新型コロナウイルス対策で「不要不急の外出は控えよ」と言われれば、どうしても家にこもりがちになる。しかしそれはかえって重病を招く危険性がある。

 日本老年医学会は3月13日、次のように注意喚起した。

〈人が多く集まる場所を避けることなどが言われており、家に閉じこもりがちになりますが、高齢者にとっては合わせて「動かないこと(生活不活発)」による健康への影響が危惧されます〉

 そして、特に気をつけるべきリスクをこう指摘した。

〈「生活不活発」によりフレイル(虚弱)が進み、心身や脳の機能が低下していきます〉

 フレイルについて研究する東京都健康長寿医療センター研究所の研究部長・北村明彦氏が解説する。

「フレイルとは加齢などにより運動機能や認知機能が低下する症状を指します。進行すると心不全などの心疾患や脳卒中のリスクが上がったり、がん発生時の死亡率を高める原因になる。

 私たちが行なった平均7年間の追跡調査では、フレイルの人は要介護認定を受ける確率が約2倍高くなり、死亡率も2.2倍上昇するという結果が出ました」

 なぜ家にずっといるとフレイルになりやすいのか。

「家にこもっていると体をあまり動かさないため食欲が進まず栄養不足になり、筋肉量も減少する。これまでできていた運動が困難になり、骨粗鬆症や膝痛、腰痛などの関節疾患とともに転倒や骨折リスクが増え、最終的には寝たきりになってしまいます」(北村氏)

◆座りすぎで死亡リスク32%増

 長時間、家にいるリスクはそれだけではない。「座りすぎ」も病気の原因になる。WHO(世界保健機関)は2011年、「“座って動かない生活”は肥満や糖尿病、高血圧、がんなどの病気を誘発し、世界で年間200万人の死因になっている」と発表した。北村氏が解説する。

「体のなかでいちばん大きな筋肉は太股にある大腿四頭筋ですが、長期間座ったままでいるとこの筋肉がまったく動かず、全身の血液循環が悪くなる。

 その結果、血管が詰まりやすくなり、高血圧や動脈硬化が進みます。エコノミークラス症候群と同様、血栓ができやすくなることで、肺塞栓や脳卒中など他のさまざまな病気の引き金にもなります」

 オーストラリアのシドニー大学は2012年、45歳以上の22万人の男女を3年以上追跡し、「座っている時間」と「死亡リスク」の関係を調べた研究結果を発表した。1日11時間以上座っている人は、4時間未満の人に比べて、死亡リスクが男性で32%、女性では62%も高まったという。

 さらに「テレビの見すぎ」も危険だ。英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された論文によると、英国の研究チームが、50歳以上の男女約3600人を対象に単語記憶テストを実施。1日当たりのテレビ視聴時間と認知機能との関係を調査した。6年間の間隔を空けてテストを行なうと、テレビの視聴時間が1日平均3.5時間以上の人は、3.5時間未満の人に比べて、著しく記憶力が低下していたという。

「テレビを見ることで受動的な情報は得られますが、自分で物事を考えていないので脳はあまり使っていない。そのため視聴し続けると、脳の中の記憶を司る領域の活動が落ち、徐々に認知機能が衰える。さらにテレビ漬けの生活で人と会話しないことも脳の機能低下を招き、認知症につながります」(北村氏)

 他人と交流しないことの健康リスクはデータでも裏付けられている。健康長寿の研究を行なうJAGES(日本老年学的評価研究)プロジェクトが、65歳以上の高齢者約1万2000人を対象に調査したところ、同居以外の人との交流が週1回未満の場合、要介護2以上になるリスクが1.4倍、認知症の発症リスクが1.39倍になったという。

 自宅に居続けることのリスクは、想像以上に高いのである。

 とはいえ、積極的に外出して新型コロナへの感染リスクを高めるわけにもいかない。北村氏が勧めるのは、自宅でできるストレッチや体操だ。

「ふくらはぎは“第二の心臓”といわれます。かかとの上げ下ろしをしてふくらはぎの筋肉を動かすと、血行が良くなると同時に筋トレにもなります。1セット10〜20回を2セットくらい行なえば十分でしょう。椅子に座った状態で、ゆっくり立ち上がったり座ったりを繰り返すスクワットも効果的です」(北村氏)

 また、家にいても「外とつながること」は可能だ。

「離れた家族や友人との電話の回数を増やしたり、メールのやりとりをすることで、脳の活性化につながるとともに、心の健康を保つことにも役立ちます。高齢の親がいる人は、いつもより多めに連絡してあげることを心がけましょう」(北村氏)

“自宅待機”生活を健康的に過ごしたい。

※週刊ポスト2020年4月3日号