[東京 3日 ロイター] - 新型コロナウイルスの影響で経済活動が低迷し、落ち込みが避けられそうにない日本のオフィス需要。事業用不動産を世界的に手掛けるシービーアールイー(CBRE)の大久保寛・日本リサーチヘッドは、来年後半には持ち直すと予想する。大久保氏はロイターとのインタビューで、テレワークが定着してもオフィスの賃貸需要は減退しないものの、選ぶ際の基準は変わるだろうと語った。

<リーマン・ショック時とは異なる様相>

大久保氏によると、外出自粛の影響を直接的に受ける小売店や旅行会社の一部で、オフィス移転計画をキャンセルしたり、賃料減額の要請の動きが見られるという。そのほかの業界でも、内見などオフィス選定に必要な作業ができずに賃貸を取りやめたり、延期するケースも出てきたという。

大久保氏は、「オフィスの空室率が短期的に上昇するのは避けられそうにない」と述べ、賃料が若干弱含んできたことも明らかにした。

ただ、2008年のリーマン・ショック時とは様相が異なり、入居しているオフィスを解約する動きは今のところ目立たないという。2020年はオフィスの新規供給面積が約20万坪と多めなものの、大久保氏は「その9割以上でテナントは確保されている」と説明。物流施設についても、「巣ごもり」需要で荷動きが活発で、ネット通販企業の間で需要が高まるとみている。

海外からのインバウンド投資は停止に近い状態だが、大久保氏によると、渡航制限で内見できないなど実務上の制約が主な要因。高いレバレッジをかけていたリーマン・ショック時のように、売り急ぐ動きはないという。

長期資金を運用する投資家の中には「一時的にキャッシュフローが傷んだホテルなど、将来の価値回復を見込んで物件を探る動きもある」と、大久保氏は述べた。

一方で、大久保氏は新型コロナの影響が長期化した場合を懸念。「比較的勢いを維持しているテクノロジー系の企業が解約するようになれば、市場は大きく崩れるかもしれない」と語った。政府による下支え策がどのくらい効果を発揮するかがポイントになりそうだという。  

  <テレワークの影響は限定的>      外出自粛でテレワークが広がり、コロナ終息後もオフィス需要が減退するとの見方があるが、大久保氏は懐疑的だ。とりわけ子育て世代は仕事に集中できる空間を自宅で確保するのが難しく、「オフィス通勤を前提とした経済活動に回帰するだろう」と語った。  それでも、多くの人がテレワークを経験したことで、今後はオフィスを選ぶ際の基準が変わりそうだという。大久保氏は、「立地が良くて新しければ良い物件とは必ずしもならず、より労働環境のクオリティ面が重視されそうだ」と語った。内装デザインや照明、快適な休憩スペースの有無、さらには従来さほど意識されなかった換気設備などへの関心が高まりそうだという。

大久保氏は、市場が回復するタイミングを来年の下期とみる。4─6月に流行のピークを迎え、7─9月以降に景気回復に向かった場合、下落トレンドは「来年まで続く可能性がある」と語った、 20年はもともと消費税増税の影響もあって個人消費が弱含み、都市部の空室率は年末に向けて上昇すると予想していた。それが21年になると新規オフィスの供給が減るため、世界経済に遅れる形で日本の景気が上向くのと相まって、空室率、賃料とも持ち直しやすくなるとみていた。  新型コロナでこれが数カ月ほど後ずれすることとなり、オフィス需要の持ち直しは「来年の下期頃からだろう」と大久保氏は語った。

(聞き手:平田紀之、編集:久保信博)

インタビューは4月27日に行いました。