独ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは3日、「新型コロナウイルスがネットメディアに繁栄をもたらす」と題する記事を配信し、次のように伝えている。

ドイツの週刊新聞ディー・ツァイトの発行元のマネージングディレクター、Rainer Esser氏は、ドイチェ・ヴェレとのインタビューで、「人々は現在、方向性を示すことができ、特に社会的結束に取り組むメディアを探している」とし、「この危機は、高品質のメディアに大きな機会をもたらし、イノベーションとデジタル化を飛躍的に促進する」と指摘している。

数字が、Rainer Esser氏の見方の正しさをを証明している。ドイツ広告媒体発行部数公査協会(IVW)によると、ディー・ツァイトのオンライン版へのアクセス数は、2月の8200万回から3月は1億4400万回に増加した。シュピーゲルのオンライン版も2億2200万回から3億9200万回に、ビルトのオンライン版も4億8600万回から6億8800万回にそれぞれ増加している。

だが、インターネット上のアクセスが記録を達成したとはいえ、本当の歓喜はない。新型コロナウイルスがデジタルと印刷の両方で広告ビジネスを麻痺させ、多くのサイト運営者は、広告費用に基づくビジネスモデルに行き詰まっている。

ドイツ連邦新聞出版業協会(BDZV)は、「危機の間に広告収入は大幅に落ち込んだ」としている。新聞は消滅へと向かっている。出版業者の多くは、収入の減少により、短時間労働制の採用に追い込まれている。

新型コロナウイルスはメディア業界キラーなのか。メディアの専門家であるSteffen Grimberg氏は、否定的な見方をしている。同氏は、ドイチェ・ヴェレとのインタビューで、「コロナウイルスが発生していなくても、印刷物とオンラインの両方で広告は減少していただろう」とし、「インターネット上で巨額の広告収入を得ているのは、出版業者ではなく、他の市場参加者、特にGoogleとFacebookだ」とした。

メディア業界は長年にわたり、デジタル化への移行を進め、十分に機能するビジネスモデルを模索してきた。新聞の印刷部数の減少がコストの増加を招いている。危機を免れることができるのは、有料の公益メディアだけだ。

ドイツ最大の大衆紙ビルトの発行部数の減少は、業界のデジタル構造の変化、特に日刊紙に与える影響を浮き彫りにしている。過去10年間で、発行部数は320万部(2010年第1四半期)から130万部(20年第1四半期)に減少している。

ネット上で、ジャーナリズムのコンテンツで金を稼ぐことはさらに難しいようだ。オーストラリアのジョシュ・フライデンバーグ財務相は、デジタル化の勝者であるGoogleやFacebookなどの米国企業は将来、オーストラリアのメディア企業に使用料を支払わなければならないと述べている。

Esser氏は、「強制的な徴収はまったくナンセンスだ」とし、「われわれはこうしたプラットフォームの広大なリーチを、われわれのニュース配信や他のビジネスに活用していくべきだ」と指摘する。

ドイツでは、GoogleやFacebookから使用料を徴収する可能性は大きくないが、政府は業界を財政的に支援している。新型コロナウイルスの発生前に、政府は国内約10万人の新聞配達員に計2000万ユーロ(約23億円)の補助金支給を決定したが、BDZVのマネージングディレクター、Dietmar Wolff氏は、金額のさらなる上積みを求めている。

Esser氏と同様にGrimberg氏も、新型コロナによる促進作用、すなわち、ネットでのメディア消費を促し、オンライン版加入者の増加やデジタル収益の増加に期待を寄せている。同氏は、「危機的状況下では、信頼できる情報の重要度が増している。オンライン版への支払い意欲が高まっており、私はそれを前向きに見ている」と話している。

新型コロナウイルスはデジタルへの移行を加速させている。そのスピードが米国に比べて遅いドイツでも、印刷からオンラインへの切り替えは本格的に進んでいる。米紙ニューヨーク・タイムズは、19年だけで新規デジタル加入者100万人という記録を作っている。

BDZVによると、ドイツでは2019年のデジタルジャーナリズムコンテンツの売上高は前​​年比33%増加した。ドイツの日刊紙のデジタル売上高は3億9000万ユーロ(約455億円)で、総売上高(48億ユーロ)の8%に相当する。

12年当時、ベルリンの日刊紙ターゲスツァイトゥング(taz)の代表だったKalle Ruch氏は、「印刷されたtazは、22年までになくなるだろう」と予測していた。当時、この発言は過激で恐ろしいものだったが、今ではそのシナリオはますます現実的になっている。

Grimberg氏は、「新型コロナウイルスによりデジタル化が後押しされ、人々がタブレットでニュースを読むことがより自然になれば、少なくとも月曜日から金曜日までは、印刷された日刊紙を手に取る人はいなくなるだろう」としている。一方で同氏は、死の鐘を早く鳴らすことについて警告し、「印刷物は死んでいない。シフトしていて全体的に少なくなっている」とも述べている。(翻訳・編集/柳川)