新型コロナウイルスが世界各地で猛威を振るう中、いまだに「感染者ゼロ」を誇示している国がある。北朝鮮だ。発生地の中国と国境を接し、世界保健機関(WHO)が「パンデミック」(世界的な大流行)を宣言したにもかかわらず、その異様さは際立っている。

北朝鮮のウイルス流入遮断策は極めて迅速だった。春節(旧正月)前の1月22日に中国人観光客の入国を止め、1月末には中朝国境を完全に封鎖。それまでに中国人と接触していた国民は徹底隔離した。滞在する外国人を隔離する措置も相次いで講じた。

背景には国内にウイルスが侵入して、まん延した場合、ぜい弱な医療体制では対応できないとの危機感が強く働いたとみられ、初期の流入遮断には一定の成果があったようだ。人権などを都合よく無視しできる強権体制ならではだ。

朝鮮中央通信は18日、平壌で17日に「平壌総合病院」の着工式が開かれ、金正恩・朝鮮労働党委員長が出席したと伝えた。金委員長の着工式出席は異例。各国で感染拡大防止を迫られていることから、保健福祉や医療設備などを充実させ、人民生活の向上を図る姿勢をアピールする狙いとみられる。

韓国・聯合ニュースによると、朝鮮労働党機関紙・労働新聞は19日、新型コロナ感染防止のための公共交通手段の利用指針を示した。列車やバス、タクシーの乗務員はマスクを着用していない乗客の搭乗を拒否。長距離バスの場合は乗客の体温を測定し、37度以上の発熱が確認されれば乗せないという。

さらに韓国・統一省は19日、北朝鮮の国営メディアが感染防止対策として、幼稚園と小中高校の休みを再延長したと報じたと明らかにした。新学期開始の時期には言及していないという。

北朝鮮に感染者が本当にいないかは定かではないが、在韓米軍のエイブラムズ司令官は13日、ビデオ回線を通じて記者会見し、北朝鮮軍が最近までの約30日間にわたって軍事活動を停止していたと語った。同司令官は「例えば、北朝鮮軍は24日間に一度も飛行機を飛ばさなかった。最近になってようやく通常の訓練を開始したもようだ」と指摘。北朝鮮は新型コロナ感染を公表していないが、「感染者が出ていることはほとんど間違いないとみている」との見方を示した。

聯合ニュースも「北朝鮮は感染者が発生していないと主張しているが、労働新聞は農業省や商業省などの中央機関が『隔離場所』に必要な食料を調達していると伝えており、感染が疑われる患者はいるとみられる」と報道。「感染者ゼロ」に疑問を呈している。(編集/日向)