新型コロナウイルスの感染者が日々増加するなか、“医療崩壊”の危険性が指摘されている。そうなると、ベッドや人工呼吸器の不足などで、「後回しにされる患者」が出てくるのだ。執刀日が決まっていた手術が延期される事態が各地で起こっている。

 真っ先に延期される手術として挙げられるのが、「直ちに命に別状はない」ということで「ヘルニア」「脊柱管狭窄症」など整形外科部門の手術だが、延期は、日本人の死因第1位である「がん」にも及ぶ可能性があるという。浜松オンコロジーセンター院長の渡辺亨医師(腫瘍内科)が言う。

「スキルス性の胃がんや、発見時にはすでに進行している膵臓がんなどは別ですが、がん細胞の増殖ペースがさほど早くないステージI〜IIのがんの場合、1か月程度なら手術日程を後ろ倒しすることは十分あり得るでしょう。急性期の感染症のケアに追われる病院では、がん手術を延期して病床を確保する事態も起こり得ると思います。また、別の病院の医師に手術を依頼する医療機関が出てくると予測されます」

 実は現在、国内のがん治療の中枢機関でもトラブルが生じている。元東京大学医科学研究所特任教授で、NPO法人・医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が指摘する。

「国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)では、看護師の感染が発覚し、新規の患者受け入れが停止されました。同センターでは、日本でも執刀できる医師が少ない高難度のがん手術を行なっており、院内感染の影響で、多くの“がん手術難民”が発生してしまう可能性があります」

 最近では、新型コロナ感染拡大への懸念から、自ら手術のキャンセルや転院を申し出る患者も増えてきているという。日本整形外科学会専門医で、清水整形外科クリニック院長の清水伸一医師が語る。

「患者さんが“感染症対策が万全の病院で手術したい”と申し出て、すでに決まっていた手術の予定をキャンセルし、病院を移る例もあると聞いています。

 気持ちはわかりますが、大事なのは必ず主治医と相談の上で決定すること。独断で手術延期や転院をしてしまい、受けるべき手術を受けられなくなってしまったら本末転倒です。深刻な後遺症が残ってしまう可能性もある。本来、延期しても問題がない手術であれば、医師がその選択肢を提示してくれるはず。焦るのは得策ではありません」

 今後もオペの現場で様々な混乱が予想される。まずは医師との密なコミュニケーションを心がけたい。

※週刊ポスト2020年4月17日号