新型コロナウイルス感染拡大の影響で長く在宅生活を強いられると、自ずと増えるのが夫婦で過ごす時間だ。

「これまで仕事でろくに家にいなかったから、これを機に妻との時間を大切に」──そう思っていたはずなのに、いざ家にいるとなぜかギクシャク。そんな男性が増えている。

 新型コロナは、これまで家に居着かなかった男たちを自宅に縛り付けた。かつては月1回、年12回ほどしか家で食事をしなかったという衆院議員の鈴木宗男氏は〈今年は何と既に32回にもなっている。コロナがなければこれ程の回数にはならなかっただろう〉とブログで明かした。

 お笑いコンビ「さまぁ〜ず」の大竹一樹も、「結婚して初めて、こんなに家にいる」「家でずっと立ってる。カミさんに『家は休むところじゃないから』っていう宣言を受けたから(笑い)」と、フリーアナ・中村仁美との夫婦生活をラジオでネタにした。

 普通の夫たちも、在宅生活で「妻との距離感」に悩んでいる。

 都内に住む50歳会社員のA氏は在宅勤務がスタートして1か月。それまで平日は朝食以外ほぼ外食だったが、家族と三食を共にするようになった。しかし最近は、専業主婦の妻とほとんど口を利かない“冷戦状態”が続いているという。

「“たまには高級レストランのテイクアウトでも注文しようよ”と提案したら、“あなたや子供たちが家で食べるせいで食費がかさんでいる。節約しようとしているのにどういうつもり?”とキレられて。さらに“あなたは普段、会社の接待費で美味しいもの食べているから家のご飯に不満があるんでしょうけど!”とまで言われてしまった。

“こっちは家事の負担を減らしてあげようと思ったのに!”と言い返して大げんかです。それ以来、無言の食卓が続いています」(A氏)

 このような行き違いが火種になることは少なくない。

「近所で10枚1000円で不織布マスクが売っていたので、妻を喜ばせようと買って帰ったら“何でこんな高いものを!”と激怒された。食材の買い物を引き受けても、“白菜、こんなに高いなら要らなかった”と言われてムッとしてしまったり。長く一緒にいればいるほど揉めてしまう」(神奈川県在住の50代会社員)

◆「仕事中だよ!」

「在宅勤務」そのものが、諍いの原因になってしまうことも。週3日は在宅勤務という都内の40代会社員・B氏がいう。

「その日締め切りのレポートを作っていたのに、専業主婦の妻にはこちらの忙しさがまるで伝わらない。イライラした様子で“パソコンいじってるなら洗濯物干すか食器洗うかしてよ”と言ってくる。こっちも“仕事中だよ!”と反論するんですが、妻にはネットサーフィンと見分けがつかないようです」

 共働き夫婦だから共感しあえるとは限らない。

 深夜営業メインの飲食店に勤める都内在住のC氏は、緊急事態宣言の発令以降、仕事のない日が続いている。一方、会社員の妻は在宅勤務を黙々とこなす日々だ。

「妻には仕事があるが、こちらは自宅待機で特にやることもない。こちらがリビングで寝っ転がって映画を見たり、スマホを眺めたりしていると、口には出さないが明らかに不満そうで……。その顔を見るのがイヤで、最近は公園のベンチで時間を潰してます。妻のおかげで収入が確保できるのはありがたいですが、こんな日々が続くとうんざりします」(C氏)

◆「一緒に食事」で十分

 異常事態がゆえに、夫婦ともにイライラ……。そんな「コロナ不仲」の体験談が続々寄せられる一方、これを機に絆を深めた夫婦もいる。

 大阪府の50代会社役員・D氏は、在宅勤務になってから妻との仲は至って良好という。

「妻とは“定年後の生活の予行演習みたいなもんだね”と話しています。日中は自室でお互い自由に過ごして、食事の時だけ顔を合わせる。夕食は妻が作るが、昼飯は僕が簡単なスパゲティなどを作ることが多いですね。

 新型コロナで家にいるからといって、とくに夫婦で特別なことをしようとは思わない。でも、一緒に食事することでコミュニケーションは十分増えた。食卓で最近のニュースや、“コロナが収束したらやりたいこと”を話し合うことで、お互いの考えがより理解できるようになった」(D氏)

 D氏の言葉には、在宅生活を楽しむ上で重要な心がけが隠されている。

 恋人・夫婦仲相談所所長で『夫婦の「幸せ循環」を呼ぶ秘訣』(講談社+α新書)などの著書がある三松真由美氏がいう。

「外出自粛で“逃げ場”がなくなっているのは、男性だけでなく女性も同じ。とくに女性の場合、普段は自分だけで簡単に済ませていた昼食を家族のために準備しなければならないことも大きな負担になっています。

 そんなストレスの中で無理に夫婦の時間を増やそうとするのはトラブルのもと。それよりも、少しでも家事を分担してあげたり、夫婦がそれぞれ1人の時間を持てるように意識することのほうが大事です」

 この非常時は今後の夫婦のあり方を見つめ直すいい機会になりそうだ。

※週刊ポスト2020年5月22・29日号