中国は23日、四川省内にある西昌衛星発射センターから全地球測位システム「北斗3号」における最後の衛星の打ち上げに成功した(写真)。同システムは民間向けに大きな利便性をもたらすと同時に、中国の軍事力向上にも直結するとの指摘がある。

「北斗3号」とは個別の衛星の呼称ではなく、複数の衛星により運営する地球測位システムそのものを指す。中国は、1994年に計画を開始した「北斗1号」で自国内を対象とする衛星による測位を実現し、2004年開始の「北斗2号」では対象範囲をアジア太平洋地域全域に広げた。09年に着手した「北斗3号」では全世界をカバーする地球測位システムを完成させることになった。

衛星がすべてそろったことで、「北斗」は米国のGPS、ロシアのGLONASS(グロナス)、欧州のガリレオと並んで、全世界の四大測位システムの一つになった。「北斗3号」は測位、精密時報以外にもショートメッセージ通信の機能を備えている。同機能は災害や感染症対策の正確性や効率を向上させると考えられている。

一方で、「北斗3号」の運用が中国の軍事力の大幅な向上をもたらすとの指摘もある。米国の華字メディア、多維新聞の2020年6月26日付記事によれば、「北斗3号」が一般向けに無料提供する測位では、アジア太平洋地区ならば誤差が268センチメートル以内、地球のその他の地域ならば360センチ以内だ。しかし、「北斗」側が「特定の対象」に情報を提供する場合には測位の誤差は10センチ程度で、誤差が30センチである米国のGPSよりもはるかに正確という。

そのため、潜水艦を含む軍艦の行動、空中からの精密誘導爆弾の投下、ミサイルの発射などで、「北斗」システムを利用できる中国軍の作戦能力は大幅に向上するとみられるという。また、精度の高い測位システムは合理的な作戦決定や、戦場に取り残された自国軍将兵の救出などにも威力を発揮するという。

中国軍が1996年に台湾沖で軍事演習を実施した際にはミサイル3発を発射したが、1発目は予定海域に着水したものの、2発目と3発目は大きくそれた。軍事専門家の間からは、中国軍がミサイルの測位に米国のGPSを利用していたことが原因との見方が出た。中国軍は「北斗3号」の完成で、自国が開発した衛星測位システムを「心配せず」に利用でき、しかもその範囲を全世界に広げたことになる。(翻訳・編集/如月隼人)