国内ビール大手4社の売上数量が年々減少する中、市場を拡大しているのが、小規模醸造所が手掛ける個性的なクラフトビール。近年はスーパーやコンビニなどでも見かけるようになり、飲んではみたいが「どれを選んだらいいんだろう?」と思っている方も多いのではないだろうか。

 今回は、日本ビアジャーナリスト協会代表の藤原ヒロユキ氏、日本地ビール協会「シニア・ビアジャッジ」資格者の加治正慶氏、タレントで日本ビール検定1級所持の古賀麻里沙、「レストラン大宮」オーナーシェフの大宮勝雄氏の4人が、15銘柄のクラフトビール飲み比べて、それぞれの個性を評価した。

【飲み比べたクラフトビール15銘柄】
・エチゴビール ピルスナー
・COEDO 瑠璃-Ruri-
・小樽麦酒 ピルスナー
・僕ビール君ビール
・グランドキリン WHITE ALE
・TOKYO CRAFT(東京クラフト) PALE ALE
・よなよなエール
・銀河高原ビール 小麦のビール
・金沢百万石ビール IPA
・梅錦ビール ヴァイツェン
・常陸野ネストビール アンバーエール
・Far Yeast 東京アイピーエー
・ねこにひき
・栗黒 KURI KURO Dark Chestnut Ale
・箕面ビール スタウト

藤原:通常の審査会では同じスタイルで各銘柄を相対的に比較・評価しますが、本日の品評会は「身近で買えるクラフトビール」を自分が普段飲むビールと比べて評価する趣旨です。皆さんは15銘柄のうち、どのクラフトビールがお好みでしたか?

古賀:私は「栗黒(くりくろ)」が最も好きでした。濃い味わいと甘味が抜群。最高点の10点満点をつけちゃいました! 次が「ねこにひき」。香りと濁り具合が秀逸ですし、一般的にIPAは苦いというイメージが強いのですが、これは柑橘系の苦味だけでなく、とてもジューシーなフルーツ感を感じる1本でした。

大宮:僕は「COEDO 瑠璃」です。飲みやすく、料理にも合わせやすいですね。料理人なので「料理ありきのビール」を考えます。ワインもそうですが、お酒単体で美味しすぎると、料理がいらなくなってしまう。香りが高いと好き嫌いが出てきますし、ビールにも同じことが言えると思いました。

加治:私は「東京アイピーエー」が良かったです。ベルギーのイーストを使っていると思いますが、その特徴のスパイシーさとホップのバランスがいい具合でした。「栗黒」「箕面ビール スタウト」もとても良かった。

藤原:「東京アイピーエー」は特に良かったですね。注いだ時の泡も素晴らしく、驚きました。

古賀:そうですね。粘着力があり、持ちがいい泡でした。乾杯にも合うビールですね。

大宮:「栗黒」は私もいいと思いました。プリンなどデザート系にもばっちり合いますね。ただ、インパクトがありすぎて、「これ、ビールの枠でくくっていいのかな」と思うところもありました。

藤原:クラフトビールはもはや従来のビール観には収まらない領域にあると考えています。「麦からできた醸造酒」くらいの大きなくくりで、後はもう何をしてもいいと私は思っています。基本的にホップは必要とは思いますが。

古賀:苦味と香りを司るホップは熱を加えると苦味が強くなり、工程の最終段階で加えるとビールの香りがより強くなります。2回に分けてホップを入れる商品もありますね。

大宮:ところで、今回登場したペールエールはどんな意味?

加治:直訳すると「淡いエールのビール」。ビールの作り方はラガーとエールに大別され、エールは割と高い温度で発酵させるので、ピルスナーなどのラガーよりも香りが豊かになります。ざっくり言うと、ペールエールは豊かな香りがさらに複雑になるイメージですね。

古賀:クラフトビールは多くの種類がありますが、初心者の方にはどれがおすすめですか?

藤原:今回の中では「COEDO 瑠璃」がいいですね。従来のビール観から外れておらず、レベルも高い。クラフトビールを知る入り口に適していると感じます。私の協会調べでは、日本のクラフトビール醸造所の数は436(6月現在)に上ります。読者の方々には好みの銘柄をぜひ見つけていただきたいですね。

加治:私からのアドバイスとして、ビールは買ってきてすぐ飲むより、1日静かに置いたほうが味が安定して美味しくなります。明日飲むビールは今日考えましょう!(笑い)。

ラガーとエールの違い

 対談中にも登場したビールの「スタイル」。ビールには100種類以上のスタイル(醸造様式)があり、大きく「ラガー」と「エール」に分類される。以下にその特徴を紹介しよう。

【ラガー】下面発酵酵母を使い、熟成期間はエールより長い。すっきりした味わいが特徴。

〈スタイル例〉
・ピルスナー……日本の大手メーカーをはじめ、多くの国で一般的なビアスタイル。
・デュンケル……色はダークだが、すっきり飲めるラガータイプ。

【エール】上面発酵酵母を使い、高めの温度で発酵する。熟成期間はラガーより短い。豊かな香りと複雑な味わいが特徴。

〈スタイル例〉
・ペールエール……イギリス発祥。ホップを多く使うIPA(インディア・ペールエール)、ベルギーの酵母を使うベルジャンIPA、ニューイングランドIPA、アメリカ産ホップを使う銅色のアンバーエールなどもこの一種。
・セゾン……季節を意味。ベルギー伝統のスタイル。
・ホワイトエール……柑橘系でスパイシーな味わいが特徴。
・ヴァイツェン……小麦を多く使うドイツ伝統のスタイル。へーフェヴァイツェンは酵母を濾過していないものを指し、濁りがある。
・スタウト……ローストした大麦を使う。インペリアルスタウトもこの一種。

【プロフィール】
◆藤原ヒロユキ/1958年生まれ、大阪府出身。ビアジャーナリスト。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、メディアで活躍。国際ビアジャッジとして海外で審査員も務める。

◆加治正慶/1965年生まれ、愛知県出身。世界各国の審査会やカンファレンスで年間5回以上審査員を務め、海外各地で日本のビールを紹介する講演も行なう。

◆古賀麻里沙/1987年生まれ、福岡県出身。合格率5%程度という日本ビール検定1級を持ち、ビール講座の講師なども務める。「ビールおねえさん」として活躍中。

◆大宮勝雄/1950年生まれ、東京都出身。フランスなど海外での修業を経て、1982年に地元浅草で洋食レストランを開店。テレビの料理番組などでも活躍する。

※週刊ポスト2020年9月18・25日号

◆撮影/中庭愉生