村:たとえば私はお酒が好きで、今日、インタビューを受けているこの店(北千住のカラオケスナック・レジャード)にも仕事帰りにたまに来るんです。そうすると、「子どもを旦那に預けて、女がこういう店に来るのはいかがなものか」と眉を顰める人はいます。もっと露骨に「ママなのになんで子育てをしないのか」と言われたり。そういうときは、「男女の軸で人や物事を見るのはやめてくれ」とはっきり怒ります。言いたいんだけど我慢して言わない、というタイプではないですね。

──「ブス」は、女性の容姿に対する言葉ということで、使わないほうがいいという風潮も感じます。「ブス」という言葉については、田村さんはどう感じていますか?

田村:『ブスのマーケティング戦略」という「ブス」というワードを強調している本を出している私が言っても説得力ないと思いますが(笑)、そんなに目くじらを立てなくてもいいのではないかと思います。容姿に対する言葉という点では、男性については「ハゲ」とか「デブ」ってけっこう気楽に使われていますよね。タブー視することで、かえって重みが増してしまう面もあると思うんですね。私の本ほど強調することもないかもしれませんが(笑)、使っていけない言葉、特別な言葉ではないと思います。

■フラれてもめげない メンタルを強くするには

──田村さんには、「男性と付き合いたい」という強い欲求があり、失敗してもめげずに合コンに行きまくるなど、その行動力は目を見張るものがありますが、「自分はそこまでメンタルが強くない」という声がありました。

田村:私の場合、メンタルが強い以上に、モチベーションが強かったんだと思います。フラれて落ち込んだとき、もう合コンに行かないとか、恋愛はやめる、という選択肢もあると思うんですが、私はあきらめきれないほどに、男性と付き合いたい欲、性欲が強かったんです。だったら、失敗を活かして、別の方法で、次を頑張るしかない。どんな原動力でもいいと思いますが、強いモチベーションがあると、メンタルが弱かろうが強かろうが、生きやすくなるんじゃないかと思いますね。

──「ゴール設定」が大事、と繰り返し説かれています。

田村:はい、私は常にゴールを設定して生きてきました。30歳までに結婚したい、経済的に自立したい、本を出したい。そしてMBAをとったのは、本当は早稲田に行きたかったという気持ちがくすぶっていたからです。大学受験の際はあきらめましたが、挑戦しなかったという心残りがあって、やはり早稲田に行きたいと。ありがたいことに夫の協力を得て、仕事と子育てと両立させながら、なんとかMBAをとりました。

──目標を達成するために、田村さんは常に自分を客観視されています。「ブスである自分はどうすべきか」という観点が常にあります。

田村:見た目は人間の一つの要素で、もちろんすべてではありません。ただ、恋愛や結婚においてはそれなりの比重を占めますから、まずブスであることを客観的に認識しないと正しい戦略が立てられないと思うんです。私は見た目で勝負できないから、コミュニケーション能力を磨こうと考えましたし、「若さ」を大事にしなければいけないと思いましたし、見た目以外の武器を身につけようと努力しました。

■40代の美人は、やっぱり40代なりの美人です

──「ブスだから」、と身につけた武器が、結婚と並んでもう一つの目標であった「経済的自立」を後押しすることになりました。

田村:いまとなっては、肩書きをつけておいて本当によかったと思っています。当時は、ブスは就職活動をしてもそれほど上手くいかないだろう、という消極的な理由から資格試験を選んだわけですが、それによって独立もでき、いま、仕事の幅も広がっています。

 また、年をとって思うのは、ブスの僻みと捉えられて構わないのですが、見た目って、だんだんどうでもよくなってきます(笑)。いま、40代でも綺麗な人は増えていますが、私に言われたくないでしょうけれど、40代の美人は、やっぱり40代なりの美人です。芸能人のように美をお金に換えられる「突き抜けた美人」は別ですが、それ以外の人は、こういう時代ですから、経済的自立を早いうちから考えておくのは大事だと思いますね。

──とはいえ、自分を客観視するのは、容易ではありません。人のことはよくわかっても、自分のことはなかなかわからない。

田村:大学など学校には偏差値がありますが、見た目とか、あるいは中身とか、人間性の評価って誰も数値化してくれませんからね。だからこそ、自分が一番シビアに見てあげないといけないと思います。私は幸いにも、小学生のときにブスと気づかされたので、長年、コツコツやってきました(笑)。

 今から思うと、努力しても報われないことがあることを、早くに悟ったんでしょうね。だからこそ、その裏返しとして、じゃあ、自分の力で得られるものって何だろう、という発想に立てたのかなと思います。

■「言うほどブスじゃない」「本当のブスに失礼だ」と言われて思ったこと

──30歳までに結婚、という目標を立て、実際に結婚・出産されました。昨今の晩婚化は、田村さんの目にどう映りますか?

田村:私自身は、結婚すること・出産することが当たり前だと思っていません。個人の選択ですから。ただ、ビジネススクールに通っていたとき、MBAを取ったら「結婚して子どもを産みたい」と言う30代半ば過ぎくらいの女性がけっこういて、ちょっと驚きました。それだったら、出産が先じゃない? と。もちろん、40歳を超えて妊娠・出産する人はいますが、確率的には、難しくなりますよね。子どもが欲しいなら、MBAより婚活だろうと私は思うんです。

 大企業でバリバリ働き、MBAを取りに来ているような優秀な人たちが、優先順位とか、確立的なことを検討にいれないのは不思議でした。まあ、大企業に勤めていない私にはわからないキャリアの悩みがあるのかもしれません。また、「結婚・妊娠したい」と口で言っているだけで、本当はキャリアアップのことだけを考えているのかもしれませんが。

──確率はゼロではないから、自分は大丈夫、と思ってしまうのではないでしょうか。

田村:自信があるんだなあと思いますし、それは幸せなことだと思います。「ブス」という自己認識が根底にある私は、注意深く、用心深く生きてきましたから。妊娠に関しても、メディアで高齢出産の方を取り上げられることがありますが、一つの事例としか思ったことはありません。

──とはいえ、ブスを自認する田村さんに卑屈さは感じられません。それはなぜでしょうか?

田村:能天気だからでしょうね(笑)。あと、合コンでは傾聴が大事とか、自分を出さないとか、一見、自分を押し殺しているようなことを本には書いていますが、生理的な嫌悪感は大事にしていました。男の人が大好きな私でも、生理的に無理な人には行かないようにしていた。そこは自分の心の声に従っていたんです。

 相手を笑わせたい、いい気持ちにさせたいとは思うけど、やっぱり笑われたくはないんです。でも、そのためには、ありのままの自分では誰も認めてくれないので、武器が必要になりますね。

──「ブス」本を出した田村さんの元には、賛否含め、色々な感想が届いているとか。

田村:辛いときにこの本を読んで、笑って泣いたという感想をいただいて、とても嬉しかったです。それから「言うほどブスじゃない」とか「本当のブスに失礼だ」という声があったのには、びっくりして。この本や私に批判的・否定的な感想だということはもちろんわかっていますが、買っていただいた上に、そんなことを言っていだいて、ありがとうございます、という気持ちです(笑)。

■田村麻美(たむら・まみ)
税理士。立教大学経済学部卒業後、同大学院で経済学研究科博士課程前期課程修了。早稲田大学ビジネススクール(MBA)修了。夫と娘の3人家族。『ブスのマーケティング戦略』(文響社)が初の著書となる。
http://tamuramami.com/

■撮影:内海裕之
■撮影協力:レジャード(北千住)




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