いまだ特効薬もワクチンもみつかっていない新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、巣ごもり生活が続いている。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師は、こういうときこそ、高血圧などに気をつけて、簡単なものでよいから筋トレを続けてほしいと訴えている。

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 新型コロナウイルスの感染爆発を抑えるため、首都圏などで緊急事態宣言が発出された。遅きに失したという感が否めないが、やらないよりはずっといい。もっと早く宣言を出して、人の動きを止めていたら、自粛生活ももう少し短期間ですんだと思うと悔やまれる。

 長びく巣ごもり生活では、「コロナ疲れ」という言葉も出て来たように、感染予防だけではなく、体と心の健康管理が大事になる。特に、ぼくはストレスによる血圧の上昇が気がかりだ。

 WHO(世界保健機関)の発表によると、新型コロナウイルスの致死率は3.8%だが、高血圧の人の致死率は8.4%と高まる。なぜ、高血圧があると、新型コロナが重症化しやすいのだろうか。それには、慢性炎症が深くかかわっている。

 血圧は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系というホルモンが血管を収縮させて、上昇する。そのとき、このホルモンは炎症性サイトカインの産生も促進する。その結果、血管が慢性炎症を起こし、動脈硬化を起こすといわれている。たかが血圧上昇ではすまないのだ。

 新型コロナに感染すると、炎症性サイトカインが分泌される。このサイトカインは新型コロナウイルスと闘うのだが、同時に、自分の細胞も壊してしまう。感染が肺で起こると肺胞を壊す。高血圧がある人が重症肺炎を起こしやすいのは、すでに慢性炎症が進んでいるところに、炎症が加わって重症化している可能性がある。

 したがって、新型コロナで命を落とさないためには、血圧は少しでも下げておいたほうがいい。

 同様に、血糖値にも注意したい。血糖値が上がると、慢性炎症が進みやすい。糖尿病の人の新型コロナの致死率は9.2%。慢性炎症はじわじわと進む「炎症」だが、燃え広がって「延焼」を起こすという特徴がある。

 脂肪肝がいい例だ。肝臓の細胞が慢性炎症を起こすと脂肪肝になるが、炎症が延焼すると、慢性肝炎や肝臓がんへとつながっていく。

 新型コロナで重症肺炎という“大火事”を起こさないためにも、最初の火種つまり慢性炎症を起こさないことが重要になる。それが血圧を下げることであり、血糖値を上げないことなのだ。

 ぼく自身は、2、3年前から本格的に筋トレを始めてから、高めだった血圧が正常血圧になった。血糖値も正常値だ。でも、大事なことなので、新聞連載などで「新型コロナが猛威を振るっているときこそ、血圧や血糖値を上げないため、本気で生活習慣を改善しよう」と訴えている。

 新型コロナとの闘いでは、食べることはとても大事。おいしいものを食べていい。ただ、巣ごもり生活でゴロゴロしている時間が長くなると、肥満になり、血圧や血糖値を上げてしまう。

 血圧や血糖値を上げないためには、野菜をたっぷり食べることと、運動が大事だ。しかし、外出自粛要請が続いていると、なかなか外には出にくい。都市封鎖をしている欧米でも、一日一回は散歩やジョギングに外出してよいとしている。ぼくも、人の少なそうな林や河原の土手などを選んで、ウォーキングをするようにしている。

 以前は、ジムに行って筋トレをしていたが、ジムで集団感染した例もあるので、現在は家でワイドスクワットをやっている。筋肉は使わないとあっという間に細くなってしまうので、毎日継続することが大事だ。室内でできるので、ぜひ、スクワットとかかと落としと合わせてやってほしい。

●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に、『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。

※週刊ポスト2020年5月8・15日号