ついに日本でも新型コロナウイルスの感染者・死者が急増し始めた。しかし、医療機関では「コロナ感染」よりも恐ろしい事態が起こり始めている。ベッドや人工呼吸器の不足などで、「後回しにされる患者」が出てくるのだ

 執刀日が決まっていた手術が延期される事態が各地で起こっている。それは新型コロナ患者の受け入れが多い医療機関で顕著だ。元東京大学医科学研究所特任教授で、NPO法人・医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が指摘する。

「現在、関東地区の感染症指定医療機関では、新型コロナ患者で集中治療室(ICU)が満床となっているところがあります。本来ICUとは、心臓疾患の手術や、交通事故などによる緊急手術が行なわれる場所。そこに空きがないということは、心臓病の手術や緊急外科手術に対応できないということを意味します」

 この傾向は、感染症指定医療機関ではない病院にも広がりつつある。千葉大学医学部附属病院副病院長で、病院経営管理学研究センター長・特任教授の井上貴裕氏が指摘する。

「今は一部の病院で、緩和ケア病棟、精神病棟などを閉鎖し、新型コロナ患者を受け入れ始めています。病床を確保するためには新規患者の受け入れを制限する必要がある。そのため、直ちに命に関わらない手術は延期する病院も出てきています」

 今は一部の病院というが、このまま感染者が増え続ければ、今後多くの病院で延期されかねない。

 真っ先に延期される手術として挙げられるのが、「ヘルニア」「脊柱管狭窄症」など整形外科部門の手術だ。日本整形外科学会専門医で、清水整形外科クリニック院長の清水伸一医師が語る。

「椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症は、強い痛みを伴うものの命に関わることはないため、延期になる可能性は高い。

 とくに高血圧や糖尿病を併発している患者は、手術にあたり血圧や血糖値をコントロールするため内科との連携が必要になりますが、新型コロナで医療現場がパンクすればそうした連携も取りにくくなる。そのため延期せざるを得なくなるケースも想定されます」

 しかし、これらの手術の延期にもリスクはある。

「ヘルニアや狭窄で神経が圧迫されているまましばらく放置すると、手術をしても完全に回復できなくなる恐れがある。首のヘルニアなら手、腰のヘルニアなら足などに一生消えない麻痺が残ってしまう可能性もある」(清水医師)

※週刊ポスト2020年4月17日号