PRESIDENT Online 掲載

大学病院の医師たちが「疑似医療」に手を焼いている。闘病で不安な患者は、怪しげなクリニックであっても、ウソと科学的根拠を巧みに混ぜた口上に欺かれてしまう。患者がそうした治療を受けたいと言い出せば、止める方法はないという――。

※本稿は、鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 3杯目』の一部を再編集したものです。

■医師側は「嘘っぱち」とは言いづらい

鳥取大学医学部附属病院 呼吸器内科の阪本智宏助教は疑似医療に手を焼いている医師の一人である。

「ぼくたちがよく治療しているのは、Ⅳ期の肺がんの患者さんです。つまり一番進行している肺がんです。まずはⅣ期の肺がんですと伝えます。その後、言葉遣いには気をつけながらも、根治はもう望めない状態であることを理解してもらった上で、延命と(症状の)緩和を目的とした、いわゆる抗がん剤を含む薬の治療をすることになります。そして、患者と話し合って、具体的にどのように治療を進めて行くのかを決めます」

ところが、あるとき患者からこんな風に相談を受けた。

――こんなものを見つけました、ここを紹介してほしい。

疑似医療を行うクリニックだった。

「選ぶ権利は患者さん側にあるので、『こんなのは嘘っぱちです』とは言いづらい。とはいえ目を覚ましてほしいので、散々オブラートに包んだ話をした後、『あなたが私の親だったら殴っても止める』と強い言葉を使うこともあります。それでも行きたいというのならば止めることはできないので、手紙(紹介状)は書きます」