気軽なおやつだったポテトチップスの高級化が進む背景

気軽なおやつだったポテトチップスの高級化が進む背景

 気軽なスナック菓子の代表である「ポテトチップス」が、高級化路線に商品の幅を広げている。背景にあるのはなにか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

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「気軽な庶民のおやつ」だったはずのスナックが大きな転換点を迎えている。とりわけ象徴的なのがポテトチップスだ。

 今年、湖池屋は「KOIKEYA PRIDE POTATO」というプレミアム層を意識したラインナップを市場に投入した。国産100%青のりを使用した「秘伝濃厚のり塩」や和牛の旨味を加えた「魅惑の炙り和牛」といった”本格派”のポテトチップスだ。従来品も含め「国産ジャガイモ100%宣言」を行い、北海道の十勝地区や富良野町で作付けを増やす活動をスタートさせるという。

 ポテトチップスの「高級化」先鞭をつけたのはカルビーだった。2014年阪急うめだ本店にカルビー直営店を立ち上げ、同店でのみ取り扱いを始めた1箱500円(税別)の「GRAND Calbee(グランカルビー)」シリーズはまたたく間に大ヒット商品に。連日長蛇の列ができ、翌年には個数限定でインターネット通販でも売り出した。

 ところが昨年、十勝を襲った台風でポテトチップス市場は大きなダメージを受けた。そもそも北海道は国産市場に流通する8割のジャガイモを生産する一大産地だ。ポテトチップス用に使われる北海道産は、夏〜秋に収穫したものを翌年まで保管して使う。

 昨年の収穫直前の台風被害を受け、北海道の多くの畑でジャガイモは水浸しになった。カルビーにジャガイモを供給する十勝・芽室町の農協も、2017年の春から秋までの使用分で同社向けに確保できたのは昨年同時期の約半分、5000トンに過ぎなかったという。原料がなければ生産はできない。

 今年の4月10日、カルビーが「ポテトチップス一部商品の販売休止」を発表した後、同社の「お客様相談室」には2ヶ月間で1000件を超える激励や問い合わせがあったという。

 夏休みを目前にした7月、同社はインターネットで小口資金を集めるクラウドファンディングを活用した製品づくりに乗り出した。出資者には限定ポテトチップス「ア・ラ・ポテト」を提供する。用意された出資コースは1000円×2種類、2000円、5000円という4つのコース。募集期間は8月一杯まで。ポテトチップスに加えて、製品づくりに参加できる権利やファン認定証などが得られる5000円のコースは早々に完売した。

 もともとメーカーが”高級化”に乗り出した背景には、長期化するデフレや少子高齢化などといった社会環境の変化がある。これまで通りの品ぞろえでは単価は上げられないが、青少年のおやつというだけでは先細りとなりかねない。「気軽な庶民のおやつ」だったポテトチップも環境の変化への適応を求められている。

 もっともポテトチップスが「気軽な庶民のおやつ」になったのはそう古い話ではない。日本のポテトチップス史をひともくと、戦後に上陸したポテトチップスはまだ高級品だったという。1962年に湖池屋がポテトチップスを発売し、同社が量産化に成功したのが1967年。現在シェアトップを独走するカルビーがポテトチップスを発売したのは1975年のことだった。ポテトチップスが「気軽な庶民のおやつ」化してから、まだ約50年しか経っていない。

 いつまでも「気軽な庶民のおやつ」だと思っていたら大間違い。原料の作柄やマーケットの動き次第で、その価値はいつでも変化する。それはポテトチップスにかぎらず、我々が口にするすべての食べ物に共通することわりなのだ。

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