日本ではうまくいかない、韓国の「リアル志向」のテレビ番組

2000年ごろの韓国のテレビ番組で筆者の目を引いたのは、「講義」する番組が多かったこと。テレビをつけるたびに映し出されているのは、なんらかの講義番組だった。

キム・ヨンオク(号はドオル)という哲学者の老子や孔子の講義。キム・ホンギョンという韓医者(韓国医学の医者)の東洋医学の講義。キム・ミギョンという雑学大家の生活上のいろいろの講義などなど。その他もろもろ。よくもまあこんなに講義番組が多いものだなあと感じたものだ。講義する民族。それがその当時私が韓国民族につけたあだ名である。

最近のテレビの傾向について一言言及すると、バラエティー番組が増えてきたことが挙げられる。バラエティーはバラエティーでも、ゲストが何人か出てきて「こんなことまでしゃべっちゃうの?」と思うような極め付きのプライベートな内容を臆面もなくしゃべるのである。

例えば「トンチミ」という番組。トンチミの本来の意味は「水キムチ」という主に夏に食べるキムチで、その名の通り白いキムチである。水をふんだんに使い赤い唐辛子を入れずに白菜を漬けたもの。爽快な味である。すかっとした味である。番組の名前は、そうした爽快さ、すかっとした爽やかさにあやかって付けられている。

ゲストが出てきて、嫁しゅうとめの問題とか借金の問題とか夫の浮気の問題などなど、そんなことまでしゃべったら、離婚沙汰になるんじゃないの?と思うようなことをずばずばとしゃべくりまくる。

初めは「どうせショーだからな」、などと甘くみていたのだが、どうやらショーとしてしゃべっているのではなくて本気でしゃべっているようである。出てくるゲストは一般人じゃなくてタレントとか、タレント化した弁護士とか医者などだが、ショーとしてのトークではなく本気本物のトークなのである。

人の良い夫が友人の頼みで連帯保証人になり、100億ウォン(約10億円)を一晩で失ってしまったとか、しゅうとめが嫁の家にどかどかとやって来ては、何の断りもなしに冷蔵庫を開けて「何にも入ってないじゃない。明日の朝食はどうするの?旦那に食事は作っているの?」と言うとか。旦那とはすなわち息子に当たるわけだ。おしゅうとめさんがこのテレビを見ていたらどうするのか?と思ってしまうのだが、あるがままの本当のことをただしゃべっているだけだから、しゅうとめがたとえテレビを見ていたとしても、怖いことはないようである。

最近の女性は強くなったし、番組そのものも強くなった。作りもののドラマとか形式一辺倒のトークショーなどはだんだん人気がなくなってきているのである。タレントがジャングルでサバイバルするとか、日本語のできないタレントが一人で3泊4日で日本旅行をするとか、とにかく作りものじゃなくて、体当たりで何かをやったりあるがままの本当の姿を皆さんに見せたりというコンセプトの番組が大半となってきた。

もう一つ現在人気の番組を紹介すると、「ミウセ」という番組がある。正式なタイトル「ミウン ウリ セッキ」から「ミ」「ウ」「セ」を取ってこう呼ばれている。意味は「ミウン オリ セッキ=醜いアヒルの子」をもじったもので「醜いわが子」というくらいの意味。このもじりは韓国語ならではである。日本語直訳の「醜いわが子」ではしゃれにならない。ちなみに邦題は「アラフォー息子の成長日記」というものだ。

独身の中年男性タレントとその母親のペアが4組ほど出てきて、母親4人はスタジオにいる。その子どもたちが自分の部屋などに設置したカメラで撮られている。その映像をスタジオで母親たちが見ながらMCらとなんだかんだとトークするのである。オールドミスならぬオールドミスターたちを、なんとか結婚させようというアイデアからスタートした番組らしい。

例えばキム・コンモという歌手。この歌手はご存じの方もいらっしゃるかもしれない。非常に人気のある歌手であるが50歳を越えている。独身。彼の部屋にカメラが数台設置されていて、友達を呼んでパーティをやったり本を読んだり単にテレビを見たりと彼自身は普段のように生活するのであるが、それがまたいつも奇想天外なのである。

焼酎の小瓶を100個ぐらい集めてクリスマスツリーを作ったり、ドローンの模型を数十個買ってきて部屋の中で操縦してみたり、ばかでかいプラモデルを何十時間もかけて完成させたり。彼の母親がスタジオでその動画を見ているわけだが、他の男性タレントの母親たちも一緒にこれを見ながら「ダベリング」をするのである。

「私の子だけど、なんと情けない!」などと言うと、「面白いじゃない」とか「すごいアイデアだわ」と隣の母親が言うわけだ。するとコンモの母親はさらに腹が立ってくるという流れ。ずばずばとホントのことを言うそのスタンスは、やはり韓国ならではのもの。日本ではこうはいかないだろう。ぎこちなさが伴うはずだ。間違いない。とにかく最近こちら韓国では、なんでもリアル志向が強まっているといえよう。

■筆者プロフィール:木口政樹
イザベラ・バードが理想郷と呼んだ山形県米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結婚。三星(サムスン)人力開発院日本語科教授を経て白石大学校教授(2002年〜現在)。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。

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