プレジデント 2024年5月31日号 掲載

■「他人からよく思われよう」と考えないことが大切

我慢して自分を押し殺しながら生きるより、わがままに生きたほうがいいに決まっています。もちろん、法律を破ったり他人に迷惑をかけたりするのはいけません。しかし、普通の社会性と常識の範囲であれば、自分の気力、体力、財力、家族との関係を考慮しながら、できるかぎり自分のやりたいこと、楽しいことをやるべきです。

わがままという言葉はネガティブに受け止められやすいですが、必ずしも悪いものではありません。なぜなら、わがままであるためには自立心が必要だからです。そのうえに自分に矜持を持っていて、自己決定権を備えている人だけが、わがままな言動ができます。つまり、わがままでないことは主体性がないことの表れでもあるのです。

わがままな生き方を目指すうえで、もっとも大切な心構えは、「他人からよく思われよう」と考えないことです。よく思われたいと考えてしまうほど、弊害が生じます。可哀想な人を助けようと同情して騙されたり、上手に断り切れなくて余計な物を買わされたりするのです。

また、よく思われようという行動は、どこかで見返りを期待していることが多いものです。「自分は好意を持たれたのだから、何かしてもらえるはずだ」という考えは不幸の温床で、叶えられなければ「恩を仇で返しやがって」と恨みに転じてしまう事態も起こります。本当にわがままに生きていれば周囲に期待せずに済むので、こうしたストレスと無縁です。

大事なのは、他人に過度に干渉しないことです。社会との関わりや人付き合いを絶つのは極端だとしても、自分に火の粉が降りかからないかぎり、他人が何をしようが放っておくのが上品な態度だと私は思います。そうすれば自分の行動に文句を言われる機会も減ります。

また、なるべく人にものを頼まないほうがいいでしょう。借りをつくった相手に、「おまえの言うことを聞いたんだから、今度は俺の言うことを聞けよ」と言われたら、どうしても断りにくくなります。ならば最初から、貸し借りをつくらないことです。友人と一緒に食事をして奢ってもらえると、ラッキーと思うかもしれません。しかし、それで借りをつくるくらいなら、自分から奢ってしまえばいい。自分でできることはなるべく自分で済ませてしまえば、後腐れのない人間関係につながります。